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何とか新杉多の駅に到着。
午後11時10分発の電車に乗って、桜本町へ。
「あの距離を200円以下で移動出来るのって、安いよね」
「速いし、足も痛くならないのだ」
だったらそんな企画をするなと言いたい。
でもまあいいか、夏休みだし。
桜本町の駅で下車して、10分ほど歩いてマンションへ。
ちなみにマンション直行なら5分程度で着く距離だ。
後で歩いてみて、そう思った。
そこを10分かかったのは、寄り道をしたからだ。
牛丼屋に。
「並1つと牛皿1つ、持ち帰りで」
亜里砂さん、慣れた感じでそんな注文。
おいおい、そんなに食べるのかと一瞬思ったけれど。
「3人で分けて食べれば夜食にちょうどいいのだ。遅いので、ちょっと我慢なのだ」
なるほどな、と一瞬思って。
いやいや、牛丼の時点で何か間違っているような、と思い直した。
そして亜里砂さんが牛丼の袋を手にして、僕が亜里砂さんのザックを手にして。
駅まで戻って、改めてマンションへ。
なお駅からマンションに行く間に、亜里砂さんの誤算が1件。
「ああ、ここのマック、閉まっているのだ」
時間的には仕方ない。
「夜11時40分過ぎですから」
「なら牛丼をもう1杯、追加しておけば良かったのだ」
「夜だし、カロリー控えた方がいいんでしょ」
「立派なイベリ子になるのは、肥育が大事なのだ」
亜里砂さん、無茶苦茶を言いつつ歩く。
ただ、足取りはゆっくりだ。
亜里砂さん、大分足にきているらしい。
一方で。
「いい街だね。緑が多くて、広い感じで。海もすぐそこだし」
彩香さんはまだまだ調子がいいようだ。
そして、確かに彩香さんが言うように、いい雰囲気の街だと思う。
開けていて、緑が多くて。
そして亜里砂さんは、巨大なマンションの下へと入っていく。
カードキーで入口の自動ドアを開けて。
「まだまだ、もう少しなのだ」
エレベーターの7階を押し、亜里砂さんはしゃがみ込んだ。
かなり疲れているらしい。
そして、開いたエレベーターの扉から出て。
ずるずるという感じで歩く亜里砂さんについて、廊下を端まで歩いて。
扉をカードキーで開けて、中に入る。
さらに廊下を通って、奥の部屋へ。
「この部屋のいいところは、低層階でも眺めがいいところなのだ」
そう言って亜里砂さんはカーテンを開ける。
壁の2面がガラス窓だ。
「これで電気を消すのだ」
ランドマークタワーを中心に、左側のビル、前の通りが夜景化した。
光の点描で描かれた夜の街だ。
「もう少し高ければ、もっと見下ろす感じの夜景になったのだ。でも、中層階以上の高さは価格が高すぎると父が言っていたのだ」
「でも、これで充分、綺麗」
きっと、牛丼の匂いがなければ、もっとロマンチックだったのだろう。
そんな事を僕は思う。
でも確かに、充分いい風景だ。
「そんな訳で、牛丼を分けるのだ」
という訳で、牛皿1と牛丼1を3人分に分けて。
ちまちま食べながら夜景を見るという、良くわからない状態になった。
いや、久々に食べた牛丼は、確かに美味しかったのだけれど。
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新月 つむり🐌