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ご本人様方とは一切関係ありません
犯罪組織と戦うメンバーさんの、戦闘パロ のお話です
決して丁寧な運転とは言えなかったが、急ブレーキと急発進だけは気をつけたつもりだ。
衝撃が加わるとしょにだを余計に苦しめることになるだろうから。
病院に辿り着き、あにきはすぐに借りてきた担架でしょにだを運び入れる。
「俺は初兎にかかりっきりになるから、りうら、ほとけ頼むわ」
てきぱきと指示をしながら、あにきは最後に俺の方を向いた。
「まろは…一旦ないこ連れて帰って」
「…ん」
「落ち着いたら連絡する」
身を翻して、あにきは素早く担架を滑らせながら院内に消えていった。
それにほとけも走ってついていく。
「りうら、行かんの?」
そこに立ったままだった最年少に声をかけると、あいつは車の中を一瞥した。
車内には一人取り残されたないこが顔を伏せて座っている。
それを見てから、あいつは赤い髪を困ったようにかきあげて俺を見据えた。
「…まろ、りうらさ」
どう伝えればいいのか迷っているらしく、一度不自然に言葉を切る。
「ないくんじゃ…ない気がしてる」
「…え?」
思わず聞き返して、りうらを見下ろした。
「あれからずっと考えてた。あの時…何でりうらは殺されなかったんだろう? りうらを生かしておく理由なんて、あいつらにはないはずなのに」
「……」
「『ないこに報告しろ』ってあの言葉を…りうらにわざと聞かせたかったのかもしれないって思えてきたんだ」
「……何のために?」
「ないくんを陥れるために?」
自分でも自信がもてないからか、疑問形でりうらはそう答えた。
だけどすぐに「だからさ」と続ける。
「まろ、ないくんを守ってあげて」
まっすぐな言葉は懇願するように響いた。
りうらはもう一度車内のないこを振り返ってから、苦笑いを浮かべる。
「ほとけっちも、ちょっと頭が冷えれば大丈夫だと思う」
「……そうやな」
今は多分、しょにだがやられたことで気が動転しているだけだ。
「ほとけはりうらに任せるわ」
「うん。じゃあまろも気をつけて」
「ついでにお前もこの前の傷、ここでちゃんと診てもろたら?」
揶揄するように言うと、りうらは微かに笑って手を振りそのまま歩いて行った。
「ないこ」
運転席に戻り、後ろのないこに声をかける。
ビクリと肩を揺らしたあいつは、顔を俯かせたままこちらを見ようとはしなかった。
よっぽどショックだったんだろう。
「とりあえず、一旦帰ろ」
いつもみたいに髪を撫でようとして手を伸ばす。
だけどその手が血に塗れていることを思い出し、俺はピンクの髪に触れないまま自分の手を引き戻した。
家に戻ってすぐ、それぞれシャワーを浴びた。
爆風で浴びた塵や埃、そして血を洗い流す。
風呂場から出てきたないこは、変わらず顔色が悪かった。
ほとけに言われた言葉を気にしているのか、しょにだのことを心配しているのか……恐らくどちらも、だろうけど。
「…まろ」
リビングのソファに座ったないこが、そう呼びかけてきたのはどれくらいたった頃だっただろう。
キッチンでコーヒーを淹れていた俺はその声に顔を上げた。
「…ほんとに…俺じゃないんだ」
いつも自信に溢れていて、楽しそうにしているないことは思えないような細い声。
「…うん」と小さく応じて、俺は淹れたばかりのコーヒーをないこに手渡した。
「でもやっぱり…俺だけ『家族』にはなれてなかったんだなぁ」
ほとけの「誰かが情報を漏らすとしたら、このチームには一人しかいない」と言った言葉を思い出しているのか、ないこは少しだけ遠い目をする。
「あんなん口から咄嗟に出ただけやで」
「……」
俺から受け取ったばかりのコーヒーカップを、ないこは口をつけないままテーブルの上にそっと置いた。
湯気の立ち上る様を見るとはなしに眺めて、吐息を漏らす。
L字型のソファに、ないこと90度で並ぶ形で俺も座った。
膝が触れ合いそうなほど近くでその目を覗き込むと、ピンクの瞳が困ったように揺れる。
「…まろは…どこまで知ってんの?」
そう尋ねる声は、今にも震えそうで。
「…さっきの、りうらがやられた時に敵がないこの名前を出したって話と」
答えながら、自分でも無意識のうちに手を伸ばしていた。
膝の上でぐっと握りしめているないこの手に重ねる。
「あと、ないこがほとけのパソコンからデータをコピーしたってこと」
「……」
「そんでそれが、お前の昔の恋人のデータやってこと」
「……」
俺の手の下で、ないこが更に拳を強く握りこんだ。
手の平に爪が食い込んでしまいそうなくらいに力をこめているのが分かる。
「全部話せる? 何があったん」
手にこれ以上力を入れさせないために、俺はないこのそれを持ち上げた。
細い指を開かせ、自分のそれと絡める。
「……恋人、じゃない」
ポツリと、だがはっきりとないこはそう告げた。
今度は絡めた指が離れないようにか、グッと力をこめる。
「恋人に…なれてたら、こんなことにならなかった」
続いた言葉に、俺は眉を寄せてその目を見据えた。
そんなこちらの視線から逃れるように、ツイとないこは目線を逸らす。
「噂が一人歩きしてる。デマだよ、それ」
自嘲気味な笑みを皮肉に浮かべて、ないこは肩を揺らした。
「あれでしょ、『ないこは前のチームでリーダーと恋人同士で、その恋人は死んだ』ってやつ」
返事もせずに耳を傾けていただけの俺に、ないこは構わず言葉を継ぐ。
「嘘だよ、それ。恋人じゃないし『あの人』は死んでもない」
それからゆっくりと顔を上げ、悲しそうに笑ってみせた。
「誰にどう言われても別にどうでも良かったから、噂なんて放っておいた。だけど…」
一度言葉を切って、胸の痛みに耐えるかのように目を固く閉じる。
「まろにだけは、聞かれたくなかったな」
それが1番の本心なんだろう。
苦しそうな表情を浮かべるものだから、俺は指を絡め直した。
「あの人…『元リーダー』はさ、俺のちょっと先輩で、面倒見がいい人だった」
ポツリと話し始めたないこは、もう片方の手もこちらに伸ばしてきた。
言外に求められるまま、俺はその手も握り返す。
「軽薄そうな見た目に反して、真面目で優秀な人だったよ。…だからこそあんなことになったんだと思う」
「…『あんなこと』?」
尋ね返した俺の声に、ないこは小さく頷いた。
「好きだって言われたことがある。だけど俺は、あの人のことをそういう目で見たことがなくて」
「…拒んだ?」
「……うん。でも諦められないって言われて」
ないこの細い指が、またグッと力をこめる。
「でもいつからか…おかしくなった。新人だった俺は、そのときめちゃくちゃ努力して強くなろうとしててさ」
当時のことを思い出しながら、ないこは少しだけ遠い目をした。
「自惚れるわけじゃないけど、チームの誰よりも…そのリーダーよりも、組織に実力を認められるようになった」
「……」
「そしたらさ、言われたよ。その能力に嫉妬するって。自分を簡単に超えてしまう才能が憎いって。でも好きで好きでたまらなくて、どうしたらいいか分かんないって」
羨ましさと愛しさの歯車が噛み合わず、憎しみまで募ったということだろうか。
そんなことを思いながら聞いていると、「そんなん俺の知ったこっちゃないよな」と、ないこはまた自嘲気味に笑った。
「ある時さ、…あ、俺とあの人は同じ部屋で暮らしてたんだけど…夜中苦しくて目が覚めたことがあって」
何となく嫌な予感がして、ざわっと背筋を冷たいものが駆け抜ける。
「目を開けたら、暗闇の中であの人に馬乗りになられてた」
「……」
「さすがに可愛さ余って憎さ百倍、みたいな感じで殺されるか…ヤラれるかと思った」
「…違うん?」
「そこがあの人の狂ってるとこなんだよ。『苦しい』って言ってた。『こんなに好きなのに』って。『どうして俺を見てくれないんだ』って。そんであの人の行き着いた先はさ」
当時のことを思い出すと心臓が早鐘を打つのだろうか。
息を整えるように深呼吸を一つしてから、ないこは言葉を継いだ。
「俺の上で、自分の首を切って死のうとしたんだよ」
そう告げる語尾が、少し震えていたのは俺の気のせいじゃないはずだ。
「生々しい温かい血が、自分に降り注いだときの感覚と匂いがいつまでたっても頭から離れない。自分のせいで狂った人間がいて、自分のせいで死のうとした人間がいて…ただ俺が、『彼を好きになれなかった』ってだけのことで」
だから…さっきの「恋人になれてたらこんなことにならなかった」という言葉が出たのか。
「それからだよ。夜中に目が覚めたとき、真っ暗だとあの時のことがフラッシュバックする。暗闇の中で自分にのしかかるあの重みが蘇ってくる。あの人の悲痛な声と、生暖かい血の感触と」
「それが…あのパニックの原因か」
尋ねた俺にないこはコクリと頷いた。
「すぐに処置して、何とかあの人は一命をとりとめた。でもうちのチームは解散。他のメンバーには好かれてたから、何人か引き連れてそのまま組織から出て行った」
それからどうしてるのかは知らない、と小さく付け足す。
「俺はしばらく休暇とって…その後組織の命令でこのチームのリーダーに抜擢された。正直また誰かと深く関わるのは怖かった…けど、ここの皆はいい奴であったかくて」
俺が握る形だった手を一度ほどいて、ないこは指を絡め直した。
今度は自分がリードするかのように俺の指先を包み込む。
「仲間で家族で…って、俺も皆とそんなふうになりたかったんだけどなぁ…」
ズッと鼻をすすって、ないこは独白のように呟いた。
そしてそれから、思い出したように続ける。
「それと、この前まろに言われたスマホのこと」
言われて「あぁ…」と思い出す。
あの時、スマホを見て顔色を変えたないこ。
その後明らかに動揺していたのを覚えている。
「…これ」
ポケットからスマホを取り出し、ないこは画面を操作する。
そして一つのメッセージの画面を出し、俺の前に差し出した。
そこに書かれていたのは、シンプルに一言。
『もうすぐ迎えに行く』
差出人の名前はなかったけれど、ないこにはすぐに誰からのメッセージなのか分かったんだろう。
「これ見て、怖くなって…あの人がここまで来るかもしれない。皆まで巻き込んで、何かやらかすかもしれない。それと…」
スマホを握りしめて、ないこはまた目を伏せる。
「やっぱりまろには、知られたくなかった。あの人とのこと全部」
ぽつりと呟いた声は、今にも震えそうだった。
「皆に知られないうちに、何とか手を打てないかって思った。組織のデータなら、今あの人がどこで何をしてるのか分かるかもと思って…」
「…それでほとけのパソコンからデータを?」
「…うん。結局除籍されたところまでしか情報更新がなかったから、何も得られなかったけど」
俯きがちのピンク色の頭を、小さく横に振る。
「…正直、まだ怖い。これから何が起こるのか…。りうらやしょうちゃんを傷つけたのもきっとあの人で…」
「…ないこ」
呼びかける俺の声すら、ないこは無視する。
りうらとしょにだの痛みと苦しみを想像したのか、険しい顔で目をグッと瞑った。
「ほとけっちの言う通り、全部…っ全部俺のせいだ…っ」
「ないこ!」
一度離した手を伸ばして、今度はないこのその細い体を抱き寄せる。
後頭部に手を回し、支えるようにして撫でるとないこはもう一度スンと鼻をすすった。
泣きそうになる声を飲み込み、ぎゅっと俺の背に腕を回す。
「もうええよ。…話してくれてありがとう」
なだめるように言うと、まるでしがみつくように腕に力をこめてきた。
「…自分勝手だって分かってる。これだけ皆を巻き込んで…しょうちゃんがあんな目に遭ってるのに、俺だけ呑気にしてていいわけがない」
でも、とか細い声が続ける。
「好きなんだよ、まろのことが…っ。好きになっちゃダメだって言われたけど、でも俺、もう好きじゃなかったときには戻れなくて…っ」
悲痛な声は、ないこの心からの叫びだった。
「…うん」
分かってると言うように、俺は一つ頷いて返す。
そしてそれから、ないこの言葉を遮るようにその口を唇で塞いだ。
触れて押し付けるだけのキスに、あいつは目を大きく見開く。
「ま、ろ…」
「辛かったよな…大丈夫。もう、全部終わるから」
唇を離して、俺は静かに微笑んでみせた。
「やっと…全部話が繋がった」
呟きながら笑みを浮かべる唇が、醜く歪むのを自覚する。
「大丈夫やで、ないこ。もうこれで苦しいのも辛いのも最後やから」
ないこを抱き締め、その首元に俺は額を寄せた。
「…まろ?」
俺の呟きの意味を図りかねて困惑したように呼びかけてくるないこの声が、耳朶を打つ。
「ごめんな、ないこ」
抱き寄せる右手に、ぐっと力をこめた。
そして左手は自分のズボンのポケットの中を探る。
自分でも驚くほどの低い声だった。それと同時に、ないこが腕の中で「え」と声を漏らす。
「裏切り者は、俺やねん」
顔を上げ低く甘い声で囁いた次の瞬間、俺は左手に持った注射器をないこの首に深く深く突き刺した。
コメント
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赤さんも桃さんに対してして怪しがってないんですね...桃さんの過去が想像を遥かに超えてきて考えると首を切って血が落ちてくるのは恐怖でしかないです...😖😖 青さんが慰めるのかと思いきや注射を刺すなんて...このシーンイラストにしてみたいくらい大好きなんです、!! どんでん返しすぎてどうしたらこんな発想になるのかあおば様の頭の中を覗いてみたいくらいです...、!!
青桃のいちゃいちゃやと思ったら青さんの告白にびっくりしました!最後青さんは桃さんに何を突きつけたんでしょうか…? 桃さんの過去もつらいですね…でも桃さんもメンバーのこと思いやっててめっちゃいい人!
ええぇ"えぇ"え"" 急展開すぎてびっくりしています…!? 青さんが桃さんにKissしたときにイチャイチャするかなと思ったら青さんが「裏切りものは俺やねん」 急に白状し始めてもう色々パニックっています…、 次回めっちゃくちゃ楽しみにしています𐔌՞⸝⸝ʚ̴̶̷̷ · ʚ̴̶̷̷⸝⸝ ՞𐦯