彼の腕の中で泣いていた彼女の涙も止まり、そろそろここを出ようかと考えている時。背後から階段を降りてくるような足音が聞こえた。まずい、どこかに隠れてる場所は…とあたりを見渡していると2人で入れそうなくらいの箱を見つけた。そこに急いで隠れる。しばらくするとこちらに向かってくる足音と男たちの声が聞こえた。
「ホーク様それらしき影は見ておりませんが…?」
何を話しているのだろうかと聞き耳を立てているとここにいるはずのないありえない聞き覚えのある声が聞こえた。
「…用心しておけ。奴等はお前たちが思っているよりも賢い。…特にアニスやネモフィラはな…」
聞き覚えのある声に似つかない喋り方と何故生きているのかという驚きから俺は箱を少し開けて箱の中からこの目で確かめることにした。それを見た瞬間俺は感情がごちゃ混ぜになった。生きていたのかという安堵と同時に敵だったのかという怒りが込み上がって来た。髪をかき揚げ、いつも纏っていた雰囲気とは全く違う雰囲気を漂わせていた。最悪だ…
「…まぁいい。俺の任務は達成した。死体のカモフラージュも完璧だ。…ふっあいつらは今頃俺が死んだと思い込んでいるんだろうな。」
スターチス…いや、今はホークと呼ばれているそいつは嘲笑しながら部下たちに言った。
すると部下の1人が
「ホーク様。あの方から連絡があり、今すぐ帰ってこいと。」
それを聞き笑うのをやめ真面目な顔で
「わかった。」
と言いホーク達は帰って行った。
しばらくして俺たちは箱から飛び出し、宮殿から脱出した。誰もいないような路地裏で彼女はやっと口を開けた。
「ねぇ…あの声ってスターチスの声よね…?アニス見てたんでしょ?どうだったの?」
彼は俯いたまま搾り出すような声で小さく「そうだ。」と呟いた。すると彼女は壁にもたれかかり絶望をした顔で泣くのを我慢したかのような声で呟き始めた。
「もう…誰を信じれば良いのかな…?私が信じたのがいけなかったの?もうわかんない、わかんないよっ!」
そう言う彼女を静かに彼は抱きしめた。その行動に彼女は少し驚いたがすぐにそれを受け入れた。そして彼女はその瞬間に溜めていた涙を滝のように溢れ出させた。彼の胸の中で思う存分泣いた。もうそれがスターチスに裏切られたことにないているのか、信じてしまった自分を恨んでだったのかもう感情がぐちゃぐちゃで彼女自身もよくわからなくなっていた。泣き終わった後に彼女は
「ずっと、そばにいて…?」
彼の胸に顔を埋めたまま今にも消え入りそうな声でそう言った。
「…あぁ。」
彼は困惑君だったが、彼女を安心させるために返事をした。
絶望に苛まれる中彼女達は街を後にすることにした。
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イチャイチャ