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12 - 第十二話「累の眠る場所」

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2025年07月25日

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深層――

ないこは、再び歩き出していた。さきほどの“記憶の扉”をくぐったことで、彼の中には静かに確かなものが芽生えていた。


――僕は、自分から目をそらしていた。

それでも、もう一度、知りたい。全部を。


冬心は、その背を静かに見守る。


冬心: この先に、累がいる。

彼は今でも、“君の痛み”を受け止めたまま、この深層で眠っているんだ。


ないこ: ……僕が、閉じ込めたままにしてしまったんだね。


冬心(首を振る): 君を守るために、彼は自ら選んでここに残った。

……でも、そろそろ君が彼を迎えに行く時だ。


***


しばらく歩くと、空気が一変した。

無音の森を抜けた先――そこには、白い花で覆われた美しい丘が広がっていた。空も、空気も、色彩さえも、どこか現実よりもやさしい。


その中心に、ひとつの石碑が静かに立っていた。


ないこは、胸の奥で何かが脈打つのを感じながら、ゆっくりと近づく。


ないこ: 累……君は、ここに……


その瞬間、風が吹く。花びらが宙を舞い、石碑の前に黒い影が集まり、形を成す。


やがて現れたのは、やわらかい瞳をした少年――累だった。


累(微笑んで): ……やっと、来てくれたね。


ないこ(震える声で): 累……ごめん……ずっと、君を忘れてた……君の痛みも、言葉も、存在さえも……


累(首を振る): それでも、僕はずっとここで待ってたよ。

“ないこ”が、本当の自分を思い出すその日を。


ないこは、一歩近づき、累の目をまっすぐに見つめる。


ないこ: 僕は……ずっと仮面を被っていた。“誰かに愛されるための僕”を作って、それが本当だと思い込んでた。でも、違ったんだね。


累: うん。

君の“本当の声”は、ずっと君の中で眠ってた。

そして、今ようやく――


(累は、静かに冬心の方へ目をやる)


累: ――僕たちも、君にそれを教える準備ができた。


ないこ(目を見開く): ……え?


冬心(現れ): 君が、僕たちを“誰”だと思ってるかは分からないけど――

そろそろ、思い出すべきだよ。“僕たちの生まれた理由”を。


ないこ: 僕が……作った? 君たちを?


累(頷く): 僕たちは、“記憶”じゃない。

君の中にある“願い”や“痛み”から生まれた、“心の断片”なんだ。


冬心: 本当は……ずっと、君が必要だったんだよ。

壊れてしまわないように。消えてしまわないように。


ないこ: そんな……僕が、君たちを……


累(やさしく): それは、悲しいことじゃない。

むしろ、あの時の君の決断は……誰よりも勇敢だった。


ないこの足元に、“新たな扉”が現れる。

それは最初の扉よりも重厚で、黒と白が入り混じった不思議な模様をしていた。

扉の中央には、淡く光る文字が刻まれていた。


「始まり」




冬心(静かに): 次に開くのは、“君のすべて”の始まり。

“ないこ”が、“ないこ”になる前の物語。


累: 僕と冬心が生まれた、その瞬間の記憶――

君の深層で、ずっと眠ってた“心の核”。


ないこ(目を伏せて、そして見上げて): 僕は……知りたい。

全部、思い出す。君たちのことも、僕自身のことも。


冬心(微笑んで): それが、“再生”の始まりだ。


ないこが扉に手を伸ばす。

その瞬間、世界が淡く揺れ始めた。


***


現実世界――


暗く閉ざされた部屋。割れた鏡の破片の前で、闇ないこが膝をついている。


闇ないこ: ふざけるな……記憶が……勝手に……ッ

あいつが、目を覚ます……ッ!


震える手で頭を抱える。

だが、その瞳の奥に、一瞬だけ“迷い”が生まれる。


闇ないこ: 俺が……消える……?

いや……僕が、本当の“ないこ”だったはずだろう……ッ!


その叫びは、空間に響き、鏡の破片に反響していく。

そしてその中に、扉の前に立つ“ないこ”と、累・冬心の姿が一瞬だけ映り込んだ。


闇ないこ: ……来るな……来るな……来るなああああああ!!!


叫びと共に、深層と現実を隔てる境界が軋みを上げる。


――そして次回、すべての“始まり”が明かされる。


次回:「第十三話:始まりの記憶 ― 累と冬心 ―」へ続く

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