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「そもそも、私はぷちが気に入らへんねん。こっちがどんなにいい商品を作ったって勝手にブランドの評判を下げるんやから。大体、私達がどれほど丁寧な仕事してるか店舗の人間はホンマに理解してるんかっちゅーねん。POPやちっちゃいタグつけたところで何人がわざわざ見てくれるん。お客様の目ぇ見て口で伝えな意味ないわ。このイケメンみたいに全員分の手土産持って学ぶ姿勢で工場見学に来いって、いっつも思っとんねん」

明彦が工場を視察していただなんて、麗は知らなかった。

誘ってくれたらよかったのに、と一瞬考えたが、お遊びじゃないんだからと反省する。


「工場長」

「正枝って呼んで」

明彦に対して工場長は語尾にハートが着きそうなくらい高い声を出した。

彼女は初代社長の時代に工場のパートとして入社し、契約社員、社員、そして工場長まで登り詰めた正に工場の主だ。自分にも他人にも厳しい人で有名なのに、明彦の前では乙女になっているようだ。

「正枝さん、お願いしていた件はいかがでしょうか」

明彦は表情を崩すことなく正枝と呼ぶので、麗は尊敬した。


「皆、恥ずかしいけどイケメンのお願いだから仕方ないってOKしてくれたわ」

(恥ずかしいって何をお願いしたんやろう? チャリティーで募金を募る海外の消防士のように工場のおばちゃんカレンダーでも発売する気かな)

「ありがとうございます。では、一般向けと従業員向けのの工場の見学会の手配をさせていただきます。また、作業の様子の動画も撮らせていただいて、ホームページや将来的にはCMなどに掲載させていただきます」

「りょーかい。また来てくれるのを皆待ってるわ」

うふと、笑う工場長に明彦は頷いた。


「近いうちにまたおうかがいします。さて、話にも出ましたが、次は店舗で接客をしている従業員についてです。今一度接客技能と商品知識の再教育を全店舗で行います」

廉価ラインの撤退を反対する話を明彦は流し、次の話題へ移った。


「全店舗は要らないのでは? 半年に一回、覆面調査員を各店舗に派遣していますがほとんどの店舗が問題なく合格しています」

人事部長がお金も掛かりますしと、明彦の提案をそっと拒否する。

客のふりをして店舗にくるおじさんなら麗が店舗研修を受けていた時にも来た。

懐かしい。

パートのお姉さまにあの人の接客は丁寧にやりなさいと教えていただいた覚えがある。


「こないだ店に覆面調査員来たんだけど、バレバレでマジうける。スーツ着たおっさんが昼間っから店に来て、面倒臭いこといちいち聞いて買わずに出てって、外でてすぐメモしてるから正体丸わかりだっての。上層部バカじゃね? 以上、これは接客担当の従業員のSNSのプライベートアカウントから抜粋したものです」

明彦が、ギャル口調の文章を平坦に読み上げたので、麗は逆に笑いそうになった。


「事前連絡もせず勝手ではありますが、こちらで覆面調査員を雇いました。その結果も合わせてご覧ください」

明彦が配ってきた資料は、従業員の接客が悪いと示していることは、数字が苦手な麗でもなんとなくわかった。

「それでは、後で各自に個別でお話しすることはありますが、現在早急に取り組む課題は基本を忠実に、以上です」

「えっ?」

麗は思わず声をあげてしまった。


「いかがしましたか? 社長」

明彦の瞳が麗を捕らえるが、麗はこんなことを言ったら駄目かなと口ごもる。

「いや、あの、何て言うか、その……。結構、普通の当たり前のことばっかりだなって思っちゃって。明彦さんの事だからなんかこう、ドーンとおっきいアイデアがあるんかなとかちょっと考えてたりしてたから。ほら、明彦さん大学生のときになんか色々やって儲けてたし……」

失礼なことを口に出すなと副社長が目を見開いて麗を見ている。


「短期的にブームを作ることは簡単ですが、その代わりすぐに終わる。長期的に会社を存続させるには、当たり前のことを当たり前にすることが最も重要です。大切なことは従業員一人一人の気づき。会社への帰属意識を持って働いてもらうことです」

一呼吸置き、明彦は麗を見つめた。

「そのために、重要なのは徹底的な無駄の排除。縦方向だけでなく、商品知識やお客様の声などを共有し、横の繋がりを増やすこと。そして、企業理念に沿った行動をすること。勿論、広告代理店を雇い、イメージの回復は図るだけでなく、デザイナーも新たに雇います。ですが、イメージが回復してお客様が来たところで、商品や接客が悪ければ、またお客様は離れていく。まずは手近なところから着実にやっていくことが重要です」


「……余計なことを言ってごめんなさい」

「謝らなくていい。わからないことがあれば必ず聞いてください。あなたは社長なんですから」

「……はい」

麗は一生使うことがないだろうと考えていた言葉、善きに計らえ、を使いたくなった。

政略奪結婚 〜姉の身代わりのはずが、何故かイケメン御曹司に溺愛されています?〜

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