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「それでは面接を始めます。……特技は畜豚とありますが、これは今回の募集事業にどの様に活かせるとお考えでしょうか?」
俺の質問に、目の前の女性……綿志野 冨和夢(わたしの ふわむ)さんが、
「はい、実家の牧場で豚を育て、ブランド化した実績があります!」
「大変失礼ですが、炎上商法、と言うヤツでしょうか?実はご応募頂きました時に確認させて頂いたのですが、
貴社のブランド豚:夢の豚が極最近ではY豚と呼ばれている事実を確認……」「ち、違います!?
それは極めて悪質なデマですぅ!!!ウチの豚は私が一匹一匹愛情を込めて育てた仔達ですぅ!!!
カツレツもヒレもショウガヤキもホイコーローもスブタもカクニも皆、美味しくなぁれ、美味しくなぁれと出荷の日まで毎日キチンと体調管理してきた大切な豚ちゃんたちですぅ!!??」
お、おぅ……野生、いや生粋の八軒族かな?
調査の途中で『Y豚ちゃんのソーセージは上下どっちの口で食べても美味しい件』とかいう〇Vを見つけてしまった時はどうした物かと思ったが……
「なるほど。随分と悪質な嫌がらせを受けているようですね。
もし法律の専門家をご希望でしたら紹介いたしましょうか?」
「は、はい!!!是非ともお願いしますぅ!!!!!
ウチの仔達を愚弄した下種共は一人残らず畑の肥料か地獄送りにしてやりますぅ!」
とても必死だけど、違う。訴え掛けてほしいのはソコじゃない。
「話を戻しましょうか。今回の事業ですが、召喚モンスターの所有領域における農業の実験です。〇×県庁の冒険者課の役所さんに依頼してダンジョン関連の学部の内、農業系の研究を行っている教授にお声掛けしてもらい
、研究及び作業及び指導に携われる方を派遣していただけるようにお願いしました所、綿志野さんをご推薦いただきました」
「えへへへへ、恐縮ですぅ」
「推薦の理由に現役の冒険者として活動しており、万が一の際に自衛が出来るとあるのですが」
「はい!お恥ずかしながら、私もポーション集めのために冒険者をしていますぅ」
「ほぅ……ポーション集め、ですか?」
「はい!ウチの豚ちゃん達の為にたくさん必要なんですが、普通に購入するとお金が、その……」
「飼育している豚の為、ですか?」
「はい!最初は病気のカツレツの為に少しでも良くなればと思って飲ませてみたんですが、効果バツグンで、肉質もグッと上がってブランド化しちゃった位なんですよ!!」
エヘヘヘヘ……、とはにかんでいるが、この子今さらりと企業機密を漏洩した……!?
そして浮かび上がるY豚のY(AKU漬け)豚疑惑。
只の嫌がらせが迂遠な告発疑惑まで出てきたぞ、おい……!?
「……ポーションが医薬品として国に認可されていないのは、御存じですよね?」
「はい!……それがどうかされましたか!?ウチの仔達は凄く美味しいですよ!?」
ヤダ、この子スゴク|強引G(ごういんぐ)MyWay……
機密漏洩の件といい、癖の強さに不安が残るが、現地入りして大丈夫そうな候補者がこの子しか残っていないのは事実……!?
この子以外には、デスクワーク畑の現役教授のお爺ちゃんとか、
TシャツGパンで筋肉を見せつけてきて、
「何があっても自分にはこの筋肉がありますから!!」
と、非常に暑苦しいのがいたが、キラービーのカードを見せて、その筋肉はこの熊を如何にか出来る程のものですか?
と聞くとスゴスゴと帰って行った。
「ホッキョクグマを倒してから出直してきます!!」
と去り際に宣言してきたが、それが出来たなら彼は何処かの地下闘技場にでも行くべきだろう。
畜産系の偏りは気になる所だが、(一応)農場仕事経験有の冒険者だし。
「いえ、大した事ではないのですが、念の為に確認を、」
「そうでしたか!確認は大事ですもんねぇ……」
これ以上の適任者が来るとも思えないし、次がこの子以下の逸(般人的な人)材である保証もないし、この子でいいかな。
いや、良くないかな……
「ちなみに、綿志野さんは何時から弊社で勤務する事が可能ですか?」
「ひゃっ、ひゃい! これからすぐにでも大丈夫です!?」
「落ち着いてください。流石にこれからと言うのはお互いに準備が不足していますので、そうですね……
今日の所は勤務予定地の見学と、同僚の紹介だけしておきましょうか。それでは私は準備をしてきますので、綿志野さんは此方で少々お待ちください。お茶とお茶菓子はどうぞご自由にお召し上がりください」
そう言ってドワーフ村に向かって武器防具を装備してリビングに戻る。
「お待たせしました。それでは行きましょうか。 ……失礼ですが、現地には人間用のトイレ等の設備がまだありませんので、出発前にお手洗い等必要であれば……」
「いえ、大丈夫です!早速出発しましょう!!」
気合十分なのは結構なんだが、冗談でもなんでもなくまだ人口設備が無いんだよなぁ……
そもそも開墾から始める必要があるというガチ開拓事業だし。
やる気は満ち溢れているようだし、いざ行かん。ゲェェェェェェト・オォォォォプゥゥゥゥゥゥゥン!!!!!
ブブブブブブブブブブブブブブブブ
ブブブブブブブブブブブブブブブブ
蜂蜂蜂蜂蜂蜂蜂蜂蜂蜂蜂蜂蜂
蜂蜂蜂蜂蜂蜂蜂蜂蜂蜂蜂蜂蜂
蜂蜂蜂俺 綿志野 門蜂蜂蜂蜂蜂 女王蜂
蜂蜂蜂蜂蜂蜂蜂蜂蜂蜂蜂蜂蜂
蜂蜂蜂蜂蜂蜂蜂蜂蜂蜂蜂蜂蜂
「キャアアアアアアアアア!!!!!」
開幕キラービーの包囲網に綿志野ちゃんの絶叫が響く。
「こら!今日はお客さんが来るから脅かさない様にって言っておいただろう!?」
俺が彼らを叱ると、羽音の音量が下がり、全員地面に降りた。
え?お客さんを歓迎したかった?
こんなに怖がるとは思わなかった?
うーん……
「綿志野ちゃん、大丈夫?彼らが君の同僚になるキラービーなんだけど」
「ふえええええ……こ、怖かったです……ぐすっ」
人間大近くの大きさの蜂の群れに包囲されたらそれは怖かろう。
サプライズの積もりだったが、やはり事前に伝えておくべきだったか。
「それで、同僚って……」
「うん、彼らは簡単な作業なら手伝ってくれるし、果物、作物の受粉も出来るし、勿論花から蜜の採取も可能で、何より君の護衛にもなってくれるよ」
「そ、そうだったんですかぁ…… 怖がって申し訳ないですぅ。私、綿志野 冨和夢(わたしの ふわむ)っていいますぅ……
あれ?この子達、言葉が通じますかぁ?」
「ああ、彼らは女王を中心として人に近い群体知性を持っているし、日本語は理解できているよ」
「わぁ、凄いですぅ。私、蜂さんとお話しするの初めてですぅ」
「そうだね。ただ彼らは話す事は出来ないから聞きたい事があったら私に聞いてくれれば答えるよ?」
「そうですねぇ、色々ありますが、時間も掛かってしまいますしぃ、今度レポートに纏めて来ますねぇ?」
「ははっ、お手柔らかにね……?」
レポート用紙を束で持ってこられたらどうしよう……?
「それで、実務(開墾)を行う場所なんだけど……」
「はい?此処じゃないんですかぁ?」
「うん、すぐそこの森の中の川の横にパッと見良さげな場所があってね。そこを切り開いて行こうと思っているんだ」
「わぁ、凄いですぅ。本格的に開墾して自分の畑を作るですねぇ?」
「うん。素人考えだけど、葡萄・林檎の果樹と花畑を作れればと思っていてね。素人が適当にやるよりは専門家の知見があった方が良いだろう?その為の人材募集だったんだけど」
目指せ、不動酒(ワイン)、リンゴ酒(シードル)、果物風味のロイヤルハニー。
お米?開墾がどのくらい出来るかによるかなぁ。お米も花が出来て蜜が採れるみたいだけど。
黄泉の国で作ったお米とか”闇米”呼ばわりされそうだけど。
ま、お酒に加工すれば関係ないか!
「う~ん……」
あ、何か考え込んでいる。
「解りました!それじゃあ、今度来る時は教授とゼミの皆に相談してどうしたら良いか聞いてきます!!」
何と言う二度手間……
でも、分からない事を知ったかぶりされるよりは遥かに助かるしなぁ。
「うん、それじゃあ、より良い意見が出せるように現地の写真と土壌のサンプルを持って行ってもらおうか」
「はい、それでは私、写真撮ってきますねぇ!」
そう言って早速駆けだす綿志野ちゃん。
……雇い主(予定)に穴掘りを押し付けるとか良い度胸である。
あー、素人だと土だけでサンプル足り得るのか分からないなぁ。……よし、ついでに底の方に石を敷き詰めて、と
川の水もどれだけ必要か分からないから容器の容量限界まで入れるか。
ふぅ、これでたった30kg位か。袋はまだあるし、よ~し、雇い主100kgまで頑張っちゃうぞー
……尚、綿志野ちゃんが60kg持つのが限界で、残りを自分で運ぶ羽目になったのは言うまでもないだろう。
うーん。道路の敷設も必要になるな。
……改善点が見つかったからヨシ!