コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
リクエストありがとうございます!
今回はトラウマで過呼吸を起こしてしまったというリクエストです!
ライブリハーサルが終わった夜。機材トラブルでバンド音源が急に大音量で流れ出したその瞬間だった。
仁人の身体がビクリと跳ね、呼吸が乱れ出す。
「……っ、あ……」
壁に背中を押し付けるように後ずさりながら、肩が細かく震える。 酸素を取り込もうと必死に口を開けるが、逆に呼吸がうまくできない。
「じんと!? ……仁人、っ仁人!!」
太智が真っ先に駆け寄った。仁人の顔色が見る間に青白くなっていく。
「だいじょぶ……俺、だいじょぶ……」
かすれる声。だが、仁人の手は明らかに震えていた。
太智はそっとその手を握った。
何も言わず、ただしゃがんで目線を合わせ、ゆっくりと呼吸を合わせる。
「いっしょに、吸うで。……せーの、すー……はー……」
仁人の乱れた呼吸に合わせるように、何度も何度も声をかけながら繰り返す。 そのうち、少しずつ仁人の肩の震えが和らいでいく。
「……太智……俺……」
「無理せんでええ。しんどかったな。怖かったんやろ?」
仁人はこくりと小さく頷いた。
少しして落ち着いた頃、自分でも驚くほど静かな声で口を開いた。
「……中学の時、ステージで同じように音が急に鳴って、動けなくなったことがあって……その時のみんなのあの顔が忘れられなくて……」
「……そっか……めっちゃ怖かったよな」
太智は、ぎゅっと仁人の手を握った。
「けど、今はちゃう。俺ら、みんなお前の味方やで。どんな仁人でも、ここにおってええんやから」
仁人の目に、にじむ涙が一滴落ちた。
「……ありがとう。太智がいてくれて、ほんまによかった」