ピラカンサは昔から、きっとアザレアが婚約者に選ばれるだろうと予想していた。なので王太子殿下の婚約者になることは半ば諦めてはいた。
それでもアザレアの誕生会で、王太子殿下のアザレアに対する溺愛っぷりを目の当たりにしたら、流石に少し落ち込んだ。
「お嬢様? 大丈夫ですか?」
そう言って、侍女のマリーが心配するほどであった。
ピラカンサはあまり周囲に心配をかけたくなかった。それに自身のイメージとして、こんなことで落ち込む人間だと思わせたくなくて強がりを言った。
「なんのことですの? マリー、大きなお世話ですわ。私が何故落ち込まないといけないの? そりゃ、最初から出来レースで悔しくて、ムカっときますけど、それだけですわ」
そして、大きく深呼吸して続ける。
「それにあの腹黒ヴィバーチェのとこのイベリスが選ばれるより、アザレアが選ばれた方が一万倍ましでしてよ? イベリスの事だから今頃お茶でも飲みながら、『トップなんて誰でも良いですわ。どうせ私達の思うように動く傀儡《かいらい》に過ぎませんから』とかなんとか言ってるに違いないもの!」
一方その頃、イベリスは父親とゆっくりお茶を楽しんでいた。そしてヴィバァーチェ公爵がイベリスに尋ねる。
「ケルヘール公爵令嬢とはどうだ? 仲良くできそうか?」
イベリスは微笑む。
「大丈夫ですわ、直情型でわかりやすくて可愛らしい人のようですし、仲良くできそうですわ。それに、そもそもトップなんて誰でも良いですわ。どうせ私たちの思うように動く傀儡《かいらい》に過ぎませんから。おーっほっほっほっ………ッハクシュ!! あら、嫌だわ風邪かしら」
そう言うと鼻をすすった。
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