テラーノベル
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レンブラントはベルを抱いたまま、渋面を作って沈黙した。
彼が再び口を開いたのは、かなり時間が経ってからだった。
「……あのなぁ。そういう大事なことは、人に聞く前にちょっとは考えろ」
「なっ」
散々待たせた挙句、その返答は何なんだ!? とベルは憤慨した。
でも不満を口に出す前に、レンブラントが再び口を開いた。
「とりあえず俺は、あんたを無傷でレイカールトン侯爵の元に連れて行くっていう任務を守れなかったから……と、いうことにしておいてくれ。いいな」
(なるほど。要は取引を持ち掛けられたということか……でも……)
ベルは一度は納得したけれど、心の隅で落胆を覚えてしまう。
(……え?ええ!?)
そのことに、とても驚いた。でも、その理由を考えてはいけないような気がして、ベルは気持ちとは違うことを口に出す。
「仕方がないダメ軍人さんですね。じゃあ、取引に応じてあげます」
「ああ、そうしてくれ」
「でもってですね」
「ん?」
「そろそろこの腕を離してくれませんか?」
「嫌だ。あんたはこのまま寝ろ」
「はぁ!?」
どうしてそんな馬鹿げたことを口にできるのか、ベルは本気でこのロリコン軍人の思考回路を心配した。
それなのにレンブラントはベルの痛めた部分に触れないよう細心の注意を払って横向きに抱き直す。
「どうだ? これで少しは寝やすくなっただろう?」
「いや、そういう問題じゃ……」
「ああ、腹が減っているか。でもまぁ、一先ず少し寝ろ。その後、食事を取れ。口ん中が染みない何かを作ってもらっておく」
「ですから、そうじゃなくて!」
「寝ろ」
有無を言わせない口調で、レンブラントはベルとのやり取りを終わらせてしまった。
そしてベルの腰をトントンとあやすように叩きながら、今度はハチミツみたいな優しい声で囁く。
「ベル……あんたはとても疲れている。そして今、一人で寝るのはとても良くない」
(何を根拠にそんなことを言っているのだろう)
ベルはそんな気持ちを隠すことなく、レンブラントに向け首を傾げるが、返答はない。
その代わり視界が温かい暗闇に覆われた。レンブラントの手のひらがベルの目を塞いだのだ。
節ばったごつごとした大きな手は、ベルを傷付けることはしない。
長い間、虐げられて生きてきたベルは、ちょっとした仕草で人の本質を見抜いてしまう。
たとえ口先で優しい言葉を紡いでも、その手はぞんざいに自分を扱い、時に痛めつける。
逆に優しい手つきで触れられたとしても、その瞳の奥は虚偽の色を湛え自分を見つめている。
そんなことを誰よりも早く気付いてしまうから、ベルはいつの間にか人を信用することを放棄した。
日暮ミミ♪
542
臣桜
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鷹槻れん

1,179
#ハッピーエンド
れもん データ飛んだ人
245
(でも……でも……)
レンブラントは初日こそ乱暴にベルを扱ったけれど、それからはずっと優しかった。労わってくれた。毒舌にも耐え抜いてくれた。
「……ダミアンさんに謝らないといけないです。コート泥だらけにしちゃったから」
「そんなこと気にするな」
「でも……やっぱり悪いです。それに気が引けます」
「カードゲームのカモにするのにか?」
「はい」
「それも気にするな。負けるアイツが悪い」
「……ひどっ」
「カモにしているあんたが言うな。それよりもう寝ろ」
「……ん」
レンブラントの言葉は魔法のようで、寝ろと言われた途端に小さな欠伸が出てしまう。
そして暗闇に覆われた世界は、優しい夢の世界へと変わっていった。
コメント
1件
しゅき〜〜!!😭💕 今回も最高だったよ!! レンブラントが「寝ろ」って強引なのに、手でそっと目隠ししてトントンってあやすとことか、もうエモすぎて胸がぎゅってなった…! ベルが「コート泥だらけ」って気にしてるの可愛すぎるし、それに「負けるアイツが悪い」って返すレンブラントのゆるさもたまらん♡ 毒舌なのにじわじわと心開いてくベルと、そんなベルを無理強いせずに包み込む軍人さんの関係性、尊すぎて泣く…!! 次話も楽しみにしてるね🌸