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サイド ユメ
まだ、梅雨の名残りがあるのでしょうか。
屋内にいても雨粒がはねる音が聞こえますの。
あたくしはその音を聞かないために、耳の中にイヤホンをねじ込みました。
溢れてくるのはあたくしの心を代弁してくれている歌詞と、嘘のない綺麗な歌声が、暗く沈んだあたくしの心に少しだけ光を灯してくれる。
「トキ……」
カーテンを開けて外に降る雨を見つめながらあたくしはそう呟きました。
「あたくしは、いつ救われますの……?」
サイド ユメ
放課後、いつものように帰ろうと思っていたあたくしの手を誰かが掴みました。
「ユメ、ちょっといいか?」
確か……レン、でしたわよね?
「な、なんですの……?」
あたくしは怯えた演技をして、おそるおそるレンの方を見ました。
「いじめの件で話があるんだ。ちょっと校舎裏で話そうぜ?」
「─────!!」
あたくしは少しだけ目を見開きましたわ。
なぜなら、レンの心の中から『なんでユメはこんなことするんだろう』という問いかけがあったからですの。
……行かない訳には、いきませんわね。
「いいですわ。少々お待ちくださりませ」
「なんで自作自演なんてことするんだ?!今、このクラスがどんだけ疑心暗鬼になっていると思っているんだよ?!」
「いきなり本題に入りますわね」
あたくしとしては、そのほうがいいのですけど。「あたくしはあたくしのためにやっていますのよ?」
あなたにはわからないでしょうけれど。
『どうして、こんなことを?!』
「どうして、こんなことを?!」
ドンピシャで心の中を読み取ったあたくしはたまらず視線を下に向けました。
嫌だ。あたくしはあたくしなのに。こんな力を望んだわけじゃないのに……。
「言われなくても、自作自演は今日でやめるつもりでしたのよ」
「!っじゃあ!!」
「明日からは、あたくしが皆さんのことをいじめますわ」
どうせ誰もあたくし自身を見てくれないのなら、これからはあたくしが支配すればいい。
「そんなこと、絶対させねぇ!!」
「……勝手にしてくださいまし」
きっとこの人は、恵まれていたのですわね。
うらやましい、と思うと同時に、妬ましいと思ってしまいますわ。
「せいぜい、”モンダイジ団”という方々とご協力くださいな」
「─────っ!!」
驚いた表情のレンを一瞥し、あたくしは踵を返して校舎裏をあとにしました。