コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
「亜季ちゃん…ありがとう。でも、千葉はわざと、ああして僕を責めているんだ。僕が後で1人で苦しまないように…なぁ、千葉っ!」
「俺が、そんな気の利いた事すると思うか?」
「どうだろうな? けど…感謝してるよ」
「うるせえよっ…バカがっ!」
千葉は照れ臭そうに、憎まれ口を叩いていた。
「それにしても、千葉…お前何で入院してるんだ?」
「犬に噛まれたんだ。野良犬3匹にだぞ。おかしくねぇ?」
「お前ならありえるよ」
「でもさ…変なんだよ。あの日、佐藤葵に瑛太の傍にいれば犬に噛まれずに済むって言われたんだ。だから嫌々だけど一緒に帰ったんだ。はぁ…‥」
千葉は嫌そうな顔をして溜め息をついた。
「断ったのに、お前が勝手について来たんじゃないか!」
「そんな事ねえよ。瑛太は笑顔で“いいよ”って言ってくれた。頭を強く打ったから覚えてないだけだろ」
「そうだったっけ?」
「瑛太さん、嘘ですよ。騙されないで下さい」
「妹、言うなって!」
「いいから続きを話せよ」
「うっせーよ。黙って聞けよ。それでよ、瑛太の後をついて行ってたんだけど、途中から記憶がないんだ」
「お前の事だから、ボーッとしながら歩いてたんだろ!」
「クソがっ…瑛太ちゃんはホントにおバカでちゅね。そんな事だったら、わざわざ話す必要ないだろがっ!」
コイツ…いちいち腹が立つ。
ぶん殴ってやろうか。
「瑛太さん、落ち着いて…‥」
亜季ちゃんが優しくなだめてくれたので、少しは落ち着いてきた。
「話の続きだけどよ、次に目を開けたら何処にいたと思う?」
「どこって…家だろ?」
「ブー。瑛太くん、君もういいや! 少し黙っててくれる。はい次、妹」
「えっ…私?」
「そうだよ。答えろよ」
「わかりました。答えます。千葉くんは目が覚めると、家の近くの公園で、ブランコに腰かけてた。辺りを見渡すと既に3匹の犬に取り囲まれていて、逃げようにも逃げ場がなかった。そして最終的に、その犬たちに襲われて10箇所以上噛まれてしまった。でも、不思議な事に噛まれてから数分しか時間が経っていないのに救急車がやって来た。誰も呼んでいないのに…。そんな所ですかね」
「・・・・・」
千葉は驚いた顔をして、頭を掻きむしっていた。
「どうなんだよ?」
「あぁ…完璧だよ。まるであの場所にいたかのようだ。でも、どうしてわかった?」
「勘ですよ。私、こういうの当てるの得意なんですよ」
亜季ちゃんは、両頬に手をあて恥ずかしそうに微笑んでいた。