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私の名前は『マリア』
名前なんてものはただの記号にすぎないけど、それでも自分の名前を呼ばれるたびに少しだけ嬉しくなる。
この名前はお母さんから貰ったものだからだ。
お母さんはこの国ではとても有名な人で、この国の王族とも交流があるらしい。
だからと言って偉そうな態度を取ったりするわけじゃない。むしろ誰に対しても優しい人だったと思う。
でも……あの日を境にお母さんは変わってしまった。
私が6歳になった頃のことだった。
その日、お城の中庭でお茶会が開かれていた。
そこで私は初めてお父さんに出会ったのだけれど、その時はまだ会ったばかりだということもあって何も感じなかった。
それからしばらく経って、今度は王様と王妃様がやってきた。
だけど二人を見た時、何故か嫌なものを感じてしまった。
それはきっと二人が笑っていたからだと思う。まるで何かを隠しながら笑うような笑顔だった。
どうしてそんな風に思ったのかは分からない。
ただ、この時に初めて私は違和感を覚えたのだ。
(あれ? なんでだろう?)
それが不思議でならなかった。
だって、それまでにも何度か見たことがある二人の笑顔とは全然違って見えたのだから。
それなのに、二人はとても幸せそうな顔をしていた。
だからこそ、この時の私には分からなかったのだ。
――何故、自分がこんな気持ちを抱いたのかということを。
****
「今日はここまでにしましょう」
家庭教師の先生が私に言った。
いつものように授業が終わったのだと理解して、私は大きく背伸びをする。
「ん~♪ このお酒おいしい! やっぱり高級品は違うわね!」
「うむ……確かにうまいな。味が違う」
俺とリリアナは王都にある高級宿の一室で、高級酒を飲んでいた。
この部屋は最上級の部屋で、ベッドも大きく二人で寝ても余裕があるくらい広い。
部屋の調度品は全て一級品の物が置かれており、まるで貴族が住むような豪華な作りになっていた。
そんな部屋にいる俺たちだが、別に旅行をしているわけではない。
「ねぇ、ジャック。おかわりしてもいい?」
「あぁ、好きなだけ飲めばいい」
「やったー! じゃあ早速──って、そうじゃないのよ!?」
グラスを持って嬉しそうな顔をしていたリリィだったが、急に怒った表情を浮かべると、テーブルの上に置かれた分厚い紙束を手に取った。
「なんでこんな事になってるのよ!?」
リリィの手の中にあるのは先日行われた冒険者ギルド主催のオークションの結果が書かれた書類である。
俺はその書類を見て、思わず苦笑いを浮かべた。
そこには『聖剣エクスカリバー』の文字と共に、金貨三百枚という値段が書かれている。
ちなみに聖剣エクスカリバーとは、かつて魔王を倒した勇者が使っていたとされる伝説級の武器の事らしい。
その効果は絶大で、持ち主の魔力量に応じて攻撃力が倍増するという代物である。
本来であれば金貨五百枚以上は確実だと