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小さな肩に背負う物
第10話
あれから、フィオナリスを出て数刻が経った。
「マリー。少し、子守唄を歌ってくれ」
人里から離た山道の途中で急に頼まれた。
ん? ここで?
「え、あ、はい」
私は戸惑いつつ子守唄を歌った。
そしたらどこからともなく緑色の龍が飛んできた。その龍の大きさは人を五人乗せられるくらい。
アクアがそのくらいに成長すると考えると少し、寂しくなる。
「ん? 誰?」
アクアがポシェットから顔を出した。
「モスです。今の歌は貴方ですね」
龍が私の方へ向いた。
「はい。でも、何で私の歌で……?」
私は小首をかしげた。
うん。何やら嫌な予感しかしないけど、そうするしか選択肢が残ってない。
「ジークフリートという人が昔、私に言い聞かせてくれた子守唄です。その歌は代々受け継がれていると思います。私の他にも龍はいたが十年程前に仲間が倒れて私だけになったのです」
「え? 他にもいたの?」
アクアが目を見開いて緑の龍の事を見つめている。
「えぇ、十匹程いましたね……その中でも私が最後に生まれた龍だったですけど、よかった。私もあと何年かで寿命が来てしまいます。いくら魔力があるって言ったって寿命には敵いません」
その龍がアクアに魔力を注いだ。
その龍は力無く倒れた。なのにも関わらず、アクアに魔力を注ぎ続けている。
「え? 何してるの? 死んじゃうよ」
アクアが近寄ろうとして落っこちそうになっているところを拾った。
え? どういう……
私はアクアを龍の元へそっと寄り添わせた。
「ねぇねぇ、何で私に命をかけるの?」
アクアが涙目で頭で龍の顔にスリスリしている。
「こんな老龍より、貴方の方が長く生きてこの地を守れる。それに、生まれつき体が弱い貴方は二百年も生きられなかったでしょう。きっとこれで、千年は優に生きられるはずですよ」
「え?死んじゃうでしょ。辞めてよ」
アクアはまだまだ純粋なので、深い意味を分かっていない。
「貴方は将来有望です。この地、カルダに栄光を…」と言い残して瞼を閉じた。
「ねぇ、起きてよ。やめてよ。何で、何で……私ひとりぼっちだよ…」
アクアの小さな瞳から一通の涙が流れた。
……まだ理解はしなくてもいいけど……アクアは……
私はアクアの元に寄って「アクアはひとりぼっちじゃないよ。私がいる」と言い聞かせた。
「え?じゃあ、私はマリーを残すの?」
あ、そういう……私はアクアを残していってしまうんだ……
「うぅん。私の方が先に居なくなる。だから今を大事にしよ」と私は無理無理口角を上げた。
「……うん。そうだね」
アクアは、ぎこちなく歩いてから私の事をスリスリした。
「……アクアだけなのか……他の卵も孵化させるか……」
何やら嫌な予感を匂わせるような事をゲッツさんがぼやいている。
え? 嘘でしょ? 生後一ヶ月過ぎても夜中に五回起こされるのに…
そしたら不眠で死んじゃうよ…
「マリー?」
アクアが私の事を心配そうに見上げている。
「あ、大丈夫だよ」
頭を撫でてやった。
「…マリー。アクアは何色に見えるか?」
眉間のしわを深くしたゲッツさんが私に視線を移した。
え? 何色って…
私は集中してアクアの事を眺めた。
そしたら青と水色の中に緑も混じっていた。でも分離していて決して混じってはいない。
「いつもの青と水色の中に緑もあります。分離しているようにも見えます」
「そうか。ならいいんだが…」とゲッツさんが顎に手を当てて考え込んでいる。
え……嫌な胸騒ぎがヤバいのですが……
「ん? って事は師匠も見えなかったという事……?」とカールが当然の事のようにボヤいた。
え?それって私にやらせたってことだよね…
「はぁ〜……カールは黙っておけ。モスはきっと、死んでしまったのだろう。このままにしておく事は出来ない。アクアはどうしたいか?」
ゲッツさんがよく分からなくて首を傾げているアクアに向かって質問した。
「え? もちろん助けたいよ」
「……そうか。助けたいか……」
ゲッツさんが生暖かい目でアクアをみた。
まだ産まれてから一ヶ月弱しか経っていてないんだから……でも、今はアクアの意見を尊重しなくちゃいけないんだし、ゲッツさんは合っている。
でも、こんな事に巻き込まれているアクアは理不尽だ。う〜ん。ムズいな……
「助けるの出来ないの?」
アクアは真実に近づいているのに……あぁ〜。もぅ……なんて言えば……
「まぁ……そうだな。だが、このまま放っておいたら誰かが悪い事に使うリスクが出てくる。これはアクアに決定権がある。放っておくか、学校の共同盆地に入れるか」
ゲッツさんは真剣な眼差しをアクアに向けた。
「共同盆地って何? それをしたらどうなる?」
「共同盆地は沢山の人が利用するから安全だが、学校でアクアの存在がバレるだろう。マリーがユッタに頼み込んでお昼は世話を焼かれていて他の人にはバレて無かっただろ? それに、それがバレたら部屋に龍を一目見たいと人が押し寄せるだろう。アクアはどうしたい?」と少し分かりやすく解説している。
う〜ん……私は盆地に入って欲しいけど……
「う〜ん……そしたら共同盆地かなぁ……でも、マリーは困らない?」
「大丈夫だよ。アクアのやりたいようにやって」と微笑んだ。
「……そしたら、共同盆地にする。それしたら悪い事に使われないでしょ?」とアクアがモスの事を見つめている。
それからゲッツさんが魔法学校へ手紙と一緒に人目のつかない使われていない空っぽの倉庫に移動したと言っていた。