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こんな俺も、昔は子どもたちから「神様」と敬われたことがあった。もっとも、「神様」の前に「エロ」がつく、ちょっとカッコ悪い神様ではあったが……。
きっかけは単純なことだった。近所に神社と、ちょっとした森があった。そこに、ときどきいらなくなったエロ本を捨てていた。捨てた本は、どうやら小学生がひろっていたらしい。やがて小学生たちは、「こんなエロ本が欲しい」という要望をメモして、エロ本捨て場に残すようになった。その要望を叶えてやっているうちに、エロ神様と呼ばれるようになったのだ。
そんな俺も、今ではしがない警備員だ。俺の担当は、ちょっと変わった病院で、……まあいわゆる精神病院というやつだ。ここに入院しているのは、みんないいやつで、危険なんてひとつもないのに、家族関係に恵まれなかったばっかりに、まるで監禁されたような生活を送っている。
ちゃんと面倒を見てくれる家族がいれば、外で平和に暮らせるのに。肝心の家族が面倒くさがって、病院に押しつけている。そして病院は、「勝手に出歩くと危険だから」という理由で、各階の扉を厳重に閉ざし、おかげで患者たちは自分の意志で外を出歩くことすらできない。そんな病院の、男性専用病棟が俺の担当だ。
こんな境遇では、恋人だって出来るはずがない。そう思うと、かつてのエロ神としては、なんとかしてやらないとな、とつい思ってしまう。
そこで俺は、彼らにプレゼントをして、喜ばしてやろうと思ったのだ。今、車の後でそのプレゼントがすやすやと眠っている。これを早く届けてやらないとな。
病院についた。夜、入院患者以外でここにいるのは、実は俺だけだ。医者や看護師がいないところに、この病院が名ばかりのものであることが表れている。ただまあ、そのおかげで好き放題できるわけだが。
病院の台車で「プレゼント」を男性専用病棟まで運ぶと、入院患者が出られないように施錠されている鉄格子の中に入り、そこに「プレゼント」を置いた。ちょっと考えて、足の縄だけは外しておく。その代り、厳重に耳栓をし、「プレゼントです。ご自由にお使いください」と紙に書いて残しておいた。
そうして俺は鉄格子の外に出ると、管理室に戻り、後は監視カメラで見守ることにした。あとは入院患者がこのプレゼントに気づくのを待つだけだ。(続く)