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赤い月に手を伸ばす。
でも、届かない。
「今日も憂鬱ね。」
私はため息混じりにつぶやくと手を静かに下ろす。
「お姉様…今日もここにいたのね。月がよく見えてお気に入りだものね。」
我が妹が私の横で月を見る。
「……最近吸血鬼ハンターが私達を狙っているみたい。警戒はしているけど、姿は表さないの。」
妹が月を見つめながら話しかけてくる。
吸血鬼ハンター……吸血鬼を狩るハンターのこと。
私は小さくコクリとうなずいた。
今日もこの世界に認めてもらえるように契約をする。
「吸血鬼ハンター……我が妹たちで相手できるの?話によると、襲われた吸血鬼たちは神隠しにあったみたいにいなくなったって。」
妹は顎に手を当ててすぐに答える。
「対策はねっているつもりだけど…私を合わせて4人で相手できるのかはわからない。」
我が妹は不安そうな顔をした。
「お嬢様?」
門番が姿を現す。
マントを羽織っていて、メイドとして働いてもらっている。
「今日も契約に行かれるのですか?……心配です。」
門番は不安そうに私を見た。
「そうね。私達は契約についていけないから…お姉様も十分に警戒して。」
私はコクリとうなずいた。
「……心を落ち着かせるために……どうぞ紅茶です。」
門番は笑顔で笑うと紅茶を持ってきてくれた。
ゴクリ…
美味しいけど…こんな日々が続くと素直に喜べない。
「……美味しい…」
「私は契約をしに行く。」
私は契約をしに移動した。
「お姉様は何らかの呪いで椅子から離れられないのよね。」
我が妹が私の背中を見ながら不安そうに言った。
門番も不安そうに私を見た。
数時間後……
「ただいま」
我が妹と門番が出迎えてくれた。
「お姉様、今日は私が紅茶を入れてみたの。どうぞ召し上がって。」
ゴクリ
「……美味しい……我が妹、ありがとう。」
妹にお礼を言う。
妹にはいつもお世話になっていた。私を励ましてくれる。
「お姉様、明日からは、私の部屋にこもって契約の手続きをしてほしいの。」
妹は笑って言う。
「相手が一味上だけどね。私や魔道士様でも相手にできないかもしれなないわ。」
妹が私の顔を見つめて言う。
「わかった。騒ぎが落ち着くまでの間、じっとしてる。」
この楽園はきっと…きっと私達を認めてくれる。
「久しぶりに魔道士のところへ行って見る。」
「いらっしゃい。久しぶり。」
「魔道士様……本を!もって…参りました…」
バトラーが重そうに本をもってくる。
「…妹からは話は聞いてるわ。いつでも吸血鬼ハンターを倒せるようにしている。」
魔道士が私の目を見て言う。その目はとても安心できる優しい目だ。
「門番に紅茶を持ってきてもらいましょう。久しぶりにお茶会をしましょう。バトラーは本を整理して。」
バトラーがコクリとうなずく。
「それで、本題に入る。吸血鬼ハンターにあなたが狙われている。十分に気をつけて。見た目は灰色の髪、緑の小さなリボン。」
灰色の髪、緑のリボン……何かを思い出す。そう……別の世界線ではその人は……」
「……」
我が妹が私を見つめてくる。
「吸血鬼ハンターからお姉様を守らなきゃ。最近話し相手がいないんでしょう?」
私はうなずいた。
「そういうわけだからお姉様はしばらく、私の部屋にこもっててほしいの。内側から鍵をかけて静かにしててね。その間に契約を済ませて。」
妹が真剣な眼差しを向ける。
私はコクンとうなずくと部屋へ案内された。
「お姉様はここで待っていて。」
最後に聞こえたのは……
「親衛隊行くぞ!」