テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
朝ご飯を食べつつ、俺はかねてからできればやっておきたかったことを口にした。
「今日さ、防災の日じゃん」
『うん』
「あのさ、俺経済的に余裕出てきたから、災害備蓄始めたいんだ」
『災害備蓄?』
千歳(朝霧の忌み子のすがた)は目をパチクリした。
「俺さ、なんだかんだで今の暮らしが幸せだから、それを維持したいんだけど、地震だのなんだの多いし、でもそう言うのが来てもなるべくダメージを減らしたいんだ」
『そ、そうか』
「だから、何日かの停電に備えられるくらいはやっときたい」
『ふーん……まあやっといたほうが安心か』
千歳は少し考えた。
『うちガスコンロだから、停電でも煮炊きは出来るぞ。米も新米が出るまでくらいは持つ……あ、でも、冷蔵庫の中のものはダメになっちゃうかあ』
「断水もあるかもだし、水とレトルト食品と缶詰と、あと携帯トイレなんか揃えておくべきかなあ」
『それくらいでいいか?』
「後はスマホ使えないと困るから、モバイルバッテリーとか」
『そうか。ていうか、土砂災害注意報出てたし、今そこにある危険だよなあ』
千歳は頷いた。
「このアパート周りは大丈夫だと思うけど……でも、うちよりもっと山の近くに立ててる家は怖いかもねえ」
うちのアパートは坂の上なので水害の心配はない。ただし少し歩くとかなり山に分け入ってしまい、斜面に無理やり建ててる家がたくさんあるのだ。
それから千歳と話し合い、今日は休みで時間あるし、雨足も弱いし、駅前とスーパーは土砂崩れの心配ない地域だしで、今日買えるものは買いに行こう、となった。
『ワシ、いつものスーパーに買いに行ってくる』
「食費とはまた別にお金出すね」
『後でレシート渡すな』
「俺は駅前の電気屋とホームセンター探してみるよ」
そう言うわけで、千歳は近くのスーパーへ水と缶詰とレトルトを買いに行き、俺はバスに乗って駅前の電気屋とホームセンターに行った。いろいろ探し、とりあえずモバイルバッテリーと携帯トイレ詰め合わせは確保できた。
家に帰ると、千歳が『大漁だぞ!』と帰ってきた。
「いいのあった?」
『缶詰いろいろと、乾燥野菜ミックスと、インスタント味噌汁と、温めなくてもうまいレトルトカレー買ってきた』
千歳は両肩に下げたエコバッグをドサッと下ろした。
『ペットボトルの水も5本くらい買ったけど、本当はもっと欲しいな』
「Amazonかヨドバシで買い足そうか。俺はモバイルバッテリーと携帯トイレ買えたよ」
千歳は首を傾げた。
『お前さあ、スマホはそれで使えると思うけど、パソコン用の電源はなくていいのか?』
「うーん、ホームセンターにはちょっとなかったんだよな……これもAmazonかヨドバシだな」
二人で荷物を整理して押し入れに突っ込んでから、俺はAmazonとヨドバシで非常用電源を探した。ソーラーパネル付きがいいなと思って探したら、10万するので腰を抜かすかと思った。
「……めちゃくちゃ高い……」
『いくらするんだ?』
「ソーラーパネル付きのやつで10万。電気ある時に充電しとくだけのなら3万くらいなんだけど……」
『ふーん』
千歳は千歳用の物入れ棚に行き、万札を取り出した。
『ほれ、十万』
「え!?」
#幽霊
凛道桜嵐 新
193
#日常
がくじゅつてき・あかげ
22,155
わーい
41
485
『ソーラーパネル付きのほうがいいだろ、払ってやるから買えよ』
「いいの!?」
千歳はなんでもない顔で言った。
『ワシ、お前よりたんまり貯金あるんだぞ? こないだの組紐の大体一億あるし、それ以外にも貯金あるんだぞ?』
「それはそうだけども……」
『停電してもお前が仕事するのにいるだろうし、お前のパソコン以外にも使えるし、買え』
千歳は万札をより差し出してきた。
「……じゃあ、ありがとう。買うよ」
俺は万札を受け取り、ソーラーパネル付き非常用電源をポチった。
「本当にありがとうね」
『大した事ない。……お前のしてくれたことに比べたら、本当になんてことない』
「え?」
『この夏、お前ずっと大変だっただろ。必要なものくらい、いくらでも買えよ』
「…………」
俺は、言葉に詰まってしまった。
『……昼飯作ってくる!』
千歳は逃げるように台所に行ってしまった。
……まあ、確かに大変だったけどね。そうか、千歳は俺が大変だったこと、わかってくれてて、それに対して感謝もしてくれてるのか……。
コメント
1件
おお、防災備蓄の話から千歳の深い優しさが滲み出ててじーんときたわ……。ソーラーパネル付き電源に10万出すって「あなたが大変だったのを知ってる」って暗に言ってるのが、もうね。普段は軽い口調なのに、こういうとこで本音を見せる関係性が本当に好き。日常回だからこそキャラの厚みが増すエピソードだった🔥