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私
にとってこの世は理不尽だらけの世界です。
だけど私はこの世界を肯定したいと思っています。
だって私はまだ生きているんですから!……いやー我ながら意味不明なことを言ってしまった気がしないでもないですね。
でもそういうことなんですよね。
結局のところ全ては自分の捉え方次第ということなのでしょう。
「今日こそ決着をつけてあげるわ!」
目の前にいる女の子が威勢良く声をあげるが、それに付き合っている暇はない。「あのさぁ……君とは今初めて話したと思うんだけど?」
「えぇ!? なんでですか! 私はずっと先輩のこと見てましたよ!」
「いやいやストーカーじゃんそれ」
「違いますぅー!! 私のこと知らないんですか? 同じ一年生なのに!!」
「悪いけど興味ないんだよね」
「ぐぬぬ……この私がここまで言ってあげてるっていうのにぃ……」
僕だって別に好きで相手をしているわけではないのだが、向こうが勝手に絡んでくるのだから仕方がない。
彼女は先程から一方的に話しかけてきていて、その内容はどれも取るに足りないものばかりだった。
例えば好きな食べ物とか趣味だとか休日は何をしているのかといった質問に始まり、昨日見たテレビの内容やネットの話題についてなど様々である。
本当にくだらない内容ばかりでうんざりするが、彼女の言い分を聞いてみると確かに納得できる部分もあった。
だけどこれではあまりにも一方的な主張ではないだろうか。
そもそもなぜ彼女はそこまでして僕を貶めようとするんだろう? 別に僕には彼女に対して何か悪いことをしたという覚えはないんだけど……。
それにこの手紙だって明らかに僕個人を狙って書かれたものだし、そうなると他のクラスメイトたちは関係ないことになるんじゃないのかな? だとしたら一体誰が僕たちを陥れようとしているんだろうか? うーむ……これはなかなか難題かもしれないぞ。
「……あの、大丈夫ですか?」
考え込んでいたせいか心配されてしまったようだ。
さすがに見つめすぎたようで少し恥ずかしい気持ちになる。
「ああごめんね、ちょっとぼーっとしていて。ええと確か君は委員長の――」
「はい。三年一組の学級委員を務めています柊木彩音です。よろしくお願いしますね?」
昼休みの時間になり、クラスの皆はそれぞれ昼食の準備を始めている。
そんな中で僕は隣の席にいる女の子から声をかけられたのだが、とても可愛らしい子だったので少しドキッとした。
綺麗な金髪をツインテールにしている彼女は背丈が小さくて童顔なので見た目だけなら小学生でも通用してしまいそうだが、実際は高校生二年生だというのだから驚きである。
それに加えてこの学校では珍しい女子生徒であり、同じクラスになったのは今回が初めてだったりする。
ちなみに彼女の名字には聞き覚えがあった。
確か去年の文化祭の時に実行委員長を務めていたはずなので印象に残っている。
だけど何故彼女が僕の名前を知っているのだろうか? 別に目立つようなことをしてきた記憶はないんだけど……。
「ああ、ごめんなさい。突然話しかけられてびっくりしましたよね?」
「……えっと、誰ですか?」
声をかけられた少女―――沙耶架は首を傾げながら目の前に立つ少年を見つめている。
見た目にはどこにでもいそうな普通の高校生といった感じで、とても不良のように見えないからだ。ちなみに彼女の後ろに控えている護衛二人はさすがに顔見知りであるため、警戒心を解いてはいないものの少しだけ表情を和らげていたりする。
「初めまして、同じクラスの鷹司隼人といいます」
「はぁ……それで何か用ですか?」
「いやーごめんね。わざわざ呼び出したりしてさ」
放課後になり指定された場所へとやってきたのだが、そこにいたのは同じクラスの女子生徒であった。
彼女は少し申し訳なさそうな顔をしているものの、その声色はどこか楽しげなものを感じる。
おそらくこの状況を楽しんでいるのだろう。
それくらいのことしか思い浮かばないあたり、やはり僕は凡人らしい。
「それで話というのはなんでしょうか? あまり時間がないので簡潔にしてもらえるとありがたいんですけど……」
とりあえず相手のペースには乗らずに冷静に対応することにした。
変に熱くなっても良いことなんて一つもないからである。
それにこれから何を言われるかも分かってはいないのだ。
慎重に対応する他ないだろう。
「んーそうだねぇ……。じゃあ単刀直入に言うよ。あたしと付き合ってくれないかな?」……はい? 今この子は何て言ったんだろう。
あまりにも唐突すぎてよく分からなかったぞ。「えっと……ごめんなさい?」
とりあえず謝ったのだが―――
「なんで疑問形なんだよ!?」
「だっていきなりだし!」
「お前が呼び出したんだろ! しかも今さらだけど敬語使えよな!!」
ああもううるさいなぁ。こっちは朝っぱらから色々あったせいで疲れてるっていうのに。
でも確かに今の態度はよくないかもしれないね。反省しないと。
「すみませんでした。これから気をつけますので許して下さい」
ここは素直に頭を下げておこう。変に言い争っても仕方ないし。
「よし、それじゃあさっそく勝負しろ!」
うん? どういうことかなこれは。さっきまでの謝罪は何だったんだろうか。
まったく意味が無かったじゃないか。これではただ単に無駄な時間を過ごさせられただけではないか。
僕は今朝の出来事を思い出して大きく溜息をつく。
「おはようございますお兄ちゃん!」
学校に向かうために家を出たところで後ろから元気の良い挨拶をされたのだが、その声の主はすぐに分かった。
「ああ、おはよう。今日はずいぶん早起きなんだね」
「はい! だって今日は……あっ、やっぱり内緒にしておきます」