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【あらすじ・1話】
ルージュ魔法学園に通う中学2年生・望月くら
げは、無自覚ながら学園最強と呼ばれる魔法の天才。
ある日、姉妹校であるマリア魔法学園から、同じく最強と称される中学3年生・星影海星が転入してくる。
初めて会った瞬間、互いにただ者ではないと直感する二人。
最初は軽い火花が散るような関係だが、ある出来事をきっかけに少しずつ距離が縮まっていく――。
【1話・本文】
ルージュ魔法学園の中庭は、今日も魔力の光に包まれていた。
春の風が舞い、桜色の花びらがきらめく中、望月くらげは木陰で魔法の本を読んでいた。
「ねぇ、聞いた? 今日から転校生が来るんだって」
同級生たちがざわつく声が耳に入る。
くらげはページをめくりながら、なんとなくその話題を聞き流した。転校生なんて珍しくもない――そう思っていたのに。
「彼、マリア魔法学園最強なんだって!」
その言葉に、くらげの手がぴたりと止まった。
やがて、校長先生に連れられてやってきたのは、群青色の髪と透き通るような青い瞳を持つ少年。
制服の上着を少し乱して着こなし、鋭い視線が一瞬で周囲を静まり返らせる。
「星影海星です。よろしく」
短く名乗る声は落ち着いているのに、どこか挑発的だ。
その瞬間、海星の視線がくらげを捉えた。
――強い。
お互いにそう感じた。言葉はなくても、魔力の波が一瞬でぶつかり合う。
授業後、偶然同じ訓練場に居合わせた二人。
「君が、ルージュの“最強”?」
海星が微かに口元を上げる。
「うん。……たぶん?」
天然な返事に、彼は一瞬ぽかんとしたが、すぐに笑みをこぼした。
魔法を交わすうち、二人の距離はほんの少し近づく。
この出会いが、学園の運命を揺るがす始まりになるとは、まだ誰も知らなかった。