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遅い夕食が終わり、アミとユキは部屋で寛いでいた。
とはいえ、ユキは常に刀を抱き締める様に抱え、部屋から外の様子を伺うかの様に佇んでいる。
“落ち着く間も無いなぁ……”
こんな時だ。敵がいつ攻めてくるか分からない。
でもアミは部屋の中に居る時位、寛いで欲しいと思っていた。
“ユキに気が休まる時があって欲しい……”
アミは無言で佇むユキを見ながら、ふと疑問に思う事があった。
“自分の傷は何一つ治せない”
それは分かる。しかし彼の身体にある無数の傷痕は、つい最近出来たものと言うより、相当古い年月をかけて出来上がったもの。
“四死刀キリトに、その力の使い方を教えて貰ったのだとしたら、キリトから傷を治して貰えなかったんだろうか?”
アミはユキに治して貰った、手の甲を見ながら疑問に思う。
ここに傷があった形跡すら無い程。
「……そういえばユキ?」
“少し聞いてみようと思うーー”
アミは自分の胸の内を話す事で、少しでもユキの抱えている何か、蟠りの様なものが楽になればと思い、話しかける事にした。
ユキは不思議そうにアミの方へ首を向ける。
無機質で無感情、それでいてとても深い深淵の瞳がアミを見据えた。
“まるで、瞳の中に吸い込まれそう……”
アミは思わず、そんな感覚に陥りそうになるが、きちんと彼の目を見据えて聞いてみる。
「えっとね、ユキは身体に沢山の傷があるけど、自分じゃ治せなくても、同じ力を持ったキリトって人に治して貰わなかったのかな? って思って……」
自分でも何を言ってるのか分からなくなる。
「どうしたんです? 突然に」
ユキはいきなり何を言い出すのか? と不思議そうにアミを見つめた。
“私、何を言ってるんだろ!? ユキが呆れちゃってる”
「ごめんね、何でもないの。ちょっと気になったから」
アミは焦りの為か、口ごもってしまった。
“しかも私ったら、ユキが気を失っている間に『身体を内緒で調べちゃいました』って言ってる様なものじゃない!”
アミはそう思うと急に、恥ずかしさのあまり俯いてしまった。
ユキは、ああ……と思い出したかの様に、別段気にする様子も無く、アミの問いに応える。
「この身体の傷の事ですか? 変な事を聞くものですね」
“ああ……やっぱりユキに呆れられちゃっているよ、私は馬鹿だぁ……”
「そうですね。説明しますと……」
アミの思考を余所に、ユキがその訳を話し始めた。
赤くなって俯いていたアミにとっては、ユキが気にもせず話し始めた事に驚いたが、彼の話に顔を上げ、耳を傾ける。
「ーーそう、あれは七年前の事……」
*
ーー生まれてから五年の月日が経過したある日の事。
私は四死刀の一人、星霜剣のユキヤに“とある戦場跡地”で会いました。
自分と同じ、白銀髪と瞳を持つ人。
そして自分と同じ特異能ーー“無氷”を持つ人。
これはとても特別な力と、そう教えられました。
ユキヤが私を拾ったのは、自分以外居ないと思っていた力の持ち主が他にいた驚きと、自分の後継者に仕立てあげるつもりだったのかもしれません。
それ以来、私は四死刀と共に戦場を駆け抜けてきました。
この普段は黒く見える髪色や瞳も、常人として振る舞う為の偽装の賜物です。精神にバリアを張る術、その他諸々。
まあスパルタ教育と言いましょうか?
闘う術や技は、闘いながら学べというのがユキヤの信条でしたから。
正直、これまで何度も死に直面した事も。
ある闘いで深手を負った時の事ですーー
ーー四死刀の一人、魂縛のキリトは、あらゆる傷を再生させる力の持ち主でした。
深手を負った私に、キリトはその力で治癒を試みました。
でも何故か私の傷は再生する事は無かったのです
キリトの特異能ーー“再生再光”
これはとても優れた力で有りながら、その力の持ち主である自分自身には、再生能力が働かない欠点がある事。
キリトは私を調べました。
私にはキリトの持つ、再生再光を保有している事が分かりました。
何故二つの力が有るのか?
私には勿論、彼等にも分かりませんでした。
私にはユキヤと同じ無氷だけ、と思っていましたからーー
…