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庫裏(くり)からいつもの居間ではなく、本堂へ向かった面々を迎えたのは、オルクス以外の六人のスプラタ・マンユ、モラクス、パズス、ラマシュトゥ、アジ・ダハーカ、シヴァ、アヴァドンの魔王種達、さらに七人のちょっと異形な新加入メンバーであった。
「ラマシュトゥちゃん、この子『ウトゥック』のラビスちゃんなんだけどね、ウチから転移させてくれたんだけど、それ以降動かなくなっちゃって話しかけても返事もしないのよ」
コユキがアカベコをラマシュトゥの前に置きながら言った。
ラマシュトゥはアカベコをチラリと見ただけでコユキに向き直り、右手の小さな切り傷に回復魔法をかけながら答える。
「ラビスは本来の役目は自然災害や敵の襲来を予告する精霊なのです、その際に好んで憑依するのは小さな女の子の体が多いのですわ。 そうすると人によっては『子供の戯言(たわごと)だろ?』なんて仰ったりして敬意に欠ける態度を取ったりされる事が多いらしくて…… そんな時、頭にきちゃったラビスは自分の魔力の剣で相手を切り付けるんですわ。 切りつけられた相手はアラ不思議! どこか知らない異国まで飛ばされてしまいましたとさ、って按排(あんばい)なんですの、いつもは。 つまり、怒りのパワーで転移させるのではなく、顕現したばかりで弱い内に魔力を使い果たして転移した事による魔力切れ、暫く(しばらく)寝ていれば治りますので御安心を」
コユキも安堵したのだろう、ホッとした表情を浮かべ(顔肉が多いため他人からは判別不可能です)ながら言葉を返す。
「そっか、そっか、安心したよ! まだ話しの途中だったからねぇー! 祠(ほこら)とか何とか、まだまだ聞かなきゃいけない事が有ったのよぉぅ! んでんで、いつ頃又会話が出来るようになんの?」
ラマシュトゥが首を傾げながら答えた。
「そうですわねぇ? 大体、そうっ! 一年位でしょうか?」
「「えっ!」」
「?」
思っていたより随分時間がかかると驚いて声を揃える善悪とコユキを、キョトンとした顔で見つめるラマシュトゥ。
寿命と言う概念すら持たない悪魔と、限られた生に捕らわれた人間の時間感覚は、当然だが大きく乖離(かいり)しているのだろう。
「そっか、結構掛かるんだね…… 訪ねろって言われた祠の場所とかはお預けって事になるか…… んまあ、その前にバアルをこっち、現世(うつしよ)に連れて来なくちゃならないみたいだから、そっちに集中するかね」
「うん? バアルを連れて来る、でござるか? 祠って言うのも、何でござる?」
善悪の疑問に対して、今日のお見合いでの出来事と帰って来てからのラビスとのやり取り、伝言の内容を簡潔に話すコユキ。
善悪や幸福寺の面々が真剣に聞いていたが、意外な事にトシ子も初めて知った様子でコユキに言うのであった。
「ふうん、それで善悪と一緒にいるって言い張っていたって訳なのかい…… まあ、それなら判らなくも無いけどね…… ゴホン、それは兎も角バアルを顕現させるってーのが厄介だね、確かヘルヘイムから出れないんだろ、あの悪魔?」
「それなのでござるが、ムスペルヘイムに行った時、大口の真神(おおくちのまかみ)『口白(クチシロ)』から聞いたのでござるよ、バアルが魔界の三層を自由気ままに歩き回ってる、それこそニヴルヘイムに現れたそうなのでござるよ」
「なんだってぇ! それが本当なら大事件じゃないかいっ! 大魔王ルキフェルが許可を与えたって事じゃないかね! それが本当だったとしたら、悪魔の召集…… 終末の戦い…… まんま、あ、アルマゲドン、じゃぞいぃ……」