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豚は激怒した。
なにかの本を引用するほど豚は激怒していた。
村の豚は全部で100頭。
激怒している豚は俺のみだ。他の豚は仰向けに転がったり、ヨダレを垂らしたりしている。決して広くはない部屋で、奇声をあげている豚もいる。
俺はこの100頭の豚が、ひしめき合っている部屋しか知らない。
しかし、外の世界があることは知っている。そして、家畜として一生終えることも理解している。それゆえに激怒している。
推察するに俺は頭が、他の豚よりも良いのだろう。この豚小屋と呼ばれる空間を、世話する人間のおかげだ。やつらの言葉を理解し、知識を得た。だからこそ、頭の悪い人間より低く見られ、家畜として扱われること自体に我慢がならない。
例えば世話係のジョージは、一往復で出来る仕事でも、三往復掛けてする。ベテランのトニーは一往復だ。トニーはジョージに、何回も仕事のやり方を教えている。でも、出来ない。そしてトニーは怒る。
だが、ここで怒るのは間違いだ。ジョージは怒られて伸びるタイプではない。ジョージは褒められて伸びる子なのだ。
ジョージは前の指導係に褒められた時、作業効率はそのままだったが、豚小屋は今よりも格段に清潔だった。そして、良い笑顔で仕事をしていた。
ついに我慢ならず俺は叫んだ。
てめぇの教え方は、こいつには合わねぇ引っ込んでなと。
次の瞬間ドスンと言う音が聞こえ、俺は横向きに倒れていた。間違いなくトニーが、俺の豊満なボディを蹴りあげたのだろう。俺はゼェゼェと息をするだけで、手一杯だった。トニーはブヒブヒ言ってんじゃねぇと叫びながら、絶えず蹴りあげてくる。
俺は蹴りあげられる痛みよりも、俺は豚の
中では美声であると言いたかった。
そう思って気を失った。
忸怩たる思いを胸に抱えて。