──それぞれが好き勝手に話して、思い思いに飲んだりしている中、三日月が時折テーブルを片付けたり、お酒のおつまみが減った分を少しずつ足したりしていた。
そこは、なんだかとても居心地がいい雰囲気で、他のお客さんが誰もいないという、まるで友達の部屋みたいな気兼ねのなさも手伝って、私は一杯、二杯と飲む内にだんだんと酔いがまわってきていた。
「銀河ー、そういえば、まだサングラスしてるじゃない? お店では、はずすって言ってたでしょ?」
酔ってちょっとだけ気が大きくなってきた私は、ずっと気になっていた銀河のサングラスに手を伸ばした。
そのまま外そうとすると──、
「あっ…!」
と、天馬と流星とが同時に声を上げた。
そのいかにもワケありそうな雰囲気に、思わず手を止めて、いくら酔ってるとは言え失礼なことをしてしまったのかもと手を引っ込めて、銀河の顔を申し訳ない思いで見やった。
銀河はフッ…と軽く笑って、私が取り外そうとしたサングラスに自分で手をかけると、
「ま、はずすって言ったしな……」
そう口にして、目の前でスッと取って見せた。
……外されたサングラスの奥にあったのは、あまり見たことのない、淡く色づいた、紫の瞳だった。
「その色……」
カラコンなのかもと一瞬思ったけれど、それならサングラスをわざわざする必要もないように思えた。
「……俺、生まれつき軽いアルビノなんだよね」
と、銀河が口を開いて、
「アルビノって知ってるか? 先天的に色素が薄い突然変異みたいなもんで、それで目の色とかもこんな風で。光にけっこう弱いんで、サングラスは必需品ってわけ」
そう淡々と私に話して聞かせた。
「ごめんなさい……。私、気づかいが足りなくて……。そのためのサングラスだったなんて……」
「ああ、いいって。俺は軽度のアルビノで、生活に支障が出るほどでもないしな。おまえが気にすることなんて、なんもねぇから。だからこれぐらいの灯りなら問題はないし、もともと取るって約束だったんだしな」
サングラスをスーツの胸ポケットに差し込むと、銀河が心配するなとでも言うように、私の頭をポンポンと軽く叩いた。
「ちなみに、この髪の色も自前な」
と、薄く色の抜けたプラチナブロンドの髪を、銀河が指先で摘まんで見せる。
「銀河がてめぇのこと話すなんて、珍しいじゃん?」
流星が吸っていたタバコの煙をふぅーっと吐き出して、口をはさむ。
「ホントに~。銀河が自分から話すなんてこと、めったにないのにね」
天馬が無邪気そうにも感じられる笑みをふわりと浮かべて、
「もしかして、理沙に気があるとか?」
どこか思わせぶりに首を傾げた。
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