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「はぁぁぁ」
一人、ベッドの上に倒れ込む。
流星……、いや、瑞希くんと別れて数時間。
何もする気になれない。
バイバイって伝えたけど、本当はもう会いたい。
私ってこんなに意思が弱かったっけ?
「はぁぁぁぁぁ」
枕に顔を埋める。
微かに、瑞希くんの香水の匂いがした。
昨日の夜のことを考えると、胸が絞めつけられる。
身体も反応する、昨日の夜のこと思い出して濡れちゃうとか、私、最低だ。
明日が休みで良かった。
ゆっくりして、気分転換して、また明後日から仕事頑張ろう。
そう思っていた時、ピンポーンとインターホンが鳴った。
インターホンを確認すると
「宅配便の人……?」
ドアを開けると
「お荷物です。着払いなのでお支払いをお願いします」
こんな大きな荷物……?誰……?
送り主の名前を見ると、尊だった。
荷物送るって言ってたな。
着払いで送ってくるなんて、私のこと、ホントどうでもいいんだ。
最後くらいかっこつけてよ。
荷物を受け取り、段ボールを開ける。
そこにはただぐしゃぐしゃに突っ込んだだけの私の洋服や部屋着、タオル、二人で撮った写真やアルバムまで入っていた。
悲しいとか寂しいという気持ちはない。
三年という月日を一緒に過ごした人でも、簡単に別れって訪れるんだな。
写真の中の私はとても幸せそうに笑っていた。
この時に戻りたい、なんて少しも思わないけれど。
夕ご飯どうしよう、食べる気にならないな。
段ボールの中身もあとで片付けよう。
私は再びベッドに戻り、横になった。
ふとスマホを見る。
「あっ、華ちゃんからだ」
<先輩、昨日大丈夫でしたか?やっぱりお酒はほどほどにしないとですね!!また月曜日に話ましょう!>
<昨日はごめんね。ありがとう。また月曜日、よろしくね>
良かった、彼女も無事に帰れたみたい。
アプリで連絡先を交換した人の履歴を見ると「瑞希」のアイコンがある。
顔は写ってないけれど
「これ、瑞希くんのプライベート用のアカウントかな」
いつの間に私のスマホに登録したんだろ。
あの時、他のホストさんたちをブロックしてた時?《《流星》》じゃなくて、《《瑞希》》なんだね。
意外と束縛とかするタイプなのかな。
今日の彼の行動を思い出し、笑ってしまう。
「連絡なんて、できないよ」
私は彼のアイコンからブロックの表示をタップしようとした。
だめだ、できない。
瑞希くんからの連絡をどこかで期待してしまうなんて。
「はぁ」
ため息だけが出る。
何時間経っただろう。
気づいたら眠ってしまっていた。
「えっ。もうこんな時間?」
時計を見ると、二十二時を過ぎている。
ゆっくり寝たはずなのに、すっきりしない。
やっぱりお腹も減らない。
シャワーでも浴びて、好きなDVDでも観ようかな。何も考えたくない。
シャワーを浴びて、部屋着になり、ラックの中にあるDVDを選んでいた時だった。
<ピンポーン>
インターホンの音が聞こえた。
えっ。こんな時間なのに?
誰?尊なわけないよね?
インターホンのモニターに映る人物を見ると――。
「えっ……!」
瑞希くん!?どうして!?仕事じゃなかったの?
どうしよう。
ここで会っちゃったら、もう戻れなくなるかもしれない。
悩んでいると、もう一度ピンポーンとインターホンを押された。
「もう!」
玄関に向かい、ドアを開ける。
「どうしたの?」
家に入れちゃいけない。ここで断るんだ。
「葵。助けて?俺……」
彼はその場でしゃがみ込んだ。
「えっ、どうしたの?大丈夫?」
「大丈夫じゃない」
何かあったのかな。
顔が見えなくて、表情も読み取れない。
「大丈夫?具合悪いの!?立てる?入って」
彼の態度に具合でも悪いのかと思い、私は彼を部屋に入れることにした。
「具合でもわる…」
玄関に入った瑞希くんに壁に押し付けられ、キスをされる。
「ん……。んん」
両手が彼に塞がれているため、抵抗ができない。
「んっ!はぁっ」
何度かキスをした後、彼は私を離した。
「ちょっと、瑞希くん!心配したん…」
彼はギュッと私を抱きしめて
「会いたかった。もう会ってくれないかと思った」
そう小声で呟いた。