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“それ”は気がついたら炎のなかに立っていた。

炎に舐められる感覚にただ絶叫している。


…あついあついあついあついあつい…!!!


叫んでいた口の中に炎が入り込み喉を焼かれ声が出なくなる。

余りの激痛に涙が出てくるが、すぐに蒸発して消えてなくなる。

やがて曖昧になっていく意識の中、”それ”は声にならない声でただ叫んだ。


たすけて


…どれだけそのままでいただろうか。

一瞬だったかもしれないし気の遠くなるほど長い時間だったかもしれない。

気がつくと、身体を舐る炎の感覚が消え温かい光りに包まれる。

全身を覆っていた見るも耐えないやけどがその光りに包まれて消えて行くのだが眼球も焼かれてしまったため、”それ”は痛みが段々と引いていく現状に混乱する。

やがて温かい光が眼球を包み視界が戻っていく。

まだひりつくまぶたを開けると、火花が飛び散り橙色にもえる空を背にフードで顔を隠した人物が静かに微笑みかけている。

その人物の手から温かい光が溢れ、”それ”の身体を癒していた。

まだ状況がわからない顔で口元以外フードで隠れた人物を見上げていると、その人物が口を開く。

その声は低く穏やかな男性のそれだとわかる。


「君は、だれだい?」


にこやかに尋ねてくるその場違いな質問に”それ”は答えようとして言葉に詰まる。

しばらく答えを探すように視線を彷徨わせて、また男の方を向きしわがれた声で答えた。


「……わからない」


そこで、”それ”の記憶は途切れている。

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