TellerNovel

テラーノベル

アプリでサクサク楽しめる

テラーノベル(Teller Novel)

タイトル、作家名、タグで検索

ストーリーを書く

テラーノベルの小説コンテスト 第4回テノコン 2025年1月10日〜3月31日まで
シェアするシェアする
報告する

「やっほーい!ついにコンプリート!あー、なんか壮大なゲームをクリアした気分だよ」

アートプラネッツのオフィスで、透は両手を広げて天井を仰ぐ。


吾郎が莉沙との婚約を報告し、3人は揃って、おめでとう!と祝福していた。


「やったね!吾郎。ハッピーエンド!」


「おいおい、ゲームと一緒にするなよ」


「そっか、ごめんごめん。吾郎にとってはゲームなんかより遥かに難しかったでしょ?結婚まで漕ぎ着けるの」


透がそう言うと、大河と洋平も同意する。


「ほんとだよ。良かったな、吾郎」


「俺達もめちゃくちゃ嬉しいよ」


ありがとう、と吾郎も笑顔で礼を言う。


「という訳で、早速莉沙ちゃんを交えてパーティーしまーす!」


「でたよ、透のパーティー隊長」


「なんとでも言って。今週の土曜日、うちのマンションのパーティールームに集合ね。あ、もちろんご夫人同伴でよろしく」


はいはいと軽く流しつつ、大河も洋平も吾郎も、心の中では喜びを噛みしめていた。



「ではでは。吾郎さんと莉沙ちゃんの婚約を祝して」


亜由美の音頭で皆は、かんぱーい!とグラスを掲げる。


土曜日の午後。

吾郎と莉沙の婚約を祝って、マンションのパーティールームに集まっていた。


ひと口飲むと一斉に拍手をして、あとはひたすらワイワイと盛り上がる。


「いやー、感慨深いわ。俺達全員が結婚するなんてな」


「ほんとほんと。学生時代はバカなことばっかりしてたあの俺達がな」


「うん。でも今こうやって好きな事を仕事にして、公私ともに幸せに暮らせてる。それってすごいことだよね」


「ああ。これからもよろしくな」


「もちろん!」


男同士の熱いやり取りの横で、女性陣ははしゃいだ声を上げる。


「莉沙ちゃん。ようこそ!マダムプラネッツへ。紹介するね。こちらが泣く子も黙る弁護士、スーパーキャリアウーマンの泉さん。そしてお隣が、最強で極上の美女マダム、瞳子さん」


ゴホッと二人はドリンクにむせた。


「亜由美ちゃん!なんて紹介の仕方なのよ」


「ほんとよ。ラスボスじゃないんだから」


亜由美はしれっとしながら言葉を続ける。


「そしてこのラブリーベビーが海斗くん。瞳子さんのお腹の中にも、まだ見ぬエンジェルがいるのよ。で、莉沙ちゃんに抱っこされてるのがトオルちゃん!私の旦那様と同じくとってもキュート!」


やれやれと苦笑いする泉と瞳子に、莉沙は緊張の面持ちで頭を下げた。


「初めまして、安藤 莉沙と申します」


「初めまして、莉沙ちゃん。洋平の妻の泉と、息子の海斗よ。吾郎さんにこんなに素敵なお嫁さんが来てくれて、私もとっても嬉しいわ。これからどうぞよろしくね」


「はい、こちらこそ。どうぞよろしくお願いいたします」


すると腕に抱いたトオルが、海斗の方に身を乗り出す。


「トオルちゃん。赤ちゃんだから、優しくね」


莉沙がトオルの鼻先に指を揃えて言い聞かせると、トオルはおとなしくじっとする。


「まあ、すごいわね。うちの海斗よりも、ちゃんと言うことを聞いてくれるわ。私も莉沙ちゃんを見習わなきゃ」


あはは!と笑う泉に、「いえ、とんでもない!」と莉沙は恐縮する。


亜由美はしたり顔で口を開いた。


「でしょ?莉沙ちゃんは立派なトオルちゃんのママなの。もういつでも吾郎さんとの赤ちゃんが出来てもいいわよね」


「亜由美さん、そんな…」


莉沙は顔を真っ赤にしてしどろもどろになる。


「でも本当に優しいママって感じね。莉沙ちゃん、私は冴島 瞳子です。吾郎さんにはいつもとってもお世話になってるの。これからどうぞよろしくね」


にっこり微笑む瞳子の美しさに、莉沙は思わず見とれてしまう。


「あ、はい!よろしくお願いいたします。赤ちゃん、楽しみですね。お身体どうぞお大事になさってください」


「ありがとう!莉沙ちゃんみたいに優しいママになりたいな」


「いえ、まさかそんな!」


莉沙はブンブンと手を振って否定する。


「あー、先輩ママがいっぱい!私も安心だな」


亜由美はそう言うと、透さん!と透を手招きした。


皆が、ん?と注目する中、透と並んだ亜由美は、はにかみながら口を開いた。


「えーっと、私達からもご報告があります。実は、赤ちゃんが出来ました!」


ええー?!と皆は一気にどよめく。


「ほんとに?」


「きゃー、すごい!」


「良かったねー、亜由美ちゃん」


「やったな!透」


「アン!」


「いや、お前じゃないよ、トオル」


「あはは!」


とにかく幸せで、とにかく嬉しい。


その場にいる誰もが笑顔で喜びを分かち合っていた。



「莉沙、そろそろ寝る時間だよ」


「はい、このお皿洗ったら行きます」


莉沙が引っ越して来て、すっかり二人と一匹の暮らしにも慣れた頃。


吾郎は毎晩密かに戦いを繰り返していた。


「お待たせしました」


パタパタと近づいて来た莉沙の肩を抱き、吾郎はゴクリと生唾を飲み込んでから、そっと電気のスイッチを消す。


リビングが暗くなった次の瞬間…


「アン!」


トオルの声が聞こえてきて、吾郎はガックリと肩を落とした。


「トオルちゃん、起きちゃった?」


莉沙はいそいそとサークルに近づき、トオルを抱き上げて戻って来る。


「吾郎さん、寝ましょうか」


「あ、うん。そうだな」


寝室に行くと、莉沙は当然のようにトオルを胸に抱きしめてベッドに横になる。


「トオルちゃん、おやすみなさい」


「アン!」


ふふっとトオルに微笑んでから、莉沙は顔を上げた。


「吾郎さんも、おやすみなさい」


「ああ、おやすみ」


(も?吾郎さん、も?俺は二番目か?)


布団に潜り込むと、吾郎はブツブツと不満そうに呟く。


(ちぇ!毎晩トオルに莉沙を取られちゃう)


いじけていると、小さく「吾郎さん」と莉沙の声がした。


え?と布団から顔を出すと、莉沙の顔がすぐ近くにあってドキッとする。


「ど、どうしたの?」


「しーっ!トオルちゃんが起きちゃう」


そう言って莉沙は自分の後ろを振り返る。


そこには身体を丸めてスヤスヤ眠るトオルがいた。


「トオルちゃん、やっと寝たの。あの、吾郎さん。くっついてもいい?」


「え…、ああ!うん、いいとも。よし、来い!」


両手を広げると、莉沙は嬉しそうに身を寄せてきた。


吾郎はギュッと莉沙を抱きしめる。


(はあ、ようやく俺のところに来てくれた)


何度も莉沙の頭をなでながら幸せを噛みしめた。


「トオルちゃんを抱っこするのも癒やされるけど、吾郎さんにギュッて抱きしめてもらうと、安心してすごくホッとするの」


「そうか。トオルよりも俺の方がいい?」


「んー、同じくらい」


ガーン…と吾郎は打ちのめされる。


「でもね、トオルちゃんごと私を守ってくれる吾郎さんが一番好き」


「そ、そうか!もちろん、俺はトオルのことも莉沙のことも、ずっと守っていくよ。誰よりも幸せにするから」


「うん!ありがとう」


にっこり微笑む莉沙に見とれてから、吾郎はゆっくりと莉沙の身体を抱き寄せる。


「莉沙…」


小さくその名を呟くと、莉沙はそっと目を閉じた。


無防備で可愛い表情に目を細め、吾郎は優しく莉沙にキスをする。


ん…と甘えるように吐息を漏らす莉沙を、吾郎はますます強く抱きしめた。


「大好きだよ、莉沙」


「私も。吾郎さん、大好き」


二人は何度も愛を囁いては、互いを抱きしめながらキスを交わしていた。



「瞳子、お腹苦しくない?」


「うん、大丈夫です」


「良かった。ゆっくり休んで」


「はい、おやすみなさい」


「おやすみ、瞳子」


ベッドに並んで横になると、大河は右手で瞳子を腕枕して、左手で瞳子のふっくらとしたお腹をなでる。


毎晩そのひとときが、二人にとって何よりも幸せな時間だった。


「ねえ、大河さん」


「ん?どうした?」


「あのね、私、昔の自分に伝えたいの。恋愛も結婚も諦めて、殻に閉じこもってた頃の自分に。大丈夫、ちゃんと幸せになれるよって」


大河は優しく瞳子のお腹をなでながら、黙って耳を傾ける。


「あの頃の私は、普通の幸せも望めないんだって、自分の人生を悲観してた。誰かに声をかけられても身構えるばかりで、誰にも心を開けなくて。優しくされても拒んでしまって、自己嫌悪に陥ってた。誰を信じていいのかも分からない。自分と相手を傷つけない為には、誰とも恋愛しちゃいけないんだって、そう決めて生きてきた。そんな時に大河さんと出逢ったの」


瞳子は顔を上げて大河を見つめる。


「大河さんは、とっても心が温かい人。どんな時も私を守って、どんな私も優しく包み込んでくれた。少しずつ少しずつ、私の氷みたいだった心を溶かしてくれたの。大河さんと出逢えたから、今の私がいます。あなたと出逢えた奇跡を、私はこの先もずっとずっと感謝して生きていきます」


瞳子…と、大河は目を潤ませる。


「奇跡なのは俺の方だよ、瞳子。こんなにも心が綺麗で、優しくて可愛い瞳子に出逢えた。瞳子の美しさは内面の現れだよ。瞳子の心の美しさが、瞳子を誰よりも綺麗に輝かせている。そんな瞳子がそばにいてくれるだけで、俺は信じられないほどの幸せを感じるんだ。今まで仕事のことばかりで、生きる意味なんて大して考えたこともなかった。だけど今は、ひしひしと感じるよ。瞳子と赤ちゃんを必ず幸せにして守り抜く。それが俺の人生の全てだ」


「大河さん…」


瞳子の瞳から綺麗な涙がポロポロとこぼれ落ちた。


大河は瞳子の右頬を大きな手のひらで包むと、親指でそっとその涙を拭う。


「瞳子。瞳子の人生はまだまだこれからだ。俺と赤ちゃんと一緒に、毎日を楽しく暮らそう。今まで辛くて悲しい思いをした分、瞳子にはその何倍も幸せになる権利があるよ。俺が必ず幸せにしてみせるから」


「うん…。ありがとう、大河さん」


「まずは二人で赤ちゃんを迎えよう。そして大切に育てていこうな。赤ちゃんが初めて寝返り打ったら喜んで、初めてハイハイしたら喜んで、初めて歩いたら喜んで、初めてしゃべったら喜んで…」


ふふっと瞳子は思わず笑い出す。


「喜んでばっかりね」


「ああ、そうだ。毎日が喜びに溢れているんだよ。大きくなったら神戸に連れて行こう。いつか、フランスにも」


「うん!」


瞳子は子どものように嬉しそうに笑って頷く。


大河はそんな瞳子に頬を緩めてから、愛おしそうにその瞳を見つめた。


「瞳子。心から君を愛してる」


「私もです。大河さん、世界中で誰よりも、あなたのことを愛しています」


瞳子の頬を包んだ左手に力を込めると、大河はそっと瞳子に口づける。


温かい幸せが胸いっぱいに広がるのを感じながら、二人は心がしびれるような幸せをいつまでも分かち合っていた。



loading

この作品はいかがでしたか?

28

コメント

0

👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!

チャット小説はテラーノベルアプリをインストール
テラーノベルのスクリーンショット
テラーノベル

電車の中でも寝る前のベッドの中でもサクサク快適に。
もっと読みたい!がどんどんみつかる。
「読んで」「書いて」毎日が楽しくなる小説アプリをダウンロードしよう。

Apple StoreGoogle Play Store
本棚

ホーム

本棚

検索

ストーリーを書く
本棚

通知

本棚

本棚