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私は今、とても幸せだ。

だって最愛の夫と共に穏やかな日々を過ごしているから。


私たちは一年前に結婚し、都心から少し離れた場所にあるアパートを購入した。部屋の広さも景色も申し分なく、ここで新しい生活が始まった。

子供はまだいないけど、

「子供は自然にできればいいよね」

と話しながら、

「じゃあ、そろそろ病院に行ってみる?」

なんて相談することもある。30才を少し過ぎた私たちにとって、子供の話題は避けて通れないものだと思う。

それでも、今は二人だけの時間も悪くないよね、と笑い合える。こういったセンシティブな話題も気兼ねなくできるのが、私たち夫婦の良さだと思う。


私たちは2年前に出会った。

謙太けんたは友人の紹介で知り合った……いわゆる合コン……人で、当初は特別な印象を持たなかった。どちらかと言えば、少しお堅いイメージの公務員。

その一方で、彼の穏やかな声と落ち着いた話し方に安心感を覚えたのを覚えている。そんな彼と、気づけば一年で結婚していた。


こんなにとんとん拍子で大丈夫かな? そんな不安がなかったわけではない。それでも、謙太の真っ直ぐな優しさや誠実な態度に触れるたび、その不安はいつの間にか霧散していた。


「僕はイケメンじゃないよ」

と笑う彼の言葉が耳に残る。

確かに飛び抜けて格好良いわけではない。けれど、その素朴さが私には心地良かった。むしろ、飾らないその姿が私の癒しとなっている。


彼はどんな時も私を笑顔にしてくれる。だから私は今、本当に幸せだ。


私たちは共働きで、それぞれに仕事を持っている。

謙太は公務員、私はデザイン会社に勤めている。デスクワークが中心の彼と、クリエイティブな作業を求められる私。職種こそ違えど、互いの仕事に理解を示し合える関係性が心地良い。


私たちの朝は、ベランダでのコーヒータイムから始まる。

高層階の我が家から眺める景色は格別で、都会の喧騒を少し遠くに感じさせてくれる。謙太がハンドドリップで淹れてくれるコーヒーは香り高く、朝の眠気を心地よく覚ましてくれる。


雨の日も、ベランダには屋根があるから問題ない。むしろ雨音が心を落ち着かせてくれる気がする。流石に大雨の時は無理だけど。もう少ししたら新調しても良いかなーと大雨にも耐えれるものにしようとしてる謙太にそんなことに無駄遣いしちゃダメよ、と言うと

「わかってるよ」

と笑ってた。


この家に住めているのも、謙太の親の協力があったからだ。

彼の叔父がマンションを経営していて、購入費用の半分を謙太の父が負担してくれた。一括で支払ってもらい、私たちはその半額を少しずつ返している。ローンを組む必要がなかったのは本当にありがたいことだった。


梨花りかちゃん、今月分今日持っていくよ。実家にも寄りたいし」

「うん、いいよ。今日は早上がりなんだっけ? ゆっくりしてきて」

「ありがとう。梨花ちゃんもゆっくりしてください」

「私がいるとゆっくりできない?」

「何を言う。でもこういうことも大事だよね」

「そうよね」


他愛のない会話を交わしながら飲むコーヒーは、あっという間になくなるはずなのに、いつも最後にはぬるくなってしまう。それでも、このひとときが幸福そのもので、冷めたコーヒーの苦味さえ気にならない。


子供ができたら、この時間はどう変わるのだろう?

子育て中の友人たちは、口を揃えて

「余裕がなくなるよー」

と言う。それでも、私は謙太に似た優しい笑顔を持つ子供が欲しいと思う。


「子供が欲しいね」

そう言った謙太の笑顔が今でも忘れられない。


私たちの夫婦生活は穏やかだ。セックスの頻度は多くないけれど、互いの体調や気分を大切にしている。私は正直、性行為が好きではないけれど、謙太の気遣いがあるから苦痛には感じない。


「大丈夫?」

と優しく声をかけながら抱いてくれる謙太。そんな彼だからこそ、私は心から安心して身を委ねられるのだ。


子供のことは自然に任せるつもりだ。私の職場は産前産後のサポートが充実しているし、謙太の親も近くに住んでいる。協力を頼れる環境が整っていることが心強い。

早く孫を、なんてプレッシャーをかけられることもないのは、謙太の兄弟たちにすでに子供がいるからだろう。

不妊治療を経験した義姉もいて、私たちのペースを尊重してくれる。


リビングに戻り、テレビをつけると、タイムループをテーマにしたドラマの予告が流れていた。

主人公が事故に遭い、人生をやり直す話らしい。タイトルはよく覚えていない。今時の横文字のタイトルだった気がする。


「あなたはやり直したい過去はありますか?」

ナレーションの声が私に問いかけてくるようだった。


やり直したい過去……私にもあるのだろうか?


「梨花、ぼーっとしてないで準備しないと間に合わないよ!」

謙太の声にハッと我に返る。時計を見ると、出発まであと15分しかない。


「うん!」

慌ててテレビを消し、コップを片付ける間もなく準備を始めた。


今、私は幸せだ。

謙太に会ってからの時間に、やり直したいことなんて何もない。

今は──そう、今は……。

あなたはそうやっていつも微笑んでいた〜タイムループで夫がクズ認定された件〜

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