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「よし、これで完璧だ。この写真をアップして、俺が箱根で仕事をしていた証拠にしろ」
直樹が差し出してきたのは、彼が箱根で撮ってきた風景写真。
不自然に莉奈を切り取った跡があるそれを、私は指示通り、新しく作ったSNSアカウントに投稿した。
「……投稿したわ、直樹」
「ハハッ!さすが俺の妻だ。これで経理も黙る。お前もようやく役に立ったな」
直樹は満足げに鼻歌を歌いながら、リビングを出て行った。
私は投稿したばかりの画面を見つめ、静かに口角を上げる。
私は、ただ写真を上げたわけじゃない。
ハッシュタグに、あえて莉奈が普段使っている
「独特な絵文字」と
彼女の裏アカウントが好んで使う「特定のキーワード」を忍ばせておいたのだ。
狙い通り、数時間後。
私のスマホに、一件のダイレクトメッセージが届く。
『突然すみません。その写真、私も同じ日に同じ場所で撮ったんですけど……もしかして、直樹さんの奥様ですか?』
送り主のアイコンは、莉奈。
彼女は自分の存在を隠しきれず
あるいは「自分の方が直樹に近い」と誇示せずにはいられなかったのだろう。
愚かな女だ。
「……来たわね」
私は震える指で返信を打つ。
『はい、そうです。主人の仕事に同行しておりました。……あなたは、主人の会社の方ですか?』
すぐに既読がついた。莉奈からの返信は、マウントの塊だった。
『はい、部下の莉奈です。直樹さん、あの日は「会議」だって仰ってましたけど、本当は奥様とご旅行だったんですね』
『……でも、おかしいですね。私、その旅館で直樹さんが一人でチェックアウトされるのを見ましたよ?』
莉奈は、私が直樹の「嘘」に加担していることを見抜き、私を揺さぶろうとしている。
自分が不倫相手だという正体を隠しながら、私を「嘘つきの共犯者」として格下に置こうとしているのだ。
私は、わざと怯えたフリをして返した。
『……お願いです。主人には言わないでください。仕事が大変そうで、私が無理を言って付いていったんです…もし、会社にバレたら主人が……』
『そうですよね。分かりました。誰にも漏らしません。でも、その代わりに一度お会いしませんか?直樹さんの奥様がどんな方か、興味があって』
罠にかかった。
莉奈は、私を直接呼び出して「正妻」としてのプライドを粉々にし
直樹を自分のものだと見せつけるつもりだろう。
私はスマホを握りしめ、冷たい笑みを浮かべた。
会いたかったのは、こちらの方よ、莉奈さん。
直樹に「共犯」を強要された証拠。
そして、あなたが自ら「直樹と箱根にいた」と自白する瞬間。
すべての役者が揃った。
夜、帰宅した直樹は
私が莉奈と連絡を取り合っているとも知らず、上機嫌で私のおかずを奪って食べている。
「おい詩織、今日の飯は少しマシだな。褒美に、明日1,000円追加で渡してやるよ」
「……ありがとう、直樹。嬉しいわ」
私は感謝の言葉と共に、心の中で数字を書き換える。
1,000円のご褒美。
それと引き換えに、あなたが失うものは───
数千万円の退職金と、築き上げてきた人生のすべて。
【残り92日】
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