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🏐 岩及BL『今夜だけは、離さない』
第4話「お前にだけは、甘くなる。」
――青葉城西高校・男子バレー部。
「及川ァ!! トスが甘い!!」
「えええ!? 今の完璧だったでしょ!?」
「うるせえ!! もう一本!!」
体育館に響く岩泉の声。
いつもどおりの光景だった。
……そう、いつもどおりのはずだった。
「岩ちゃん、ちょっと待って! 及川さん、昨日寝るの遅かったから眠いんだけどぉ!」
「……は?」
岩泉の眉間にしわが寄る。
「お前、昨日何時に寝た」
「えーっと……十二時くらい?」
「遅えよ。ちゃんと寝ろっつっただろ」
「だって岩ちゃんとおしゃべりしてたんだもーん♡」
「…………」
岩泉が黙った。
そして。
「……次の休憩、ちゃんと水飲めよ」
「はーい♡」
及川がにっこにこで返事をする。
その様子を、少し離れたところから見ていた花巻と松川。
「……なあ、松川」
「ん?」
「今の聞いた?」
「聞いた」
「岩泉、及川にだけ優しくね?」
「いや、前からだろ」
「いやいや、今日なんか違くね?」
二人は顔を見合わせた。
その視線の先では、岩泉が及川のほうに歩いていく。
「及川、靴ひもほどけてんぞ」
「え? ほんと?」
「転んだらどうすんだよ。結べ」
「岩ちゃん結んで♡」
「自分でやれ!!」
……と言いつつ。
岩泉は及川がしゃがむまで、ちゃんと隣で待っていた。
花巻がぽつりと呟く。
「……あれ、絶対なんかあるだろ」
松川は静かに頷いた。
「……同感」
⸻
💗 休憩時間「及川さんの特権?」
「はーい! 休憩!」
監督の声で、部員たちが一斉に水分補給を始めた。
及川もベンチに座り、タオルで汗を拭く。
「つかれたぁ……」
「ほら」
目の前に差し出されたスポーツドリンク。
及川が顔を上げると、そこには岩泉がいた。
「……えっ、岩ちゃん?」
「水分取れ。お前、さっきから飲んでねえだろ」
「…………」
及川はドリンクを受け取った。
そして、にやぁっと笑う。
「……なに? 岩ちゃん、及川さんのこと心配してくれてるの?」
「当たり前だろ。お前が倒れたら困る」
「えへへ♡」
「ニヤニヤすんな」
「だってぇ!」
及川が嬉しそうにボトルを抱える。
そのとき。
「……なあ、及川」
花巻が背後から現れた。
「ん? なに、マッキー」
「それ、岩泉が持ってきたの?」
「そうだけど?」
「へえー……」
花巻が意味ありげに岩泉を見る。
「岩泉って、俺らにもドリンク持ってきてくれる?」
「……は?」
「いやー、俺、喉乾いちゃってさー」
「自分で取りに行け!!」
「ですよねー!!」
花巻が笑いながら逃げていく。
松川も肩を震わせていた。
「……岩泉、わかりやすいな」
「松川ァ!!」
「はいはい、怖い怖い」
二人が去っていく。
及川はドリンクを飲みながら、岩泉を見上げた。
「……岩ちゃん」
「なんだよ」
「もしかして、及川さんにだけ特別扱いしてる?」
「…………」
「ねえねえ♡」
「……うるせえ」
岩泉は及川の頭を軽く小突いた。
けれど、その手はすぐに離れず。
くしゃ、と髪を撫でた。
「……お前は、ちゃんと見てねえと危なっかしいんだよ」
「…………っ」
及川の顔が、一瞬で赤くなる。
「……岩ちゃん、それ……」
「なんだ」
「……ずるい」
「は?」
「そういうこと言うの、ずるいってば……!」
及川は顔を隠すようにタオルをかぶった。
岩泉は首を傾げる。
「……なんなんだ、あいつ」
けれど。
タオルの下で、及川が笑っていることには気づいていた。
⸻
🏐 放課後「お前にだけだよ」
練習が終わり、部員たちが片付けを始める。
及川はボールかごを運ぼうとしていた。
「よいしょ……っと」
「及川、それ置いとけ」
後ろから岩泉の声。
「え? でも、これくらい運べるよ?」
「今日はサーブ練習やりすぎたろ。手首、痛めてねえか」
「…………」
及川が目を丸くする。
「……岩ちゃん、見てたの?」
「見てるに決まってんだろ」
さらりと言われた言葉。
それが、及川の胸にじんわり染み込んだ。
「……そっか」
及川は小さく笑い、ボールかごを岩泉に渡した。
「じゃあ、お願いしちゃおうかな♡」
「おう」
岩泉がボールかごを持って歩き出す。
及川はその隣に並んだ。
「……ねえ、岩ちゃん」
「ん?」
「みんなにバレちゃうよ?」
「何が」
「岩ちゃんが、及川さんのこと大好きだってこと♡」
岩泉の足が止まった。
「…………お前な」
「えへへ!」
「……調子乗んな、クソ川」
岩泉は及川の額を軽く指で押した。
それから、周りに誰もいないことを確かめるように一度だけ視線を巡らせて。
及川の耳元に、そっと顔を寄せた。
「……お前にだけだよ」
「…………え?」
「特別扱いすんのも。心配すんのも」
岩泉の声は、いつもよりずっと小さかった。
「……好きなのも」
及川は完全に固まった。
「…………い、岩ちゃん……?」
「……これで満足か?」
「…………っ、ば、ばか!!」
「はあ!?」
及川は真っ赤な顔で岩泉の背中をぽかぽか叩いた。
「そういうの!! 不意打ちで言わないでよ!!」
「お前が聞いたんだろうが!」
「心の準備ってものがあるでしょー!?」
「知るか!!」
二人で騒いでいると。
体育館の入口から、ひょこっと顔が出た。
「……お二人さん?」
花巻だった。
その後ろには松川もいる。
「今、なんか聞こえたんだけどー?」
「……何も聞こえてねえよ」
岩泉が即答する。
花巻はニヤニヤ。
「へえー? 『好きなのも』って聞こえた気がするけど?」
「…………」
「……及川?」
松川が及川を見る。
及川は真っ赤になったまま、岩泉のジャージの裾をぎゅっとつかんでいた。
「…………」
「……あー」
松川が納得したように頷く。
「なるほどね」
「なるほどねー!!」
花巻が大声で叫ぶ。
「お前ら、付き合ってんの!?」
「声がでけえんだよ!!」
岩泉の怒鳴り声が体育館に響いた。
及川は岩泉の背中に隠れながら、小さく呟く。
「……岩ちゃん」
「……なんだよ」
「……手、つないで帰ろ?」
岩泉は一瞬だけ黙った。
それから。
「……外に出てからな」
及川の顔が、ぱあっと明るくなる。
「……うんっ!」
花巻と松川は顔を見合わせた。
「……松川」
「ん?」
「これ、もう隠す気ないだろ」
「……だな」
二人の声を背中で聞きながら、岩泉は及川と一緒に体育館を出た。
校舎の陰。
誰もいないことを確認してから、岩泉が手を差し出す。
及川はその手を、ぎゅっと握った。
「……岩ちゃん、大好き」
「……おう」
「……岩ちゃんは?」
「……好きだよ」
「……えへへ♡」
夕暮れの帰り道。
二人の手は、家に着くまでずっとつながれたままだった。
桜空

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コメント
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みぅです🤍🥀 第4話、もう甘すぎてやばかった……! 岩ちゃん、及川さんにだけ明らかに甘いの、花巻と松川にバレバレなの笑ったw 「お前にだけだよ」の耳元ボソッ……あそこ、心臓止まるかと思った。不意打ちすぎるし、及川さんの「ずるい」って気持ち、めっちゃわかるよ……! 最後、手つないで帰るの尊すぎてにやけた。しゅぴさん、ありがとうございます🌙