アーサーside
「菊に手だすなんて何考えてるんだぞ、」
「なんだ?負け惜しみか?いっちょ前に3年菊といたのに1週間だけの俺より遅れてんのな」
「俺はちゃんと菊の同意を得てやるんだぞ!無理矢理な君とは違ってね」
「無理矢理だ?そう見えたんなら眼科行け。菊もノリ気だったぞ?」
「ノリ気に見えた君の方が眼科に行くべきだよ」
「いやお前がな」
「君がだよ」
あれからアルとは口喧嘩だ。グチグチと、どちらも無駄にプライドが高く引き下がる気配がない。だからマシューが自然と毎回仲裁役に回ってくれるのだ。
「2人共やめなよ…」
「ほら、菊も困ってるし…」
そう言われ、今まで気にしていなかった菊の方に目をやった。その顔は、さっきまでの赤面していた可愛い顔が嘘のように死んだ魚のような目をしながら呆れ返っていた。いや、この顔も悪くないな。あわよくばその顔で踏まれたい……
「Wow、……sorry菊、!」
アルフレッドは申し訳無さそうな顔で謝るが、さっきから自分に寄せたままの本田をもっと寄せ、彼の顔を覗き込んだ。
「…分かりましたから…もう離してください……」
「うー、冷たいんだぞ……」
冷たい態度をとられたアルに、俺は鼻を高くしながら嘲笑う素振りを見せる。
「君……ほんっっといい性格してるよね、」
「お褒めにお預かり光栄だな」
皮肉たっぷりな会話を続ける2人にマシューの大きい器は限界に近づいていた。しびれを切らしそうになるのを抑えたマシューは「とりあえず、アーサーもお風呂入って来て!」と俺の腕を引っ張り脱衣所に放りだした。
「おわっ、!……あいつ、いつの間にあんな強くなったんだよ……」
子供の成長に驚く親のような反応をし、1回冷静になった俺は服を脱ぎ捨て湯船に浸かった。
「っ……はぁ……」
お風呂を上がり、髪をタオルで拭きながらリビングへ向かう。部屋のドアを開け、本田がまだ寝ていなかったことに驚き彼の元へ駆け寄った。
「お前まだ起きてたのか?病人なんだからもう寝ろよ…辛いだろ?運んでやるから」
「ぅ、え…!?あ、そ、そそそうですね…」
「動揺しすぎ」
「よっ」ソファで毛布をかけながら座っていた本田を抱き上げる。「ちょ、おろしてください!」と暴れる彼を止めるように「暴れるならキスするぞ」と少しからかってみる。まぁこのまま暴れてもらってもいいんだが……。それを本気にしたのか、彼は暴れるのをやめ、頬を赤らめた。あぁほんとかわいい。
こちらを睨むアルフレッドを無視し、本田を2階の部屋まで運んだ。
運良くドアが開いていた本田の部屋に入り、彼をベッドに下ろす。布団を深く被せ、上から腹部らへんをぽんぽんと子供をあやすように撫でた。
「……恥ずかしいです……。子供じゃないんですから……」
「熱の時ぐらい甘えていいんだぞ。ほら……一応、俺たち付き合ってるんだろ?」
「……キスは聞いてなかったです…」
「邪魔が入ってガッカリしたか?」
「そ、そんなことは言ってません、!」
頬を赤らめながらそう言う彼に見惚れる。撫でていた手を止め、彼に近づきながら微笑んだ。
「俺はガッカリしたけどな」
「なっ、!?」
さっきよりも赤くなった彼の頬を撫でる。
「……そういうことは、本当に好きな人とやった方が良いと思います……。」
「それがお前だって言ってんだよばか」
「………嘘つき、」
「嘘じゃねぇよ」
ギシッとベッドが軋むと同時に、唇が触れた。
「どうだ?俺とした初キスは」
「……聞かないでください…、」
照れながら下を向く本田を見つめながら「悪い、意地悪しすぎたな」と言い残し、冷えピタと体温計を取りに部屋を出た。
部屋に戻ると、本田は布団を頭まですっぽり被ったまま顔を出さなかった。そのまま放っておくと、流石に息苦しかったのか布団から顔を出し、たまたま俺と目が合う。
「居たなら言って下さいよ……」
「ん?気付いてたと思ったんだがな」
頬を膨らませた彼の額に持ってきた冷えピタを貼った。冷たい冷えピタに耐えるように目を瞑る彼を見届け、体温計を渡す。
「熱下がってるといいな」
「貴方のせいで上がりそうです、」
「ははっ、それは困ったな」
ピピッと体温計から音が聞こえた。モゾモゾと体温計を取り出した本田は俺に「ほら」と俺に体温を見せる。体温計は38.9を示していた。
「ちなみに朝の体温は?」
「39.5です…」
「少し下がったな!」
「ほんと少しですよ……」
唐突に眠気が襲ってきたのか、本田の瞼がゆっくりと閉じそうになっていた。その無防備な姿に口元が緩む。彼の目にかかった前髪を横にかき分け、寝たのを確認してから、こっそり頬にキスを落とした。
「……Good night, honey.」
聞こえるはずも無い言葉を彼に呟き、静かに部屋を出た。
本田side
「菊に手だすなんて何考えてるんだぞ、」
「なんだ?負け惜しみか?いっちょ前に3年菊といたのに1週間だけの俺より遅れてんのな」
「俺はちゃんと菊の同意を得てやるんだぞ!無理矢理な君とは違ってね」
「無理矢理だ?そう見えたんなら眼科行け。菊もノリ気だったぞ?」
「ノリ気に見えた君の方が眼科に行くべきだよ」
「いやお前がな」
「君がだよ」
どんどん幼稚になる口喧嘩を聞きながら、2人に挟まれる。さっきからマシューさんが2人の口喧嘩を止めようとしてくれているが、彼らの目には喧嘩相手しか映っていないのだろう。彼の言葉に耳を傾けることはなかった。
私自身、正直うんざりしてるし、もうすぐでお得意の営業スマイルが完全に崩れそうになるまでだった。
喧嘩がいったん睨み合いに入り、その間を逃すまいとマシューさんが口を開き仲裁してくれた。
「2人共やめなよ…」
「ほら、菊も困ってるし…」
そうマシューさんが発し、今まで、私を気にしていなかった彼らは私の方に目をやる。
「Wow、……sorry菊、!」
アルフレッドさんは申し訳無さそうな顔で謝るが、元々近かった距離をもっと近づけ、私の顔を覗き込んだ。
2人が喧嘩している発端がなんなのかは分からないが、とりあえず風邪が移ってしまわないよう、今更ながら「…分かりましたから…もう離してください……」と離れるように忠告した。
「うー、冷たいんだぞ……」
そんな悲しそうな彼に、流石に冷たかったですかね…?と心配になり、いつもの同情心が芽生える。
「君……ほんっっといい性格してるよね、」
「お褒めにお預かり光栄だな」
なぜかまた喧嘩されてますし……。何なんですかねこの方達は、地雷が分かりません……、頭を抱える私を助けるかのようにマシューさんがアーサーさんをお風呂へと連れて行った。これで当分は落ち着けそうです。
「もう、アーサーもだけど、菊をまんま困らせちゃ駄目だよアル」
「……ん、」
「もう、そうやってすぐ拗ねないの」
君のほうが年上なのに。と零すマシューさんはなにやら手荷物を探りだした。
「ほら、気分転換にトランプでもやろ?」
やっぱり、1番年下の彼の方がよっぽど大人だ。
5回戦ほど遊んだ頃、アーサーさんが風呂から上がってリビングへ入ってきた。
一緒にやりますか?なんて誘おうとしたが、彼は驚いたような表情でこちらに駆け寄ってきては「お前まだ起きてたのか?病人なんだからもう寝ろよ…辛いだろ?運んでやるから」と気遣いをされ、とても言えたような状況じゃなかった。
「ぅ、え…!?あ、そ、そそそうですね…」
運んでやる。と言われ、体を寄せられたことに動揺し噛み噛みになってしまった。さっきのことも無意識に引きずってしまっているのだろうか。アーサーさんに「動揺しすぎ」とツッコミを入れられても無理はない。
「よっ」
「ちょ、おろしてください!」
急に持ち上げられ、人前だという恥ずかしさと悪いと思う謙虚な性格が発言に出た。
暴れて抵抗するが「暴れるならキスするぞ」なんて脅された。さっきまでの出来事を思い出して顔が熱くなる。仕方が無く抵抗をやめるが、彼の思う壺だと思うとなんだか悔しくなる。
そのまま彼に部屋まで運んでもらい、寝かせてもらった。彼は布団の上からぽんぽんと子供をあやすように撫でてきて、ふと昔のことを思い出す。
「……恥ずかしいです……。子供じゃないんですから……」
「熱の時ぐらい甘えていいんだぞ。ほら……一応、俺たち付き合ってるんだろ?」
なるべく意識しないようにしていたが、彼から言われるとどうしても意識せずにはいられなかった。自然と顔が熱くなる。正直な思いを彼に伝えた。
「……キスは聞いてなかったです…」
「邪魔が入ってガッカリしたか?」
「そ、そんなことは言ってません、!」
彼の大胆な発言に頬を赤らめながら否定した。が、彼の行動はそこで終わる訳もなく、撫でていた手を止め、アーサーさんは私に近づきながら微笑んだ。
「俺はガッカリしたけどな」
「なっ、!?」
彼は私の頬を優しく撫でた。
嘘告相手によくそんな事が出来ますね……、ほんと……貴方は本物のたらしです、
「……そういうことは、本当に好きな人とやった方が良いと思います……。」
「それがお前だって言ってんだよばか」
「………嘘つき、」
「嘘じゃねぇよ」
その真っ直ぐな彼の目に見惚れてしまった。そうだ。認めたくなかっただけで、私は彼の事を本気で好きになってしまっていたんだ。無意識に嫉妬してしまうほどに。もう逃げられない。嘘でも本当でもどっちでもいいから。今だけでいいから、
ギシッとベッドが軋むと同時に、唇が触れた。
彼に触れていたい。
「どうだ?俺とした初キスは」
「……聞かないでください…、」
恥ずかしさのあまり、下を向いてしまった。頭から湯気が出そう。
そんな私に「悪い、意地悪しすぎたな」と彼は言い残し、部屋を出ていってしまった。
布団を頭が隠れるぐらいまで深く被った。私が初心すぎてガッカリなされてしまったのでしょうか。そんな不安が頭を過ぎる。
息苦しくなり、布団から顔を出すと、居なかったはずの彼と私の目が合った。きっと、私が気付かっただけで最初からいたのだろう。
驚くと同時にさっきまでの不安が一気に私の頭から消えていった。
「居たなら言って下さいよ……」
「ん?気付いてたと思ったんだがな」
意地悪なのは変わっていないようで。頬を膨らませた私の額に、彼は冷えピタを貼ってくれた。さっきまでの顔の熱が冷えピタによって冷えていく。頭がキィンとする感覚に耐えながら渡された体温計を脇に挟んだ。
さっき部屋を出ていった理由はこれだったんですね。安心したのか、肩の力が抜けた。
「熱下がってるといいな」
「貴方のせいで上がりそうです、」
「ははっ、それは困ったな」
無責任な。というセリフは体温計の音によって塞がれた。モゾモゾと体温計を取り出し、体温を見る。微妙にしか変わっていない体温を「ほら」とアーサーさんに見せつけた。
「ちなみに朝の体温は?」
「39.5です…」
「少し下がったな!」
「ほんと少しですよ……」
安心したからか、唐突に眠気が襲ってきた。瞼が重くなり、流れるまま瞳を閉じる。
アーサーさん、明日学校どうするんでしょうか。アルフレッドさんもマシューさんも。
寝る間際にそんな事を考える。
寝かかった時、アーサーさんが、私の目にかかった前髪を横にかき分けてくれた。
優しい人だなと思考が緩むが、その瞬間、彼は私の頬にキスを落とした。
「……Good night, honey.」
電気が消され、ガチャ。と、彼が部屋から出ていくのを確信する。
え?今のなんですか?はにー?本当好きになっちゃいますよ!?なってますけど!
その夜は落ち着いて寝れたものではなかった。