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第20話「代償の揺らぎ」


 夜の病室。

 規則的な心電図モニターの音と、時折聞こえるナースステーションの気配だけが、静まり返った空間に漂っていた。


 布団に潜り込んだ俺は、頭の奥から鈍い痛みが広がるのを感じていた。

 ――昨日透析を飛ばした影響が、確実に出てきている。


 足のむくみは朝よりひどくなっていて、まるで自分の足じゃないみたいにパンパンだ。胸も重苦しくて、息をするたびに胸骨の裏を誰かが押しつぶしているようだった。

 「……はぁ、っ……」

 小さな呼吸音が自分でも情けないくらい苦しい。


 ベッド越しに見る翔ちゃんは、透析を終えて少し落ち着いたように眠っている。



—透析、譲ってよかったぁ



 そう思ったのも束の間、深夜、とうとう吐き気に襲われた。

 「っ……うぅ……」

 洗面器に吐き出したのは、胃の奥からせり上がる苦い液体。その中に赤い筋が混ざっているのを見て、背筋が凍る。

 ――吐血。


 ベッド脇で物音を聞きつけた翔ちゃんが、すぐに飛び起きた。

 「かもめん!? おい、どないしたんや!」

 「だ……だいじょぶ……ちょっと……気持ち悪いだけ……」

 苦笑いを浮かべようとするが、唇の端から血が滲んでいるのがバレバレだった。


 翔ちゃんは顔を真っ赤にして叫んだ。

 「どこが大丈夫やねん!! 血ぃ吐いとるやないか! アホか!!」

 俺は弱々しく手を振った。

 「しーっ……看護師さんにバレちゃうでしょ……俺は平気だから……」

 「平気やないっちゅうねん!!」

 翔ちゃんの声が震えているのが、余計に胸に刺さった。




 俺が透析を譲ったことを翔はずっと責めていたけど、それでも今日一日を過ごす姿を見て、翔ちゃんが少し元気を取り戻したのは事実だった。だから後悔はしていない。


 けれど翔ちゃんは俺の胸ぐらを掴む勢いで睨みつけた。

 「なんでや……なんでそこまで無茶すんねん! お前が死んだら、誰が俺の横におんねん!」

 声が詰まり、最後は泣き声になっていた。


 俺は視線を逸らして、小さく呟いた。

 「……大好きだから。翔ちゃんに生きて欲しかった。それだけだよ」


 翔ちゃんの目から涙が一滴落ちて、俺の手の甲を濡らした。

 「アホか……そんな理由で、命削んなや……」




 呼吸が浅くなり、意識がふわりと遠のく。

 そのとき、翔ちゃんが俺の酸素マスクを掴んで顔に押し当ててくれた。

 「もう喋んな! ええから息せぇ! 頼むから……俺を置いて行かんといてくれ……」


 ___やっぱり、翔ちゃんは優しい 

  なあ。


震える翔ちゃんの声に、俺の瞼が熱くなる。

 ああ、本当は俺も置いていきたくなんかない。むしろ、翔ちゃんより先に消えることだけは絶対に嫌だった。


 酸素マスク越しに荒い呼吸を繰り返しながら、俺は涙に濡れた声で答えた。

 「……ごめん……でも……ありがとう」


 翔ちゃんは俺の手をぎゅっと握りしめたまま、必死にナースコールを押した。

 深夜の病室に鳴り響く電子音。

 その音が、俺たちの必死な叫びを代弁しているようだった。




ふぅぅぅぅ!!!!

神回ぃぃぃ!!!

体調不良小説とか病院パロ大好きな人、興奮しましたよね?ね?


そらちゃんのライブ楽しかったなぁ

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