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俺が阿部ちゃんを意識し始めていることが涼太にバレるまで、さして時間は掛からなかった。
無意識に阿部ちゃんを何となく目で追っていると、涼太の視線が俺に突き刺さってきた。
「なんだよ」
訊くと
「別に」
「……」
……幼なじみってやつはこれだからいただけない。
その後、涼太は康二に話し掛けられて、まったく関係のない、とりとめもない世間話を始めた。
俺はそわそわして、隠すことを諦め、康二がいなくなったタイミングでこちらからわざと話しかけてみた。
「あのさー」
「阿部の人柄なら俺が保証する」
「食い気味かよ。それにお前が保証すんなよ。阿部ちゃんのなんなんだよお前」
「………さて。なんだろう?」
俺の返しに、大袈裟に腕を組んで神妙な顔つきなまま、わざと重々しく首を傾げる涼太がおかしくて笑ってしまう。昔からこういう面白い奴なのに、最近はそれがやっとお茶の間に浸透してきてよかったな、なんて、無関係な感慨に耽りそうになってしまった。
「このこと、誰にも言うなよな」
「どのこと?」
「俺が…その…ちょっと…阿部ちゃんを気にしてること」
「翔太。俺が言うと思う?」
「……あと今後この話題も出さないでほしい」
「翔太。俺はからかったりしないよ」
「…まあ、そうだろうけど。念のため」
涼太とはこのやりとりだけで事足りる。
これできっと余計なことはしないはずだ。 そして、俺と阿部ちゃんの関係が変化しようがしまいが、そのどちらでも、この幼なじみは未来も寄り添ってくれるだろう。涼太への信頼感は自分で言うのもなんだけど、それほどに強いのだ。
「あーあ…」
ひとり言のつもりでぼやいた俺に、鋭く涼太の突っ込みが入る。
「翔太。なるようにしかならないよ」
「わかっとるわ、あほ」
「口悪…」
そう言うと、涼太は、お手上げだというようなおどけたポーズをして、さっさと楽屋を出て行ってしまった。
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