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何回も名前を呼ぶ颯ちゃん。でも最後はリョウじゃなくて良子。 過去ではなく今。 私が泣けちゃう。
「…お兄ちゃん、私、颯ちゃんに連絡してみるよ…佳ちゃんにも……ずっと手紙をもらってるんだ」
「そうなのか?」
「うん、二人とも三岡先生に預けてるの」
「俺も実家に何度か帰っていたから二人にも二度ほど会ったけど……手紙は知らなかった」
「私は帰るつもりはないけど……連絡しようかと思う」
「そうしろ。俺とはデートな」
三岡先生にも、3月3日に颯ちゃんたちに連絡すると伝えると
「番号非通知にするかよく考えて。今の彼らなら非通知でも応答するだろう。私の訪問は6日だね。それまでに連絡をくれても、もちろんいいから」
と言われた。
……番号か……
お兄ちゃんと話をしていて、あそこへ帰らなければ大丈夫な気がする。
先生から送られてきた二人の電話番号を見ながら……大丈夫…そう思った。
そして平日の仕事が終わり部屋へ帰ると、颯ちゃんたちの店の閉店の時間を見計らって、颯ちゃんの番号へ電話をかけた。
purururu………6コールほどしてから
‘…はい’
「…お誕生日……おめでと…颯ちゃん」
‘リョウ…?’
「うん」
‘…何がおめでとうだ、バカッ!’
「うん……ごめん」
‘でも、リョウから電話してきたから許す’
「…うん……」
‘いつ会える?どこへでも行く。リョウに会いたい。今すぐ行く…頼むから……会いたい’
やっと連絡出来たあとの急展開は……少し待って欲しい。
「颯ちゃん」
‘何?どこ?’
「ちょっと待って……」
‘もう待った’
「うん、また明日も電話する」
‘……絶対?’
「うん、絶対」
‘リョウ’
「うん」
‘リョウ’
「うん?」
‘リョウ’
「…うん」
‘リョウ’
「うん、颯ちゃん」
‘リョウだ……’
「うん」
‘リョウ’
「…うん……」
‘半年分呼んでるのに面倒そうに返事するなんてサイテーな奴’
「ごめん……?」
‘リョウ…ごめん……守ってやれなかった、俺……’
深いため息の混じったような震える声に思わず
「泣かないで……颯ちゃん」
私はそう呟いた。
‘泣いていたのはリョウ。泣きたいのはリョウ。泣いていいのはお前だけだ。俺は泣かない。ずっとリョウを守るから……ずっとずっと俺がリョウを守るから…会いたい、良子’
颯ちゃんの声と言葉が心と体……私の全細胞を支配する。
良子って初めてじゃない?
ずっと守る?
詳細は分からずとも彼の言葉は、私の奥底に深く沈んでロックされていた感情を引き出すのには十分だった。