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猫喰い。
——初めて聞く単語にキョトンとする私に、トメさんが解説をしてくれました。
何でも猫喰いとはその名の通り、猫を主食とする怪異なんだとか。
それも狙うのは普通の猫だけでなく、私達のような特殊な猫を食べることを無上の喜びとしているとのこと。
まさかそんなとんでもない存在がいるなんて——いやはや、恐ろしい話です。
〝猫喰い……一体、どんな姿をしてるんですか?〟
幽霊猫のマリーさんが、みんなの頭に直接語りかけます。
「さあてねえ。噂によれば、自由に姿を変えられるみたいだけども」
首を横に振りながらそう言うトメさんに、元・人間のケンタさんが、
「それじゃあ対処しようがないですねー……」
と、のんびりした口調で言いました。
いまいち緊張感と知性が感じられませんが、もしかしたら普通の猫に戻るタイミングが近いのかもしれません。
「私達みたいな猫が好物ってことは……こういう集会場が狙われる可能性もあるんじゃないですか?」
恐々と呟く私に、
「大丈夫っスよ!」
と、モノさんが笑いながら言いました。
「さっきトメさんも言ってたでしょ?この神社は結界で守られてるんス。猫以外は、決してこの空間に立ち入ることは——」
「にゃーお」
モノさんの言葉を、女性の声——猫の鳴き真似が遮りました。
そう、鳴き真似です。
必要以上に似せる気のない、記号的な物真似。
振り返ると、鳥居の前に何かが居ました。
大きさは私達と同じくらい。
四本足に、尖った耳。
形状は猫にそっくりです。
しかし——その姿はまるで挽肉をこねて猫を模ったかのようで、赤い体には目も鼻も口もヒゲもありません。
猫の形をした肉は、もう一度「にゃーお」と、私達を嘲笑うかのように鳴きました。
「……あんた、猫じゃないね。何者だい?」
トメさんが、鋭い口調で尋ねます。
すると肉塊は、
「私が誰かって?おいおい——今まさにちょうど、おまえ達が話をしてただろうが」
そう言うや否や、猫の形を維持することを放棄し、その体を急速に肥大化させ始めました。
ミチミチミチ……という不快な音が響きます。
「にしても、この程度の擬態で突破できるとは……ここの結界も大したことないなあ」
そう言い終わる頃には、それは完全に変形を終えていました。
鳥居と同じくらい大きい、蜘蛛の形状をした肉の塊、とでも言えばよいでしょうか。
蜘蛛の顔にあたる部分には、肉の中に大きな人間の顔面が埋没しています。
長い髪を地面まで垂らした、見た目は三十代ほどの女性の顔です。
「あんたが——猫喰い!?」
トメさんの問いかけに対し、その奇怪な生き物は、返事の代わりにニヤリと口の端を歪めました。
「そこの二匹が、仲良くパタパタ空を飛んでるのを見つけてねえ。他にも仲間が居るかもと思って、後をつけて正解だったよ」
そう言うなり、猫喰いの体のあちこちから、無数の肉の触手が伸びました。
触手はものすごい素早さで、私を含めた、その場にいた猫達を襲い始めました。
私達は慌てて境内を逃げ回りましたが、あっという間に一匹、また一匹と捕まっていき。
一分もせずに全員が触手に絡め取られ、宙に持ち上げられてしまいました。
いや、正確に言えば緑の猫さんだけは、いつの間にか忽然と姿を消していたのですが——それはともかく。
〝う、動けない……!〟
マリーさんが、透けた体を苦しそうにばたつかせます。
「残念だったねえ。私の触手は、猫であればたとえ実体が無かろうと捕らえることができるんだよ」
なるほど。
確かに私も、さっきから何度も透明化を試みているのですが、ちっとも触手から逃げられません。
これは困ったことになりました。
「くそっ——やめるっス!とっとと放さないと、後悔するっスよ!?」
モノさんが必死に猫喰いを威嚇しますが——それがいけませんでした。
「へええ?やってみなよ、おちびちゃん」
猫喰いは残忍な笑顔を見せると、モノさんをポイッと、大きく開けた口の中へと放り込んでしまったのです。
「うわーーーーーーーーーーーっ!?」
「モノさーーーーーーーーーーん!!」
モノさんの悲鳴と私の慟哭が重なり、境内に木霊しました。
リユ
232
#怪異
耐え内
233
#怪異
阿炎快空
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阿炎快空
82
コメント
1件
うわ、第4話で一気にシリアスに突入したな…! 猫喰いのビジュアルがまずヤバい。挽肉で猫を模ったような姿→蜘蛛+人間の顔面って、想像しただけで背筋冷えるわ。結界突破してからの展開が早くて、モノさんがポイッと食べられたシーンはマジで声出た。あと緑の猫さんだけ忽然と消えたの、絶対伏線よね? どうなるんだこれ…続きが気になりすぎる🔥