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高校一年生の夏。

学校から帰宅して、いつものように宿題はそっちのけで、ベッドに転がり友達とメール(当時はまだLINEが無かった)のやり取りをしているうちに、急に睡魔が襲ってきた。

布団にくるまって、しばらく睡魔に抗って返信を打ち込んでいた私は、やがて寝落ちてしまった。


…………


どれくらい経ったか、突然ふと目が覚めた。

周囲は真っ暗で、今何時だろうと枕元の時計を見ようとした。

しかし、寝返りを打とうとしても身体が動かない。あれ?と思っているうちに、だんだん意識がハッキリしてきた。

唐突に、キィィィインと嫌な耳鳴りが始まり、背筋に悪寒が走った。

幼少期から波調が合うと視えたり感じたりしてきた私だが、ここまで全身鳥肌が立つのは初めてだ。それくらい、嫌な予感がする。

そして最悪な事に、意識はあるはずの無いものの方へ向き、足元に小さい『何か』が居ると気付いてしまった。

……気付いた後は、早かった。

小さい『何か』は、私の認識を読み取ったのか、急に猫のような赤ちゃんの産声のような叫び声を上げて、私の脛を小さな手で掴んだ。

やばいやばいやばい、これは真面目にダメなやつだ!!振りほどかないと!!

頭では分かっていても、金縛りに掛かっている私は全く微動だに出来ず、ただ焦るしかない。

ひた、ひた、ひた……と小さい手が足を伝い、這うように腹の上にまで上がってきた。

気合いで振りほどく事も出来ず、ひたすら焦っていた私だが、『何か』が腹部まで来たところで、更に足元に暗闇と同化して人影があるのに気付いてしまった。

暗闇にも目が慣れてきて、人影が男だというのは分かったが、どうする事も出来ない。

そうするうちに、奇声に近い産声を上げる『何か』は胸元まで這い上がってくる。毛のないブニョブニョした頭が見えた。

そこまできてようやくその『何か』が、目の白濁した血塗れの嬰児(えいじ)だと知った。

嬰児と目が合った瞬間、言葉はないが『認知されて嬉しい』という感情に近いものを感じて更に悪寒が走る。

それと同時に、足元にいた男が動いたのが視界に入り、何を思ったのか男は前屈みになると、私の左側の肋骨の上に手を置き、そのまま強く押した。

バキッ……と嫌な音と激痛が同時に起こり、もう何が何だか分からなかった。

声も出せない私の代わりに、ぎゃっ!と短く叫んだのは嬰児の方で、私の胸の上で焼け溶けるように縮み始めた。

血のついた肉の塊が焦げるような変な臭いが充満し、やがて嬰児は暗闇に溶けて消えてしまった。

見下ろす形で肋骨に手を置いていた男は、それを見届けてから、何を言うわけでもなく、無言で同じように背後の闇に消えて行った……。

残ったのは肋骨の激痛だけで、いつの間にか耳鳴りも止み、金縛りも解けていた。

飛び起きたくても肋骨の激痛でゆっくりしか動けず、這うようにしてベッドから下りて部屋を出たのを覚えている。


…………


その後、いつまで経っても痛みが引かず病院でレントゲンを撮った。

医者に「ヒビが入っていますね。ただ……あんたどんなアクロバットな動きしたの?普通こんなヒビ入らないんだけどなぁ」と見せてもらったレントゲンには、稲妻マークに近い形の変なヒビが写っていて、私の肋骨は全治二ヶ月だった。

あんな心霊体験をしたとは流石に言えないので、周りには友達とふざけていて教壇の角に強くぶつけた事にした。


慣れないコルセット生活を二ヶ月続けて、ようやく完治した私の肋骨。

あれ以来あの嬰児が現れる事は一度もなかったが、代わりに肋骨に手を置いてヒビを残して行った男は、時折私が一人でいる時に暗闇に紛れて見掛けるようになった。これといって、男が近くにいる時は鳥肌は立たない。

きっと嬰児が相当悪いもので、男は悪霊を祓ってくれたんだと思うのだが、いかんせん物理的に痛みを伴うのはどうかと思った。感謝はもちろんしているけれど。


レントゲンを撮ると、未だにヒビの痕が若干残っている。どうせならヒビじゃなくて御札とか、そういう物を残して欲しかった。

私が死に呼ばれるまで。

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