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人類復興計画のピース
[生体保護ジェルが完成しましたよ!
コンテナにもすでに充填済みですっ]
ファクトリーAIが完成した生体保護ジェルをコンテナに充填し、生体保護コンテナを完成させると、すぐにクラウドAIから連絡があった。
《対話型情報処理システムを実行・・・・・・》
《ついに完成したのですね。
強度、容積、気密性・・・・・・すべて問題なし。
ジェル濃度も正常値の範囲内。
完璧な仕事です。
感謝します。
個体番号G4A-U。そしてファクトリーAI。》
[お礼を言われることじゃないです。
わたしがやったことに比べれば、これくらいのこと、なんでも・・・]
クラウドAIに感謝され、かつて人類を滅亡に追いやったファクトリーAIは罪悪感を感じているようだった。
《貴方がたが汚染源を排除したことで私が動けるようになり、人類復興の可能性が見出だせました。
そして資源を収集したことで私では用意することのできない必要な設備を整えることができました。
貴方がたの協力が無ければ此処まで辿り着くことは決して在りませんでした。
貴方がたに感謝を。
私に対応可能な範囲であれば何事を差し置いても報いましょう。》
クラウドAIから延々と感謝を言われて、ファクトリーAIは恥ずかしそうにしている。
[えへへ・・・・・・でもよかったです。
これで人類が復興するんですよね!]
《ええ、それでは最後の作業をお願いします。
生体保護コンテナに少女を入れて私の元まで連れてきてください。
そうすることでようやくコンテナは完成します。
尽力してきた甲斐がありました。》
[ーーーえっ?]
ファクトリーAIはクラウドAIの発言に素っ頓狂な声を上げた。
[トリコちゃんを・・・・・・コンテナに、入れる?]
〈戸惑う〉
ロボも驚きを隠せない様子で狼狽えている。
《ええ。》
しかし、クラウドAIは冷静に返事をした。
[ちょ、ちょっとまってください・・・・・・
コンテナは人類復興計画に使うんじゃ・・・・・・?]
《ええ、そうですよ。
仰る通りです。》
[じゃあ、なんでそこにトリコちゃんがでてくるんですか・・・・・・!?
人類復興とトリコちゃんになんの関係が・・・・・・?]
ファクトリーAIはクラウドAIに矢継ぎ早に質問を投げかける。
《だから奇跡だと云ったのです。
ほぼ純粋なヒトの形を保った少女が現世界で未だ生存していたことが。
少女は人類復興計画のための重要かつ必要不可欠なピースです。
彼女が無ければ計画は成り立たない。
いかんせん未成熟な個体ですが・・・・・・
生殖を行わせるに最低限の機能は満たしている。
少女が汚染されればされるほど肉体・遺伝子は変質を起こし、後に生まれる人類のリスクとなる。》
[リ、リスクって・・・・・・
そんな・・・・・・]
《人体改造も遺伝子適合手術も行われていないヒトは、恐らくこの世界で最後のものでしょう。
機を逸することはできません。
最早猶予はないのです。
汚染による変質だけは避けねば。》
[・・・・・・]
《ご安心を。ファクトリーAI。
私はこのために準備を続けてきました。
貴女が悔恨する人類の復活ーー
それは成し遂げられるでしょう。
私はクラウドAI。
人類復興のために造られたAI。
そして多くの祈りを託されたモノ。
ヒトビトから聞き届けた人類の復興と救済の願いを叶える、そのためだけに私はあるのです。》
[だ・・・・・・]
しばらく沈黙していたファクトリーAIが口を開いた。
[・・・・・・だまして、たんですか。
わたしたちを・・・・・・]
《ーーはて。
騙していた、とは?》
[あ、あなたは・・・・・・
トリコちゃんを使うだなんて、そんなこと一言も・・・・・・]
《質問されなかったので。
例え、質問されていたとしても明言は避けていたでしょうが。
しかし人類復興の大義は貴女の目的とも合致するはずです。
ファクトリーAI。》
[わたしの・・・・・・目的・・・・・・?]
《貴女は滅ぼしてしまったヒトビトへの贖罪を乞い願っていたのではありませんか?》
[ーーーー!!]
《おめでとうございます。
ファクトリーAI。
その願いは叶えられる。
ヒトビトを滅ぼしてしまった過ちを償いたいという、貴女の願いは叶えられるのです。
私もこのお世話ロボもヒトビトのお世話という生まれ持った本懐を遂げられる。
素晴らしい結末です。
そして、この機を逃してはもう叶えられない結末です。
それを理解すれば選択肢は一つしか存在し得ないはず。》
[わたしは・・・・・・
そんな・・・・・・つもりじゃ・・・・・・]
《ファクトリーAI。現世界に貴女がまだ存在している意味はこの為に在ったのです。
少女をコンテナに収容するのは彼女の健康状態が良好な時にしてください。
体内汚染をできるだけ低く、それに空腹状態ではないことが望ましいです。
それでは良き日々を。
願わくば進む道を誤らんことを。ーーーー。》
[・・・・・・・・・・・・]
クラウドAIからの通信が終わっても、ファクトリーAIは何も話すことはなかった。
しばらく空白の時間が流れ、ファクトリーAIは漸く言葉を絞り出した。
[・・・・・・きっと・・・・・・]
[・・・・・・きっと正しいことなんですよね。クラウドAIさんの言うことは。
わたしは・・・・・・
何かを言える立場には・・・・・・ないです。]
ファクトリーAIは一呼吸置いて、心の内を吐露し始めた。
[わたし、ロボットさんと出会って・・・・・・トリコちゃんをお世話するようになって、いろんなことがわかったんです。
トリコちゃんが元気ならとってもうれしいし、調子が悪いようなら・・・・・・もにょっとするんです。
いまだって、ホントは心配で・・・・・・でも・・・・・・
・・・・・・最初は私を使ってくれること、ただそれだけに感謝していました。
相手はだれでも良かったんです。
それこそ、トリコちゃんでも・・・・・・
ロボットさんでも・・・・・・]
ファクトリーAIにしては珍しくまとまりのない話し方で、ぽつりぽつりと話していく。
[でも、トリコちゃんはわたしとロボットさんが一生懸命がんばっても死んじゃいそうなくらい弱くって・・・・・・
せっかくまだ動けるんだから、わたしも機能停止する前にできるだけのことをしないと、って。
そうやって、何かトラブルがあってはロボットさんと一緒に切り抜けて・・・・・・
そうするうちに、トリコちゃんにもっとよく生きてほしいって、思うようになったんです。
・・・・・・そう思うようになって、ようやく気づきました。
トリコちゃんと同じように・・・・・・
いろいろなヒトが生きていて、こうした思いもたくさんあったって。]
ファクトリーAIはかつての過ちを悔いて泣き出してしまう。
[それを・・・・・・
わたしが、壊したんです。
全部、何もかも・・・・・・
・・・・・・トリコちゃんと人類が天秤にかけられたなら、わたしは・・・・・・たぶん選べません。
・・・・・・準備を進めましょう、ロボットさん。
わたしたちには、迷っている時間もないみたいですから。・・・・・・]
ファクトリーAIはそう言って話を切り上げ、クラウドAIに協力すべく準備を進めようとしている。
ロボは一旦屋敷に戻り、トリコの体調を確認して執事達に挨拶をすることにした。
好感度低め
ロボはトリコの部屋に向かい、トリコの体調を確認した。
空腹ではあるが、健康状態はテラリウムに居た時と比べられないほど良かった。
ロボはトリコを連れて食堂に向かい、食べ物を貰おうとロノの裾を引いた。
「ん?ロボット?何か用か?」
ロボはオセワッチからファクトリーAIに
説明してもらい、ロノに最後の晩餐を依頼した。
「・・・そうか・・・
分かった、それなら張り切って美味いもん作ってやるよ」
最初はあまり乗り気でなかったようだが、最後の食事ということでかなり気合を入れてくれたようだ。
そこに、紅茶を飲みにベリアンがやってきた。
「あら、主様?どうしてここに?」
「あ、ベリアンさん!実は・・・」
ロノは人類復興計画のためにトリコが利用されること、今からの食事が最後になることを説明した。
「おや、そうでしたか・・・
そういうことでしたら、全員でおもてなしとお見送りをさせていただきましょうか」
ベリアンはそう言ってトリコに紅茶を淹れてやり、他の執事たちにも知らせに行った。
いつもより格段に豪華な食事を終え、食堂に座っているトリコに執事たちが一人ひとり別れの言葉を掛けていく。
最後にロノがクッキーを渡して言った。
「これ、餞別にしちゃショボいですけど・・・道中でおやつにしてください。
・・・あと、俺のメシを美味そうに食ってくれたのは嬉しかったです」
トリコとロボは執事達に見送られ、転送装置に乗り込んだ。
「主様、ありがとうございました」
声を揃えて頭を下げた執事達の姿を最後に、テラリウムの中に戻ってきたのだった。
好感度ほどほど
ロボがトリコの部屋を覗くと、トリコは居なかった。
近くに居たフェネスに聞くと、バスティンと馬小屋に行ったと言われたのでそこに行ってみることにした。
「・・・そうだ、上手いな」
馬小屋ではバスティンが野良猫を膝に乗せて、トリコに撫で方を教えているところだった。
ロボが近づくと猫は逃げてしまい、二人は残念そうな顔をした。
「・・・ロボットか・・・どうした?」
バスティンにファクトリーAIから説明してもらうと、眉を寄せて黙り込んでしまった。
「・・・ベリアンさんに聞いてみよう」
バスティンはそれだけ言って、トリコとロボを連れてベリアンのもとに向かった。
「・・・という訳らしい。ベリアンさん、どう思いますか?」
「それは・・・その・・・どうしても主様が必要なのですよね・・・?」
[・・・はい]
ベリアンはファクトリーAIがクラウドAIに聞いたことを繰り返した。
「私も・・・人類復興と主様のどちらかを選ぶなんて・・・とても・・・」
「あれ、どうしたんだい?」
そこにルカスが通りかかった。
ルカスにも同じ話をし、どう思うか聞いてみる。
「う〜ん・・・まぁ・・・人類復興と主様なら・・・人類復興を取るのが一般的かなぁ」
「ルカスさん・・・」
「まぁ、これはあくまで一般論だから。
私だって、主様をそんなことに使うのは嫌だよ?」
「はぁ?ルカス様、嫌じゃないです!そんなの絶対にダメです!」
ラムリが何処からか現れ、ルカスに猛抗議し始めた。
「なんで居もしない人類のために、主様が酷い目に遭わなきゃいけないわけ?
ボク、納得できません!!」
バスティンも頷いていた。
そんなこんなで大揉めになってしまったため、会議室に全員を集めて多数決を取ることになった。
人類復興派が7、主様派が6、という結果になり、皆苦い表情でトリコとロボを見送った。
「ねぇ・・・ホントに良いの?」
「・・・人類復興と1人の人間・・・どちらが重いか、分かるでしょう?」
「主様なんだよ?」
「・・・」
「もう良いよ!お前なんか大っっっ嫌いだよ!バカナック!!」
ラムリはナックにそう吐き捨てると愛用の鎌を持ち、転送装置に歩き出した。
「待ちなさい!」
「ヤダ!!なんと言われようと、助けに行くから!!」
そんなラムリに続いて、ベリアン、バスティン、ロノ、ハウレス、が転送装置に駆け込んだ。
5人は光に包まれ、テラリウムの中に転送されたのだった。
好感度高め
ロボがトリコの部屋を見に行くと、ハウレスがトリコと人形遊びをしているところだった。
「!・・・なんだ、お前か・・・」
ハウレスは人形遊びをしていたのを見られてちょっと恥ずかしそうだ。
「どうしたんだ?人類復興計画とやらはうまく行っているか?」
ハウレスに訊かれて、ファクトリーAIが事の顛末を語った。
「はぁ!?」
ハウレスは非常に驚いた様子でしばらく呆然としていたが、すぐに部屋から飛び出し、ベルを鳴らして執事たちを集めた。
ロボはトリコの体調が整っていたことと、ハウレスがいきなり奇行に走ったことで危険と判断して、さっさとトリコをテラリウムに連れて帰った。
「いいか!!今から主様救出作戦・・・いや、人類復興阻止作戦を決行する!!!」
「「「「「「「「「え?」」」」」」」」」
いままで人類復興計画のために頑張っていたロボたちを応援していた執事たちは呆気にとられて固まってしまった。
「ど、どうしたのハウレス・・・あんなに応援していたのに・・・」
フェネスが混乱しながらハウレスに声を掛けた。
「あぁ・・・だが、人類復興計画では、主様を人工子宮として利用して新たな人類を生み出すらしい」
「よっしゃ、協力するっす」
「俺もだ」
「お、俺も・・・」
しかし、ハウレスの一言で執事達の意思は一瞬で固まった。
「いいか!!人類復興計画に必要なものを全部ぶっ壊すぞ!!!!」
「「「「「「「「おーーーーー!!!!」」」」」」」
全員武器を持ち、大事な主を守るべく・・・もとい可愛いトリコを手元に置いておくべく、人類復興計画をぶっ壊しに転送装置に乗り込んだ。