💜照だってなべとのこと黙ってただろ
深澤がまずいと思って自分の発言を後悔し始めた時、岩本が硬い表情で言った。
💛ふっかには関係ない
深澤は俺もお前が好きなのに?と言う言葉をやっとで吞み込む。
💜…俺たち同じメンバーなのに?
💛俺と翔太の問題だから、ふっかには関係ない。
繰り返す岩本。
深澤は悲しいやら悔しいやらでさらに泣けた。
涙が溢れて止まらない。
もう自分が一体何で泣いてるのかもわからない。
ただただ岩本と心が離れて行くのが辛い。
💜……関係ある
絞り出すように、言った。
岩本はさぞしつこい奴だと思っただろう。
そんなの構わない。
深澤は腹が立って来ていた。
「関係」させてもらえない自分に。
そして何よりも分からず屋の岩本に。
💜俺にも関係あるよ
💛ふっか!!!
もう聞きたくない。
深澤は岩本の肩を抱く。
いきなりのことで岩本が抵抗できずにいると、 深澤はそのまま口付けした。
岩本は慌てて振りほどこうとするが、深澤は強引にキスを続ける。
やがて観念したように、岩本は深澤を受け入れた。
ほどなくして二人は離れる。
深澤は岩本を見つめている。
岩本も深澤を見返している。
💜関係なくなんかない
💛………
💜照の嫁は俺だよね?
💛………
💜俺、照がいないと寂しくて死んじゃうよ?
最後に深澤は冗談めかして笑おうとしたが、上手く笑えなかった。
ぎこちない笑顔が岩本の目にどんなに惨めに映っただろう。
きっと今の自分はものすごく無様なんだろうなと深澤は思う。
後悔と悲しみと愛情と寂しさと諦めきれない気持ちと…たくさんの感情がないまぜになって、深澤の心に波のように寄せては返していく。
とうとう、言ってしまった。
深澤は変わらずすすり泣いている。
少し落ち着くのを待ってから岩本が優しく語り掛けた。
💛ふっか。聞いて?
💜……
💛ふっかのことは好きだ。お前は俺にとって大事な存在だ。他の誰にも替えられない。
もう聞きたくない、耳を塞ぎたい。
深澤は拒絶されるのを感じて身構えてしまう。
愛しい人の言葉が優しく耳に届く。
温かい響き。
何度も聞いた大好きな声。
それでも愛しているから岩本の言葉をちゃんと心で受け止めたい。
矛盾した二つの思いが、深澤の胸を締め付ける。
流す涙も鼻水も枯れて、深澤からはついには嗚咽だけが漏れる。
💛でもそれは恋じゃないんだ。
💜やだ……照……
深澤は首を振る。
息がうまく吸えなくて、このままじゃ酸欠になりそう。
子供のように泣きじゃくる自分は今、ものすごくかっこ悪いだろう。
いい大人の男が、泣いて、縋って。
もう消えてしまいたい、と深澤が絶望しかけた時。
ふわり、と優しく岩本は深澤を抱き締めた。
深澤の背中を撫でた。
その感触はあまりにも柔らかくて、心地よくて。
でも却ってそれが悲しくて。
深澤はようやく、この腕の中には深澤が求めた種類の愛はないのだと知った。
💛俺を好きになってくれて、ありがとう、辰哉
💜………
💛すぐに元通りに戻れなくても、俺はお前を信じてる
💜…………
💛こんなことで俺たちは絶対に終わったりしないから
💜…………
深澤はもう声が出ず、ただしゃくり上げながら、岩本に抱かれている。
気づけば岩本も震えていた。
💜照?
見ると岩本も泣いている。
嬉しかった。
深澤はその涙分くらいは、岩本の心を動かしたのだと思えたから。
この人を好きになってよかった。
深澤は少し笑った。
欲を言えば。
欲を言えばずっと隣りに。
永遠に岩本の隣りにいたかったけれど。
もちろんこれで岩本への愛がすぐに消えるわけではないけど。
やはり深澤の愛する岩本照は、誰よりもかっこいい男だった。
こうして深澤辰哉は失恋した。
コメント
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なんかまきぴよちゃんって言葉選びが凄く素敵なんだよね…。なにが言いたいかというとめっちゃ好き!