わかりにくい彼とわかりやすい彼

💙side

🖤康二に聞いたんだけど、阿部ちゃんとあんまりうまくいってないんだって？

ダンスの練習でメンバーが集まっている日の昼休みに、いきなりめめにそんなことを言われて俺は離れてこっちを見ている康二を睨んだ。

康二は手を合わせてごめんなと口パクで言っている。

どこが口が固いだ。

ガバガバじゃねぇか。

💙うまくいってないわけじゃない…けど

🖤俺でよければ話聞くよ？

💙最近阿部とすれ違ってる気がしててさ

🖤そうなの？阿部ちゃん呼んでくる？

💙いや、もう、それだけは本当にやめて

🖤……わかった。じゃ、俺に話してみて？

💙阿部がさ？子供とかさ、どう思ってるんだろうって思っちゃって

めめは康二と違って信用できる気がしたので、俺はいきなり本題に入った。

🖤子供？子供って、どの子供？

💙俺と付き合ってたら、阿部、パパになれないよなって思って

🖤この間の番組のこと言ってる？それスノの

流石にめめは察しが早い。

もしかしたらめめも同じ悩みを持っているのだろうか。

俺が窺うような目つきをしたのに気づいたのか、横に立っていためめが、隣りに腰を下ろした。

🖤それは深刻な問題だね

そう言うと、あくまで俺の意見ね、と断りを入れてから、めめは康二とのことを話し始めた。

🖤去年、俺がやったドラマ覚えてる？

💙海のはじまり？

🖤そう。あれ見た康二と喧嘩になってさ

💙そうだったんだ…

🖤宥めるのに結構苦労したんだよね

💙康二も…

俺は康二とめめが、俺たちより先にもうその問題に直面していたとは思わなかった。

めめはさらに続けた。

🖤俺は康二と付き合うまで子供が欲しかったし、普通の結婚もしたかったんだよね

💙うん

🖤でも、康二を見てるうちに、そんなのもうどうでもいいじゃないかって思ったんだ

💙子供、欲しくないの？

めめは、笑って言った。

🖤今はほら、養子縁組とかもあるし。どうしても欲しかったらそういう方法もあるでしょう？

💙……

🖤それに俺は、康二がいつまでも隣りにいてくれて、笑っていてくれればそれが俺の一番の幸せかなって思う

💙……

🖤子供がいても、康二がいなければ俺は幸せじゃないから。それが、俺たちの出した答え。

💙いいなあ

🖤しょっぴー？

💙いいなあ、康二は。そこまで想ってもらえて……

俺は感動して泣いてしまった。

めめに優しく慰められて、抱き寄せてくれためめの体温が温かくて。康二がそれに気がついて、俺をからかいに来るまで俺はずっと泣いていた。