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なんか暇だからもう1個
びー
元貴は、放課後になるとよく屋上に行く。
人が少なくて、静かで、ひとりになれる場所だから。
でもある日――
「…ここ、使ってる?」
先にいたのは、涼架だった。
フェンスにもたれて、空を見ている。
「あ、いや…別にいいけど」
気まずい空気。
でも、その日から――
なぜかふたりは、毎日屋上で会うようになった。
⸻
最初はほとんど話さなかった。
でも少しずつ、会話が増えていく。
「元貴って、よくここ来るの?」
「うん。落ち着くし」
「…わかる」
そんな短いやりとりでも、なんか楽しかった。
翌日
屋上は、静かだった。
元貴はフェンスにもたれて、ぼんやり空を見ていた。
扉の開く音。
振り返らなくてもわかる。
「…来たんだ」
「うん」
短いやりとり。
でも、それで十分だった。
⸻
やっぱり涼架と過ごす時間は、不思議と楽だった。
無理に話さなくてもいい。
無理に笑わなくてもいい。
ただ隣にいるだけで、落ち着く。
⸻
「元貴さ」
涼架がぽつりと話し出す。
「なんでここ来てるの」
少しだけ間が空く。
元貴は目を細めた。
「…なんか、全部から離れたくて」
本音だった。
クラスのことも、人間関係も。
少しだけ疲れていた。
⸻
「俺も」
涼架が言う。
その声は、いつもより少し低かった。
「だから来てる」
⸻
夕焼けが、ゆっくり沈んでいく。
風もない、静かな時間。
⸻
「さ」
元貴が少し笑う。
「なんか似てるね、俺たち」
「…そうかもね」
涼架も小さく笑った。
⸻
そのあと、ふと沈黙が落ちる。
でも今日は、少しだけ違った。
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妙に、意識してしまう距離。
⸻
「…元貴」
名前を呼ばれる。
それだけで、心臓が強く鳴る。
「なに」
「もしさ」
涼架が、ゆっくり言葉を選ぶ。
「ここじゃなくなっても…会う?」
⸻
元貴は一瞬、言葉に詰まる。
それってつまり――
「…会うよ」
すぐに答えた。
迷いはなかった。
⸻
涼架は少しだけ驚いた顔をして、それから安心したように目を細めた。
「そっか」
⸻
帰り道。
いつもより、少しだけ距離が近い。
手が触れそうで、触れない。
でも――
「…寒くない?」
涼架が聞く。
「ちょっとだけ」
そう答えた瞬間、
そっと、袖を引かれる。
⸻
「これなら平気でしょ」
軽く引き寄せられる形。
ほんの少しだけ、肩が触れる距離。
⸻
元貴の心臓がうるさい。
でも、不思議と嫌じゃない。
むしろ――
離れたくないと思った。
⸻
「…ありがと」
小さく言うと、
涼架は静かに答える。
「どういたしまして」
⸻
言葉にしなくても、なんとなく伝わる。
この関係が、ただの“友達”じゃないこと。
でも、まだ名前はついていないこと。
⸻
それでもいいと思えた。
今は、この距離のままで。