サイコ系ホラー2話
🕯️『優しいクラスメイト』
「だいじょうぶ? 重そうだね、持ってあげるよ。」
転校してきたばかりの**結衣(ゆい)に、最初に声をかけてくれたのは遥(はるか)**という女の子だった。
黒髪で、静かに笑う子。いつも誰かを気づかってくれる、やさしいクラスメイト。
消しゴムを落とせば拾ってくれる。
忘れ物をすれば貸してくれる。
先生に叱られれば、そっと励ましてくれる。
「遥ちゃんがいてくれてよかった」
そう言うと、彼女はうれしそうに笑った。
「うん。私、結衣ちゃんのこと、ずっと見てたから。」
……その言葉が、少しだけ気になった。
だって、転校してきたのは昨日だったから。
次の日。
机の中に入れたはずの筆箱が、空っぽになっていた。
かわりに、小さな紙切れが入っている。
『心配しないで。全部、わたしが持ってるから。』
その日から、クラスで“あるもの”が少しずつ消えていった。
みんなのえんぴつ、ノート、上ばき、そして……結衣の名前の書かれた物まで。
最後に消えたのは――結衣自身だった。
翌朝、教室の黒板にチョークで書かれていた。
『結衣ちゃんは、わたしの中にいるよ。
だから、もうひとりぼっちじゃないね。』
黒板の前には、遥が立っていた。
やさしい笑顔で、結衣の席に座り、
その机の上に、結衣の筆箱をそっと置いた。
【エピローグ】
春。
新しい制服に袖を通した転校生、**沙耶(さや)**が教室に入ってきた。
「今日からみんなといっしょです。よろしくお願いします。」
拍手のあと、担任の先生が言った。
「じゃあ、沙耶さんの席は――あの空いてる席ね」
そこは、去年、結衣が座っていた席。
沙耶が腰を下ろすと、机の中から小さな紙切れが落ちた。
> 『だいじょうぶ? 重そうだね、持ってあげるよ。』
一瞬、沙耶は顔を上げた。
教室のすみで、黒髪の女の子がこちらを見ていた。
にこり、とやさしい笑顔。
「はじめまして。わたし、遥っていうの。」
その瞬間、教室の照明がわずかにちらついた。
そして黒板に、白いチョークで新しい文字が浮かび上がる。
> 『これで、またふたり。』
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