テラーノベル
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ベルは自分の小さな手のひらに収まるソレを、まじまじと見つめる。
「……ねえ、これ」
「ほら、あいつらが行ってしまうぞ。いいのか?」
レンブラントはベルの言葉を遮って、顎でフロリーナ達を示した。
言外に、これを喚き散らかすフロリーナ達に見せつけろと言っている。はっきり言ってしまえば、ぎゃふんと言わせてみろと命じているのだ。
しかしベルは、手の中にあるソレをぎゅっと握りしめたまま黙りこくる。やれと言われても、できるわけがない。
(だってコレ、偽物じゃん!そんなのここで見せたら、どうなると思ってるの!?)
レンブラントから手渡されたのは、破壊したはずのケルス領の領印だった。
どうやってこれを複製したのかわからないし、そもそも自分はレンブラントに領印を破壊したことを伝えていない。一体、いつどこで……いや、そんな過程はどうでもいい。
それより軍人という立場にいる彼が、レプリカを作るだけでも重罪だということは知っているはずなのに、これを法令の執行等の職権を持つ集団の前で、フロリーナに見せつけろと言っていることの方が問題なのだ。そんな恐ろしいこと、できるわけがない。
自分が更に罪を重ねることでなく、レンブラントが罪に問われることが怖いのだ。
それなのに、レンブラントはさっさとやれと背中を押す。いつか見せてくれた、不可能を可能にする笑みを浮かべながら。
「ベル、俺を信じろ。あんたが恐れているようなことにはならない」
まるで自分の心を読んだかのように、レンブラントは低く優しい声で囁く。
何を根拠にと詰め寄りたい。怖いもの知らずの彼の発言に、いっそ呆れてしまう自分がいる。
しかしこれまでレンブラントは、一度だって自分を裏切ったことはなかった。彼に対して失望したことも、軽蔑したことも、悔しいが一度もない。
レンブラントは、ずっとベルの味方でいてくれた。
だからベルは、レンブラントの言葉を信じることにした。
「義母さま、あなたが言っているのはコレのことですか?」
ベルは一歩前に出て、手のひらに収めていたそれをフロリーナに掲げて見せた。
離れた場所にいるフロリーナは、最初それが何かわからなかったのだろう。目を細めてそれを見つめる。
待つこと数秒、フロリーナは驚愕した。
「……嘘。あなた私たちを騙していたのね!?卑怯者!!」
壊した領印が現存しているとまんまと勘違いしたフロリーナは、あらんかぎりの声で叫んぶ。
次に「この領印は偽物よ!」と叫んだ。なんとしても自分だけじゃなくベルも裁きの場に連れて行きたい一心で。
しかし、執念と呼ぶべきそれはレンブラントによって一刀両断される。
「偽物なわけがあるか。これは本物だ」
何も言い返すことができないベルに変わって、レンブラントはきっぱりと宣言した。
そして納得できない表情を浮かべるフロリーナに向け言葉を続ける。まるで絶対的に自分が正しいという前提の下、罪人を見下すような口調で。
「ま、あんたがこれを偽物と言い張りたいなら、特別に国王陛下の御前で直訴できる権利を与えてやろう」
言い終えたレンブラントは、フロリーナに向けニヤリと挑発するように笑った。
コメント
1件
第99話、読み終えたわ!ベルが「偽物じゃん!」って心の中でパニックになりながらも、レンブラントを信じるって決めた瞬間がグッときた。今まで裏切られたことないっていう信頼関係がちゃんと描かれてて、そこに感情が動かされたよ。フロリーナの「卑怯者!」って叫びも、レンブラントの挑発的な笑みも、駆け引きが熱くて続きが気になる🔥
日暮ミミ♪
542
臣桜
48,719
鷹槻れん

1,179
#ハッピーエンド
れもん データ飛んだ人
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