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ブクマ失礼します🙇🏻♀️՞
翌朝。教室のドアを開けた瞬間、康二は違和感を覚えた。
空気が重い。
昨日までと何も変わらないはずなのに、何かが違う。
目黒の席を見た瞬間、胸の奥がぎゅっと痛んだ。
目黒は机に肘をつき、顔を伏せたまま微動だにしない。
周りの生徒は、まるでそこに“何か汚れたもの”があるかのように、
見て見ぬふりをして通り過ぎていく。
康二はゆっくり近づいた。
「おい、目黒」
返事はない。
その肩に手を置くと、びくっと小さく震えた。
その一瞬で、康二は悟った。
——何か、あったんや。
袖口から覗いた手首には、消えかけた黒いインクの跡。
机の隅には、昨日より深く刻まれた落書き。
「……誰にやられたん」
声が低くなる。
けれど目黒は、首を振るだけだった。
「別に、いいよ。もう慣れてるから」
その言葉に、康二の心が一瞬で冷えた。
“慣れてる”——その一言が、何よりも残酷に聞こえた。
「慣れんなや、そんなもん!」
思わず声を荒げた自分に驚きながらも、
康二は拳を握りしめた。
「俺が、そんなこと言わせるようにしたんか」
目黒は小さく首を振って、微笑んだ。
「違うよ。康二くんがいるから、大丈夫なんだ」
——その笑顔が、痛かった。
——まるで壊れそうなガラスみたいに。
康二は立ち上がり、机の上の落書きを袖で乱暴に拭った。
文字は消えない。
どれだけ擦っても、黒い跡が残る。
「もうええ。俺が全部守ったる」
その言葉は、誓いというより呪いに近かった。
誰も触れさせない。
誰も見させない。
目黒を傷つける世界ごと、全部閉じ込めてやりたいと思った。
目黒はそんな康二の目を見て、
どこか安心したように微笑んだ。
——そのとき、ふたりの心のどこかが、静かに壊れた。
テスト期間なので更新遅くなります💦