君の為。 ー 🐑🍫
「は、ははっ…」
乾いた笑い声が夜空に響く。
「追い詰められちゃったあ」
「はあ …. はぁ …… 」
「動けば … 打つからな、」
カチャ、拳銃を構える警察官。
「 … 大人しく従うわけないじゃん?まだ逢えてないし。」
そう言い残して私は飛び下りる。
「あっ、おい!」
これから先のことなんて考える余裕なんかない。
ただ運に任せて落ちるだけ。
どうか死にませんように、と。
_______
ドンッ
鈍い音がなった。
ああ、良かった。 運よく屋根の上に落ちたみたいだ。それでも背中は痛いけど。
「行かなきゃ」
ボソリと呟き、夜空に向かって走り出す。
後ろからパトカーのサイレンが聞こえるけど、
そんなのいちいち気にしてたら君に逢えない。
早く、早く逢いたい。「久しぶり」って言いながら、彼を思いっきり抱きしめて____
ガシッ
!?
腕を掴まれた。
ゆっくりと後ろを振り返る。
そこに居たのは
ずっと逢いたかった君だった。
「ヒロ、くん … 」
予想外の出来事に思わず目を見開く。
「久しぶり。」
「 ……. 久しぶり、」
君の懐かしい声に涙が溢れる。
「 … 逃げてるんでしょ?」
「うん」
涙を流しながら頷く私。
「 … そっか。」
それ以上は言及してこなかった。
ヒロくんの優しさは何時も変わらない。
相手を思いやることを第一に考えているところとか、本当に大好きだ。
「 …… 」
そっと抱きしめられた。
「 … ひ、ヒロくん」
「 ……… 」
「もう泣かないで。」
「 … うん、ごめん」
「俺と一緒に逃げよう。」
「 … え、?」
「小さな街で …… 2人だけの世界で、ゆっくり暮らそう。」
「ごめん、ヒロくん」
「それは、出来ない。」
「 … どうして?」
「私 … 犯罪者だよ、 」
「 …….. 」
こんな私と居たら、君まで穢れてしまうだろう。
本当はそうしたいけど、今逢えたことだけでも十分幸せだ。これ以上、望んではいけない。
「聞いてもいい?」
「何を、?」
「 … どんな犯罪を犯したの?」
「 ….. 私、ヒロくんと離れた後、マフィアに入ったんだ。」
「え、マフィア?」
「うん。だから、何人も … 殺してきた。」
自分の手を見下ろす。
そう、この手で … ボスの命令通りに、数々の人間を殺してきたんだ。
「 …… そっか。」
首にぶら下げている懐中時計を見る。
23時54分。約束の時間まで後6分しかない。
ヒロくんに逢えたことだし、もう行かなくては。
「ごめん、私もう行かなきゃ。」
「 … せっかく、また逢えたのに。」
「ごめん … また、会ってくれる、?」
「もちろんだよ、君がどんな犯罪者だったとしても、俺は君はずっと愛してる。」
かぁっ、と頬が赤くなるのが感じた。
幸いにも、辺りは暗かったのでヒロくんは気づいてないみたい。
「あ、ありがと … また、ね」
「うん、またね。」
______
私はマフィアをしている。
その理由は、
私の大好きな彼の命がかかっているから。
ヒロくんは持病持ちだ。
しかも、かなり厄介な奇病な為、治ることは無いだろうと言われている。そして、5年のうちに死ぬと診断すらもされている。
今の私が所属しているマフィアグループのボスは前職がかなり腕の良い医者兼科学者だった。
その為、マフィアに入ることを条件にヒロくんの治療をお願いした。
しかし、ボスからヒロくんの病気を治してくれる気は一切感じない。
騙されている。
けど、辞めれない。私はもう人殺しだ。 今更辞めたって神様は許してくれない。
それなら少しの希望にかけて、ヒロくんの命が尽きるまで悪人でいてやる。
______
早くしないと。
24時までにターゲットを殺す。これが私の今日の使命だ。
居た!
後ろを向いている、今がチャンスだ。
慎重に銃を構える。
「ふぅ … 」
軽く深呼吸をしてから引き金を引く。
パンッ
乾いた音が辺りに響いた。
貴方の人生を奪ってしまってごめんなさい。
その場で軽く手を合わせてから急いで離れる。
さっきの音で警察が来るはずだ。
そこから私は車に乗り、拠点へと戻る。
今日は一段と疲れた気がする。
次はいつ君に逢えるだろうか、
君の病気が治るまで、私は人を殺していく。
大好きだよヒロくん。
ばいばい~