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2023年03月19日

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その日は朝から雪だった。十勝では初雪だ。

窓の外に広がる銀世界を目にした慎太郎は、興奮した様子で声を上げている。

「うわあ、すげー!」

仕事が休みの北斗は、それを見て優しく笑っている。

「なんか犬みたいだな。初めて?」

「前住んでたところは降ったことはあるけど、積もったのは初めてです」

「そっか」

「ほら、窓際寒いよ。こたつ入って」

大我がこたつ布団をめくって示した。

並んでホットミルクを飲む。ここに来てから、大我に倣ってジェシーの牧場産の牛乳を朝に飲むのがルーティーンになっていた。

「あったかいね」

「ですね」

やけに難しい言葉をいっているかと思えば、ジェシーの牛乳が好きでいつも飲んでいる。そんなギャップが面白い人だな、と慎太郎は感じる。

「おいジェス、雪かき行くべ」

優吾はジェシーに声を投げる。慎太郎も手伝おうとしたが、「寒いからいいよ」と言われこたつに戻った。

「いやーしばれる」

やっと起きてきた樹は開口一番言った。

「知ってる? しばれるって。寒いとか凍るって意味」

「そうなんですか」

「なまら雪降ってる。こたつ入ろっと」

慎太郎の向かいに座り込むと、置いてあったみかんを剥きはじめた。

「ちょっと2階で作業してくる。みかん食べてていいよ」

北斗は立ち上がり、慎太郎に言い残して出て行った。



「いやーひゃっこい(冷たい)!」

雪かきから戻った優吾とジェシーは、冷えた手をストーブで温める。

「今日もしばれるもね」

「そだね」

彼らの北海道弁にも慣れてきた。大我は東京出身だが、ほかの4人は生粋の道産子だ。

「さっ、樹、慎太郎くん、牧場行くべ」

ジェシーは早速言う。

「今からですか? もうちょっと休憩したら…」

「いや、牛たちは待ってくれんから。早く搾乳しないとね」

慎太郎はうなずき、用意を始める。樹も渋々こたつから出た。

が、その瞬間。

「うっ、ゲホッゲホ…」

突然樹が胸を押さえて咳き込みだした。

口を覆う指の隙間からは、わずかに血が流れる。

そのまま床に倒れた。

みんなは声も出せず、その場に固まっている。

一番早く我に返ったのは優吾だった。「…おい樹! 樹、大丈夫か」

肩を揺すっても返事はない。

大我は「北斗呼んでくる!」と2階へ向かう。

やがて、2人が下りてきた。北斗の手には見たことのない形のマスクのようなものがあった。

「マジか、喀血してる…」

少し驚いた顔を見せたが、冷静にそのマスクを口元に当て、膨らんだゴムの部分を押した。

空気が送られているようで、だんだん樹の表情が和らいできた。

そして未だに困惑している4人を振り返り、

「まだ言ってなかったな…」

とつぶやく。

「樹は俺の患者。気管支拡張症っていう病気なんだよ」


続く

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