テラーノベル
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アイさんがバスタオルとパジャマを持って脱衣所に向かうと同時に、俺は自分の部屋の扉に鍵をかけていないことに気が付いた。そもそも、鍵は俺の部屋に置きっぱなしだ。
ソファーから立ち上がり廊下へと出ると、丁度リビングに入ろうとしたミィとぶつかりそうになる。ミィは相変わらず俺のTシャツを着たまま、俺の枕を抱きかかえるように持っていた。
「あ、ユウト、もしかして逃げようとしているんじゃないでしょうね!」
まあ、隙があれば「部屋の鍵を閉めるついでに自分の部屋に戻ろうかな~。」なんて考えていたけれど、とても言えるような雰囲気ではない。
「そ……そんなことは無いよ。鍵持たないで部屋から出てきたからせめて鍵を取りに帰ろうと思って――マンション自体にオートロックはあるけれど、鍵を掛けていないと心配だろ。」
ミィはニヤリと笑いながら俺に枕を渡す。
「その心配は無いよ。今、ユウトの部屋から枕を取ってくるついでに、鍵を掛けてきたから。」
そういえばミィのやつ、俺の部屋の鍵を持っているんだった……。という事は……。
「そういえばユウトの部屋の鍵、机の上に置きっぱなしだったけれど……明日になったら開けて上げるから、今日は、私たちの部屋でくつろいで頂戴。」
終わった……。俺の鍵は完全にインキーされ、ミィがいないと自分の部屋に入ることが出来ない状態だ……。ミィから鍵を奪うという手もあるが……ミィのやつTシャツの胸ポケットに入れていやがる……。強引に奪い取ろうとすれば、セクハラで社会的に殺されかねねぇ……。いや、気が付かれないうちにそっと奪えば……。
ミィと軽く会話をしながらゆっくりと、ミィの胸ポケットに手を伸ばす。すると、ミィは人を馬鹿にしたような、ニヤニヤとした表情を浮かべ胸を隠しながら身体をくねらせた。
「いゃん♡ もしかして、私の胸を触りたいの♡」
そういうわけじゃねぇことを、お前も分かって言っているだろ……。
「あ……ユウトの部屋の鍵は寝室に隠しておくから。ユウトが『どうしてもミィちゃんのGカップおっぱいを揉みたいです。』って懇願するのなら、あとで5秒だけ揉ませてあげても良いよ♡」
こ……この野郎……。しかしこの瞬間、俺は自室へと帰る手段を完全に奪われたのだった……。
◆◆◆◆
俺は観念をしてリビングのソファーに座り、ミィと一緒にアニメを観る。人気WEB小説が原作のアニメであり、第一話をミィと一緒に見た作品だ。際どいシーンが多いラブコメ作品で、動画サイトでは無修正版が配信されている。今見ているTV放送版でもかなり責めた内容になっていた。
初めの内はソファーの端と端で並んで観ていたはずだが、いつの間にかミィが俺の隣にぴったりとくっついている。いつもよりも濃く――甘いバラの香りが鼻腔をくすぐった。
TVに映し出されているアニメも佳境を迎え、原作でも話題となっていたシーン――教室でメインヒロインが主人公を無理やり机に押し倒し、涙を流しながら唇を奪うシーンが映し出されている。
そのシーンが始まった瞬間、ミィはおもむろに俺の腕に抱きついた。俺は思わずミィの方を見る。上目遣いの潤んだ瞳、艶やかで瑞々しい唇、恐らく化粧をしていないにもかかわらず少し高揚した頬……。確かにミィの事を可愛いとは思っていたが……いつもの姿からは想像できないような、蠱惑的な色気を感じる。
「ねぇユウト……私も女なんだけど……ユウトは私の事どう思っているの……?」
ミィは静かに……そして艶やかに……俺に質問をする。
TVには激しく唇をむさぼり合い舌と舌を絡め合う主人公とメインヒロインが映し出され、聞いているだけでも恥ずかしくなるような淫らな嬌声がこだましていた……。
ミィはおもむろにこちらを向いて目を瞑り、艶々とした唇を少し開く。俺は目を瞑り、吸い込まれるようにミィに顔を寄せる。ミィの吐息を俺の唇で感じられるくらい近づいた瞬間、パタンと音が鳴った。シャワーを終えたアイさんが脱衣所の扉を閉める音だ。
俺とミィは飛ぶようにソファーの端と端に戻り、改めてアニメを観始めた。ミィの事を横目で見ると彼女は茹でダコのように顔を真っ赤にし、まるで鼻をかむ時のように、両手で鼻を覆いながらこちらをチラチラと見ている。もしかして……俺も……顔が真っ赤になっていないよな……。
恥ずかしくなり、両指を絡め、その上に顎を載せ、有名なロボットアニメの司令官のような体制でアニメを観始めた。それと同時に、アイさんがバルタオルで頭を拭きながらリビングへと入って来る。
「あ~。それ、エッチなアニメでしょ~。」
アイさんはTVを見るなり声を上げた。アニメの主人公とヒロインは、扉を開けて入って来たサブヒロインの足音に気が付いて飛び起き、それぞれがそっぽを向きながら乱れた衣服を直していた。
コメント
1件
**寺島あおいの感想** 「私も女なんだけど……」って、ミィちゃんのあの真剣な眼差し、普段のふざけた雰囲気とのギャップに胸がぎゅっとなりました。アニメのシーンとリンクしながら、二人の距離が一気に縮まるあの瞬間、アイさんが戻ってくるタイミングの絶妙さ……。寸前で止まるドキドキ感がたまらなかったです。次話がもう待ち遠しいです🤍
#溺愛
桜咲かな
152
雲花ヒヨ
128
桜咲かな
142
夢野ひより
1,781