コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
血で濡れる包丁を握る手が震えるこんなはずじゃなかったのに自然と上がる口角を必死に抑えながら私は思った。
結婚生活も早5年
「なんでこんなことになってるんだろうな」と振りかぶられる拳を見ながら私は思った、
あの人と会ったのは大学のサークルだった。内気だった私は人と話すことも出来ず友人も少なかった、
唯一話せる人と言えば小さい頃からの幼なじみの結だった結は人懐っこくて小さい頃から人気者だった。
もちろん私はクラスの隅っこに居るような人間で、話しかけられた時は困惑したなんでこんな人気者が私なんかに、
「ねぇねぇ!」
と弾けるような笑顔で話しかけてきた
「な、なに」
「なによんでるの?」私は本に視線を向けた「太宰治、」
「むずかしいのよんでるねー」
その一言を言って結は友達の元へ走っていった
「ねぇねぇ灯ー」
小学校から変わらない弾けるような笑顔で言ってきた
「今日サークルの飲み会じゃん?どんな服着ようかなー」
「え、そうなの?」
「知らなかったの?」
知るわけない元々結が誘ってきたので入ったのだ興味などなかった
「私はーめっちゃお洒落しようかなー」
「結は私と違って可愛いからお洒落しなくてもお洒落に見えるよ」
「もーまたそんなネガティブなこと言って」
本当のことだ、結は万人受けするような美と性格を持ち合わせている目は大きく二重で、今咲いたばかりの花の様な生き生きとした美しさと華がある
それに比べて私はそう際立って特別と言えるようなものは無い 所謂『普通』だった勉強も普通、運動神経も普通全部が『普通』だ
「ねぇ聞いてるー?」
そんなことを考えていたら横から結がひょこっと現れた
「ごめん、なんだっけ」
「もー、サークルの飲み会!!灯はどんな服着るの?」
「ん〜…Tシャツにジーパンでいいかな」
「もー。ふつーだね」
「いいの普通で、普通が1番」
「ふーん、私はお洒落に行こっ」
「いいな、結は明るくて太陽みたい」
「灯も『灯』でしょ?それに太陽までいかなくても人を照らすことぐらいできるよ」
「名前だけだよそんなの」
私の父と母は私に明るい子になって欲しいと思って『灯』と名付けたらしい。
そんなことも知らずにこんなネガティブな人間になってしまったと思うと両親には申し訳ないなと心の中で思った
「かんぱーい!!」
それと同時に皆がザワザワと騒ぎ出す
「えー何食べる何食べる?」
「えっ、と私は枝豆でいいかな」
「灯おっさんやん笑」
「そう、かな」
「はーい!私シーザーサラダ!!」
「結は枝豆とは違うなー!!」
「もーやめてよー」
「あはは、」
「おれ、刺し盛り〜〜」
やっぱり苦手だ、こういう雰囲気そもそも私は図書館で静かに本を読んでる方が好きだ、こういう雰囲気は慣れていない、なんで入ったのだろうと心の中で後悔した。
「てか、まさし刺身好きだよねーいっつも刺身頼むじゃん笑」
「でもこの前刺身でお腹こわしてたよね笑」「いや、あれはマジで死ぬかと思ったんだぜ?!」
「ださっ笑」
「そう言えば、、うちの父ちゃん船乗りでよ、よく昔きいたんだよな。「ここに沈めたら人は浮いてこない、ここの港に沈んだヤツらはいっぱいいるでも、誰一人見つかった奴は居ない」ってよく言ってたんだよなぁ」
「何それこわーい笑」
そうなんだ……じゃあ完全犯罪って事、?不謹慎だったが、何故か、興味が湧いてしまった…
「灯ーのんでるー?」
舌っ足らずになりながら結が近づいてきた
「全然飲んでないじゃ〜ん」
「ちょっと、ゆ、ゆい、程々にしなよ?」
「わかってるってぇ」そう言いながらまた友人と飲み始めた
「はぁ」
溜息をつきながら私は箸を動かした
「灯、大丈夫?」
そう言ってきた人はいつも端っこにいる存在感の無い山田春だった。名前は知っていたが話したことは無かった
「あ、大丈夫ですえっと、春さん、でしたっけ、」
「そう。知っててくれたの?ありがとう。春でいいよ同い年なんだし、」
「じゃあ春くんで、」
「あ、うん、よろしくね。」そう言って手を差し出した。
そこから話が時間とともに進んでいった。
しかし、この出会いが私の歪んだ人生の始まりだった
「そろそろお開きにするかー」
そう声が聞こえてきたスマホを見れば終電まであと少しだった。
もうそんなに経つのか、春くんと話していたらあっという間だった
「灯、LINE交換しない?」
「あ、うんいいよ」
春くんのQRコードを読み込んでいると
「猫、飼ってるんだ」
と私のホーム画面を指さししながら言ってきた「あぁそう かわいいんだぁデブだけどね笑」「へー、名前は?」
「大福 真っ白で丸っこいから食いしん坊でさ癒されるんだよね」
「ふーん、いいなぁ灯にそんなに好かれてて」
そう言うと彼は私の顔をじっと見つめてきた
目を、逸らせなかった
「灯ー?終電間に合わなくなるよ」
結の一言でハッとして
「じ、じゃあまた」
と逃げるように出ていった。
「あー楽しかったねー!のみすぎちゃったよぉ」
「、、、」
「、灯?」
「あっごめん、」
「どうしたの?さっきからおかしいよ?」
「ごめん、」
「平気ならいいんだけど、てかこの前さー」と結は話し始めるが頭に入らなかった
彼の目を見てから、
彼の目には愛おしいものを見つめてるかのような、憎いものを見てるような…『執着にもなりそうな好き』が、感じ始め、
その日から、私の頭の中から彼が離れなくなった。