スマホの画面に浮かぶ言葉を、わたしは食い入るように見つめた。
――「彼を取り戻したいなら、やるべきことがある。」
鼓動がうるさくて、指が震える。
“方法”ってなに? どうすれば……。
返信を打つより早く、次のメッセージが届いた。
――「彼を監視しなさい。全部を知るの。行き先、隣にいる女、スマホの中身。
そうすれば、彼は君から逃げられなくなる。」
喉の奥が熱くなった。
まるで、わたしが心の底で望んでいたことを言い当てられたみたいだった。
“彼を監視する”――そんなこと、本当はずっと考えていた。
――「証拠が欲しいなら、このアプリを入れて。 彼の位置情報も、通話履歴も、全部わかるようになるから。」
添付されたURLが、画面に浮かぶ。
怪しいリンク。押してはいけない。
頭のどこかでは分かっているのに、指は止まらなかった。
「……これで、彼を取り戻せるなら……」
わたしは震える指でリンクをタップした。
画面に現れたのは、見慣れないアイコン。ハートに黒いヒビが入ったマーク。
インストールが完了するまでの数秒間、心臓は早鐘を打ち続けた。
やがて、スマホに小さく通知が出る。
――「ようこそ、らゔ中毒へ。」
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