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「わりぃ……いまいち理解出来てねえんだけど、つまり?」
アルベドは、頭をかきながら、私に説明するよう求めてきた。いきなり渡した取り乱してしまったせいもあるので、私は、落ち着いて、今浮かんだ、最悪の考えを、アルベドに伝えることにした。
「つまり……前の世界と、違う流れになってきているって言ったじゃん。エトワール・ヴィアラッテアが……私の身体を奪ったあいつが、本物の聖女だってあがめられていたら、もう一人聖女を召喚する必要がなくなるわけじゃんか……だから、トワイライト。本物の聖女って言われていたあの子が、この世界に召喚されないかもしれないって」
自分で言っていて、体が震えているのが分かった。
私にとって、トワイライトは本当の妹で、大切な妹で……
世界が変わったせいで、その妹に会えなかったら。そこまで考えていなくて、後からやってきた不安に押しつぶされそうだった。だって、エトワール・ヴィアラッテアが、本物の聖女だって思われている今、もう一人の聖女を召喚する理由なんてなかったから。
「確かにその可能性があるわけだな」
「元の世界の戻せたとしてだよ。今ここにいない人は、前の世界にいた人として戻ってくるのかな?アルベドは、私が死んだ後に……だったから、セーブポイントがちがくて、元の世界に戻れば死んだこともなかったことになるわけじゃんん」
「そうだな。確かにどうなるか分からねえな」
「だよね。このままでいいのかな、本当に」
「いいのかなって、ここまで来て、もうどうしようもねえだろう。それこそ、魂売って、消滅して……くらいじゃねえと。禁忌おかしてじゃねえと、時間なんて巻き戻せねえぞ?」
「ねえ、時間撒き戻すことが出来る魔導士っていない?」
「いねえよ!いたら、こっちが教えてほしいぐらいだよ!」
と、アルベドは少し食い気味で返してきた。
そうか、やっぱりそれもいない。そもそも、禁忌の魔法と言われているのに、それが使えるなんておかしなことだしいるわけがない、というか。
(聖女であっても、それは使えないし、タブーなんだよね)
時間を撒き戻すなんて、乙女ゲームの選択肢間違えて、リセットし直すみたいな行為だし、そう簡単にできたら危ない。そもそも、ここで生きている人たちは、乙女ゲームのキャラクターですなんてい
う自覚はないだろうし。
これ以上、巻き戻せない、引き戻せない以上、どう動くのがベストか、もっと突き詰める必要がある。私たちは、こうなればいいとか、そういう思いをもって動いては来ているけれど、やっぱり、少し動きが遅いというか、このままじゃ……と思うところがある。そのうちに、前背の階に追いついて、取り返しのつかないことだって。
(私は、エンディングのその後の世界を生きることが出来た。だから、エンディングまでいったら、また巻き戻るなんてことも絶対にない)
「まあ、いろいろ考えることはあるだろうけどさ。今は、そこで悩んでるより、もっと動かねえとじゃね?時間を無駄にしたくねえなら」
「そう、だね」
アルベドに手をひかれ、私たちは人ごみをかき分けて歩いていく。街は、お祭りムードで、あっちこっちから人の声が聞こえる。楽しそうな笑い声、歌、音楽……でも、私たちは、その楽しいという枠から外れて、二人ボッチな気がして、音が遠くに聞こえる気がした。耳元で聞こえているはずなのに、海の中にいるようなそんな気持ち。
一度この世界の祭りを経験しているからだろうか。そして、その祭りを楽しむという枠から外れて行動しているんだろうか。来年も楽しめたらな、なんて思っていた祭りは、巻き戻って、同じものを経験することになってしまった。それでも、祭りは祭りとして楽しみたい気持ちもあって複雑だ。
本当は純粋にアルベドと楽しめればいいんだろうけれど、そこまで気持ちを切り替えることが出来なくて、かといって、やらなければならないことに対しても、どうすればいいのか、だんだんと目の前が真っ暗になってきた気がして、傷む頭を押さえることしかできなかった。
「今日くらい、楽しんでもいいんじゃねえかって思うけどな。俺は」
「ねえ、アンタ私の心読めるの?」
「読めねえけどなんとなく。ほら、顔に出やすいだろ、お前」
「うー」
「二回目だからっていっても、まったく別もんじゃねえか。まあ、俺と回るっていうのは、前の世界と一緒だな」
「で、でも、私、アンタ以外の人とも一緒に回ったし」
「あ?」
「え、知ってると思ってたけど」
「……いや、知ってる、けど。それを、直接言われたら傷つくっつうか。なんで今言った?」
「いうタイミングだったから?」
私がすっとぼけた顔で言うと、アルベドは、あーとどこか、めんどくさそうな声を漏らして、口を尖らせた。タイミングというか、言いたかったから言っただけなんだけどなあ、と思ったけど、アルベドからしたら、私ともう一度回れる、ということが嬉しくてそれ以外はいらない、というように思ったのかもしれない。そう思うと、また失言だな、なんて思いながら彼の手を握り返す。少しだけ温かくなった彼の手をいろんな方法で握ってみれば、おい! と焦ったような、恥ずかしそうな声でこちらを向いた。
「おい、さっきから何だよ。にぎにぎ、にぎにぎって!」
「えー優しくしてくれたから、握り返そうと思って」
「優しくした覚えはねえけど」
「じゃあ、存在自体が優しい」
「俺の事怖いって言ったのどこの誰だっけか?」
「知りません」
「へいへい」
そんなどうでもいいような、つまらない会話でも、相手が何を言っているのか、思っているのかわかっているからこそ、笑い話にできる。
実際、アルベドが優しいなんて彼を知らなければ思わないことだろう。暗殺者だし、恐れられている闇魔法の貴族で、公爵家の公子。身分も、その強さも、彼を孤独にする。理解する前に、彼に近づけなくなるんじゃないだろうかとも。
(私も、髪の色が違う、人もの色が違うって、本質じゃなくて、容姿で、聖女じゃないって言われたから、彼の気持ちはよくわかるっていうか……)
だからこそ、分かり合えたっていうのもある。二人ボッチでも気にならないのは、アルベドのおかげだ。
(さて、気持ちを切り替えて、私もやることをやらなくちゃ)
グランツは、エトワール・ヴィアラッテアの、護衛でなければここに参加しないはず。となると、ブライトと、あの双子が他に参加していることになるわけで……
(久しく、あの双子にはあってないけれど、そもそも、エトワール・ヴィアラッテアがあの双子を攻略するとは思えないし)
子供のことがそこまで好きそうじゃないし、もしかしたらまだ、攻略しきれていないのかもしれない。だったら、この星流祭で彼らと出会い、仲を深めることで、どうにか彼女より先に、認知し、その眼中に入れてもらわなければならない。
(――といっても、私あの二人苦手なんだよな)
苦手というよりか、単純に歳の差的に考えが合わないと言った方が正しいだろう。
それでも、攻略キャラとして存在し、名前が挙がるんだから、攻略できないわけでも、攻略方法がないわけでもない。
「ダズリング伯爵家……」
「ダズリング伯爵家?ああ、あの金持ちの……来てるって言うのか?てか、そこまで、かかわりあったのかよ」
「まあ、それなりに……って感じ。あと、エトワール・ヴィアラッテアは、そこ盲点だと思うから、せめるなら、そこかも」
「まあ、お前の自由に。見つかればの話だがな」
そういいながらも、アルベドの口角は確かに上がっていた。