テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
🇩🇪「いてて…っ!!!」
目の前には衝撃の光景が目に入ってきた
暴漢は刺した男を見るなりどこかへ走り去っていった。そして俺の弟は刺されたところを押さえて、ふらふらと立ち、そして倒れた
🇩🇪「東ドイツ!おい!おい!なんで…」
東「体が勝手に…動いちゃった…」
笑顔で話しかける弟。しかし口からは血が流れている
🇩🇪「もうやめろ!しゃべるな!今救急車呼んだから!」
東「兄さん…ありがとう…」
🇩🇪「諦めるなよ!せっかく…ここまで来たのに…」
東「愛してるよ…兄さん…未来を…」
🇩🇪「おい!俺より先に行くんじゃねぇ!俺を置いてくな!」
東ドイツは兄の言うことと真反対に、笑顔で目を閉じていった
🇩🇪「おい東ドイツ!起きろよ!諦めんな…よ」
救急車が来る頃には俺はもう諦めていた
弟の体は冷たく、そして笑顔で眠っていた
その後の結果、彼の死因は失血性ショック死で
ほぼ即死状態だったらしい
俺は3日寝込んだ。何もかも忘れ、ただ弟のことを想った
🇩🇪「うぅ…うぅ…なんで…なんで弟が死ななきゃなんないんだよ…」
数日後、弟の葬式が開かれた。東ドイツの死は
東西陣営を大きく驚かせ、葬列にはアメリカ側
ソ連側どちらも参列した
まず初めに、ソ連が挨拶をした
ソ「ゲホッ…私の部下が起こした愚かな行為により、大切な1人の命が失われたこと。
大変申し訳なく思う所存である」
彼は病気ながらも懸命に謝罪したが、当事者の俺は…
なんというかもう呆れていた
弟は巻き込まれたんだ。二大勢力の戦争のない戦争に
彼らが争わなければ弟や俺がこんなことになることはなかったのに…
葬式中俺はずっと、そんなことを考えていた
🇩🇪「俺は期待してない…どうせ人の上に立っても勢力争いに巻き込まれる…俺はそれが
嫌なんです」
親父のトラウマ。そして弟のトラウマ
人の上に立って大きな責任感を負うくらいなら
穏やかに生きる…それが俺の生き様だと決めた
教師「…そうですか」
🇩🇪「わかってくれましたか。俺の気持ち」
体もだいぶ治ってきたので、ベッドから体を起こし、いざ授業に戻ろうとしたその時ーー
教師「ドイツさん…貴方はそのままでいいんですか?変わろうとは思わないのですか?」
🇩🇪「俺に生徒会でも入れとでも?」
教師「違います…貴方は…今いるこの世界に絶望してるように見える」
🇩🇪「当たり前です。小さい頃からこんな経験すれば争いばかりの世界から目を背けたくなります」
教師「…今日の夜、花火が上がるみたいですよ?見に行ってみればいかがでしょう」
🇩🇪「…何のために」
教師「貴方が…再び変わってもらうために」
教師の言っていたことはよくわからなかったが
その夜とりあえず俺は会場に足を運んだ
やはり数年に一度開催されるため大会のため、
何処を見ても人、人、人だった
🇩🇪「こりゃ何処でみればいいんだか…」
見る場所に困っていた俺だったが後ろから
🇮🇹「おっドイツ!いいとこにいるジャーン」
後ろを振り返ると、この祭のために着てきた
浴衣姿のイタリアがいた
🇮🇹「どう?似合ってる?」
🇩🇪「日本から貰ったんだろ?」
🇮🇹「質問に答えて!」
🇩🇪「十分似合ってるよ」
🇮🇹「わーい!ドイツに褒められたー!」
いつまでも忘れないその陽気さ…
俺はとっくに失ってしまったものを持ち続けるその姿は羨ましい
🇩🇪「お前は1人で来たのか?」
🇮🇹「いいや?ゲストもいるんね!」
🇫🇷「あっ!ドイツくん!もう大丈夫なの?」
🇪🇸「この祭りに来てるってことはもう大丈夫ってことでしょ?」
マジかよ…よりにもよってここで浴衣姿の
三銃士が揃うなんて…てかフランスさんの浴衣かわi
🇯🇵「どうでしょう?私特製の浴衣は」
🇩🇪「え!?これ日本が全部作ったのか!?」
🇫🇷「日本君とっても器用でね、私たちのサイズに合うようわざわざ作ってくれたの!」
🇪🇸「その器用さ、学園一だと思うわ」
🇯🇵「もったいないお言葉です」
結果、俺たちは男2、女3の集団で回るようになった。花火のおすすめ場所は日本がとってくれたみたいなのでそこに移動する
移動先は、河川敷だった
でもイタリアとスペインはこことぞばかりに
屋台に夢中、日本に奢ってもらうそうなので
先にフランスと行っててくれと言われた
午前中に抱え込んでいた煩悩は吹き飛ぶくらい今の俺の心には緊張が走っていた
日本が敷いてくれたレジャーシートに俺とフランスは共に座る
花火の予定時間が迫り、人々はざわつき始める
🇫🇷「いよいよだね」
🇩🇪「フランスさん…ひとつ聞いていい?」
🇫🇷「いいよ?」
🇩🇪「貴女にとっての”生き様”って何?」
🇫🇷「難しい質問だね…まぁ答えるとしたら
みんなを導くこと…かな?」
🇩🇪「何故?」
🇫🇷「私の父さんは会社の社長を務めてて…
先の大戦に巻き込まれ、酷い目にあった
だから私はそんな世の中を変えたい
皆んなに戦争を経験してほしくない
だからその前座で生徒会長をやってる感じかな?いずれは公務員にでも…」
「まもなく!花火が上がります!カウントダウン!」
🇫🇷「来るよ!」
「5,4,3,2,1!!」
その瞬間、夜空を覆う煌めく 閃光が大きく輝き、爆音が響いた。花火だ
絶え間なく放たれる花火は一瞬のうちにきらきらと落ちてくる
🇫🇷「綺麗…」
色とりどり、大きさそれぞれの花火はその場にいた人々全員の声をかき消すほど、魅了させた
幻想的な花火、それに感動する人々を眺める俺
🇩🇪「思ったより、嘆く必要ないかもな」
俺が思っている以上に、まだ世界は美しいものに満ちている。この花火や、それに魅せられる人々。ならこの美しさを守らなければならないのでは?
そして弟が最期に残した言葉
「兄さん…未来を…」
そうだ。今までの俺は逃げていたんだ。現実を
勝手に諦め、託されていたのにも関わらず
穏やかに暮らそうという選択をしようとした
俺がしなければならなかったのは、「逃避」
じゃなく、「挑戦」だったんだ
人は利己的な生き物だから、それらが存在する限り争いがなくなることはない
でも出来ることはある。俺みたいに悲劇に巻き込まれた人々が、積極的に伝えていかなければ
ならないと…
🇩🇪「先生…貴方の言うとおりです。俺は…
変わらなければならなかった…だから俺 は
これから進み続けてみようと思います 」
亡くなった人々から、託された未来を
また次の世代に託すためにーー
俺は力強く拳を握り締め、花火を見た
やがて、花火も終わり人々は話しながら帰り始めた
🇫🇷「イタリアちゃん達来なかったね」
🇩🇪「どんだけ屋台に夢中なんだかw」
楽しそうに話す2人。それを陰から見守っていたのは
🇮🇹「やっぱ相性いいんねあの2人!」
🇯🇵「くっ…ドイツさん…幸せに」
次の日、俺は先生に昨日俺が考えたことを
何一つ残さず伝えた
教師「…!それは良かったです」
🇩🇪「いやいや、 先生のお陰ですよ」
教師「まぁ、ドイツさんの気持ちはわからなくもないですよ。私も過去に辛い思いをしたのでね」
先生は話した。先生にはかつて愛した人がいた
最愛の人で、自分の全てを捧げていたそうだ
でもある日、その人は先生ではなく、自分の信念を優先するようになって、やがて離れ離れになった
やがて先の大戦が起こった。先生とその人は敵同士になった。先生は彼を救うため一生懸命に動いたが彼を救うことはできなかった
先生は嘆き、泣いた。もう立ち直れないぐらいに
でもその人が残した一通の手紙が先生の心を立ち直らせた。いつまでも過去にとらわれず、
未来に進む必要があると気付かされ…
🇩🇪「なんか似たような経験してますね…」
教師「それで今の私があるって感じですかね
おっと、もうすぐ授業が始まりそうです
それでは頑張ってください!」
教師は次の授業に間に合うべく、道具を持って急いで教室に向かっていった
🇩🇪「さて!俺も頑張んないとだな…」
今更だが、俺には褒められるほど巧みな会話能力があるんだ。俺の目標を達成するためには
市議会議員とかが向いてるかな…市長に俺の意見が取り入れられば…
「ツくん…ドイツくん!」
🇩🇪「はっ!?」
ずっと考えていて、話しかけられたことに気づいてなかった…。後ろを振り返ると
🇫🇷「もう…無視されたと思っちゃったじゃん」
🇩🇪「ごめんなさい…それで…何の用かい?」
🇫🇷「その…今日の放課後…空いてる?」
🇩🇪「あぁ、全然フリーだ」
🇫🇷「…!よかった!じゃあ玄関で待ってて!」
彼女は笑顔を見せ、満足そうに去っていった
🇩🇪「何するつもりだ…?」
首を傾げる俺。なんか周りの視線が冷たいんだけど…
授業終了のチャイムがなり、俺は背筋を伸ばす
🇯🇵「ドイツさん、お疲れさまです」
🇩🇪「あぁ日本。今日は聞くばかりの授業で
寝そうだったよー」
🇮🇹「ioは寝たんね!」
🇩🇪「どうでもいいカミングアウトすな」
いつもと変わらない日常…前まで俺ならそう思ってた。やっぱり、今ある日常はきっと
貴重なものなんだ。そして失ってはならないものだと…
🇩🇪「やべ!俺用事あるんだった!」
昼間フランスに言われたことを思い出して焦る俺。玄関にいくと
🇫🇷「遅かったじゃんドイツ君。時間に厳しい
君が…」
🇩🇪「いやー…すまんすまん。で、用事って何?」
🇫🇷「いきなりだけど…君の家行っていい?」
🇩🇪「え!?うちケーキ屋だけど…」
🇫🇷「構わないよ。行っていい?」
🇩🇪「んまぁ…オーストリアさんは許してくれるだろうか…」
🇦🇹「どうぞどうぞ!上がってください!」
なんとあっさり受け入れてくれた。それになんか嬉しそうだし…
紅茶とケーキを用意し、ゆっくり上がってくれと言った
いざ部屋に向かおうとしたそのとき
🇦🇹「お幸せに(小声)」
🇩🇪「っ!?///」
夕陽が差し込む部屋の中で2人っきりでティータイム
上品に食べるフランスをドイツは直視できない
🇫🇷「ねぇ…」
🇩🇪「はいっ!どうしました?」
🇫🇷「ドイツ君変わったよね」
🇩🇪「え…俺そんなわかりやすいかな」
🇫🇷「なんか最近ポジティブだよね…」
🇩🇪「俺にも目標というか…生き様が出来たんだ。これだけは絶対に曲げられない生き様をな」
やがてお菓子を食べ終わり、フランスは帰る準備をする
俺はフランスを見送ることにした
🇫🇷「今日はありがとね!美味しいケーキ食べれて嬉しかった!」
🇩🇪「またいつでも来なよ。オーストリアさんも…ノリノリで出してくれるだろうし」
🇫🇷「フフッ、最後に…」
🇩🇪「最後に?」
🇫🇷「J’aime à toi.」
それだけを残してフランスは帰っていった
当然俺はフランスじゃないから彼女が残した言葉の意味がわからなかった
🇩🇪「…?取り敢えず課題やるか」
俺は自室に戻り、出されていた志望先の作文を書き始めた
🇫🇷「…ドイツ君…伝わったかな///」
俺は知らなかった。あの時言ったフランスの
気持ちを…そして、あの言葉の意味を…
生徒1「なぁなぁ、次の生徒会長選挙
立候補者知ってるか?」
生徒2「おお、ドイツとフランスだろ?」
生徒3「いやー…どっちが勝つか楽しみだな!」
生徒1「おい!演説始まるぞ!」
「皆さんこんにちは。生徒会長候補のドイツだ」
さぁ俺の腕の見せ所だ。全て出し切ってやろう