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“回帰”から”遡行”に変更。閑話 : 第一章 7.5 を投稿した後に第一章 1~5の部分を修正します。

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「俺は『錬金術師』だ。ってもそこまで練度は高くねぇから強い武器等は作れねぇけどな」


「―――………錬金術師、ですか」


男の発言を聞いても尚、体は拒絶反応を起こしている。

本当に錬金術師だとしたら、超火力が出せる猟銃を錬成出来てもおかしくない。だが、この男は一度『魔術師』と名乗った。

10年前、東京で起きた大規模魔法事件は『未知の災害』と言う態でメディアに公表したが、その後組織内の会議にて『魔術師による虐殺』と真実を公表した。

その為、テレビや新聞等で事件を知っている人間は『魔術師』の存在を認知している。この男が知っていても当然。それでも、


「僕は魔術師を殺す為に行動しています、貴方は自らを『魔術師』と名乗った。”冗談”と言われても信用出来ません」


地面に着いていた膝を上げて僕は言う。心臓の鼓動が早くなり、手が震える。もし本当に魔術師なら、この森で戦闘を開始しなければならない。

それだけは勘弁だ、この森はおかしい。狂っている。


「……分かった、分かった。証拠を見せてやるよ」


そう言って男は地面に手を着く。

僕は距離を取って男の様子を伺う。”錬成”では無く”攻撃”だった場合を考慮しての事だ。

男の辺りに稲妻の様なモノがバチバチと音を出して現れる。触れている部分のみを残して半径5メートル程、円形に地面が抉れる。

瞬間、男は立ち上がって惣一郎と同じ”錬成”のポーズに入る。厳密には惣一郎と手順が違うが、僕には善し悪しが分からない。

稲妻だけではなく火花まで散り、黒くて大きな何かが完成する。それは銃でも剣でも無い、


「こいつぁ俺の最高傑作だ。どうだ、これで錬金術師って事が証明出来たか?」


パラレルツインバイク、W800だった。

外見は本物同等、鉄を一切使用していないのにこの完成度。


「……まだ少し疑ってるが…あぁ、錬金術師で間違いない」


こんなモノ錬成されたら、認めざるを得ない。僕の負けだ。


「疑って悪かった。それであなたに頼みたい事がある。僕を、元いた場所まで連れて行ってくれないか」



走行音が森の中で響き渡り、木々を避けながら2人を乗せたW800が凄い勢いで走る。

互いに口は開かず数分が経過したが、男の方が先に痺れを切らして口を開いた。


「聞きたい事がある。さっき”何も言うまい”と言ったがやっぱ気になるから聞かせてくれ。兄ちゃんはどうやってここに来た」


魔術師では無い信頼出来る人間とは言え、この事を彼に伝えるべきなのか正直迷ってしまう。惣一郎の事も、僕の妖術師の事も全て洗いざらい話さなければならない。そうしなければ彼は納得しないだろう。それに、彼には”嘘”を見抜く能力を持っている。

それでも”遡行”を知られるのは避けたい。なるべく、能力に引っ掛からない程度で。そうして僕は、”遡行”以外の能力や出来事を全て話した。


「―――って事だ。これが今まで起きた出来事の全てと言っても過言では無い」


説明を聞いた男は少しだけ黙り込む。その意図を把握する事は出来なかったが、直ぐに分かった。


「…………お前さん、隠してることあるよな?俺の”能力”が反応してる。まぁ…言わなくても大体予想は出来るが」


僕の”遡行”に気付いている。


「”死んでやり直す”。死ぬことによって時間、あるいは精神が遡る。”遡行”する能力を持っている。どうだ?」


「………………………―――合ってる」


「”嘘”じゃないな。それで、お前さんは恐らく生死不明の友人―――惣一郎?を助けに行こうとしてるんだよな?」


「……………―――そうだ」


「それも”嘘”じゃない。それなら俺に言える事は『いまここで遡行した方が速い』って事だ。遡行の能力がどんなのか俺には分からねぇが、大体戻る場所(ポイント)………”ターニングポイント”が決まってるんだろ?そして度々その場所が不定期で更新される。だから、場所がこの森の中にならないように速く遡行した方が良いって事だ」


「…………―――。」


「……………………―――兄ちゃん。次会った時、俺に全てを話せ。少しだけ時間が掛かるかも知れねぇが全て把握するだろう」


突然バイクのブレーキをグッと押し込んで急停止する。その儘、男は振り返って片手で持っていた猟銃を僕の頭部に当てて、


「ほら、行ってこい。妖術師―――お前だけが護れるモノを絶対に離すな」


「向こうの俺に宜しくな」










焼き焦げる様な匂いと共に僕の意識は覚醒する。

結界はいとも簡単に突破され、要塞化したコーヒーショップに男は足を踏み入れる。

惣一郎は顔色一つ変えずに右手で構えていたワルサーP38を発砲。恐ろしく速い弾丸はそのまま男の頭蓋を貫通、

する訳が無く。男の頭手前で静止した、憶測だが魔術師『空間支配』が大きく関わっているのだろう。

惣一郎は間髪入れずに残りの七発を発砲。しかし全て同じ方法で止められ、男は無傷で再び歩き出す。

コツコツと靴音が響く。僕の頬に汗が伝い、惣一郎は既に錬成していた別の銃を取り出して発砲する。


“ターニングポイント”が更新されている。そこまで長い時間あの森にいた訳では無い。それなのに、


「なぁ、それの何が楽しいのか俺にはちっとも理解出来ないな。俺は弾丸を全て止めてるのに君はずっと撃ち続けている。無意味無駄無謀だと思わないのか?」


「―――よく喋る男だ」


男と惣一郎の声が聞こえる。この台詞を聞くのは2度目だ。

いや、今はこんな事を考えている場合では無い。それよりも先にやらなければならない事が僕にはあるだろう。”空間支配”の弱点を見つけなくては。

まず、男は自分の周りの空間を歪めて弾丸を止めれる。故に通常攻撃は届かない。だがあの時、僕は男の腕を斬った。断ち切る事に成功した。止める事が可能な攻撃をワザと受けて僕をあの森に転移させた。


「―――と言うことは、空間を歪めるのと転移させる魔法は同時に展開出来ない」


確かにあの時、眼球を転移させていた時は惣一郎の攻撃は停止していた。その一瞬で魔法を切り替えたのだろう。

攻撃をし続ければ転移魔法が使われる事は無い事が分かったが、その代わりに通常攻撃が効かない。為す術が無いのだ。僕の妖術を用いたとしても攻撃を貫通させる事は不可能に近い。

だからと言って、転移魔法を使わせる訳には行かない。またあの森か別のどこかに送られるかもしれない。通常攻撃が効くとしても危険すぎる。

ならやはり、効かない攻撃を永遠と続けるしか無いのか。


「…………残弾が少なくなってきたな。君にいい事を教えてあげよう。”取っておき”を見せてやる」


惣一郎の”ブラフ発言”。このままではまた同じような結果になってしまう。それを恐れた僕はフルスピードで脳を回転させる。

二つの魔法を切り替えるという事は意識的にやっている事なのか否か。通用する妖術を一通り脳内で調べる。惣一郎の行動の変化。あの森で出会った錬金術師。”遡行”。転移魔術の限界範囲はどれくらいなのか。妖力の残量を全て使い切って男を殺せるのか。男の正体。『空間支配』。勝つことが本当に出来るのか。

僕はその全てを知りたい。知らなければならない。

この場を切り抜ける為には成長しなくては―――


「―――千里眼」


千里眼。あらゆる万物を一目見ただけで全てを透視、把握、解析、鑑定出来る術、発動。

僕はこの技が使えなかった、理由は分からないが使おうとすると脳の神経が焼き切れるかのような痛みが襲う。それ以来、千里眼を使おうとは思わなかった。

だが、今なら使える。脳と僕の身体が情報を求めている。千里眼から流し込まれる全てを受け止められる。


「…………そう言う事か」


『空間支配』を解析、鑑定。

男の空間を歪ませる魔法。あれは空間を歪ませているのではなく、弾丸と男との間の時間を遅らせている。弾丸との距離1m、着弾するまでの時間は5分。故に、遅らせるより速い速度で攻撃すれば届く。

転移魔法は展開する前に居た半径5mの人間をランダムで移動させる事が可能。転移の条件は能力保有者本人が”敵”と認識した相手に向けて片手を向ける事で転移させることが出来る。

つまり、”敵”と認識されていない状態で遅いを上回る程の速さで攻撃をする。

それが可能な武器を僕は”知っている”。

身を潜めていた場所から飛び出して床に落ちていた紙を拾い、大急ぎで”その武器”の構造を書き上げる。記憶でさえも僕の千里眼は発動する。

書き終わった紙に妖力を乗せてフリスビーの様に紙を惣一郎に向かって投げる。”日本最強の錬金術師”にこれが造れない訳が無い。


「惣一郎さん!その”武器”より更に強化されたモノを錬成して下さい!僕の妖力で錬成をカバーします!」


僕の叫び声を聞いて緊急性を感じた惣一郎の行動は速い。紙の内容を一目見たその一瞬で錬成を始める。

男が僕の計画に気づいたかのように攻撃を仕掛けてくる。その攻撃が惣一郎に届かせる訳には行かない。


「今僕達は秘密の図画工作をしてンだよ、邪魔すんじゃねぇッ!!」


男の転移魔法の範囲に入らず、距離を取って戦う為の妖術を僕は千里眼で発見済み。


「―――黒影・深層領域!!」


黒影・深層領域。自分の半径7mの地面が影に占領されて一歩踏み入れるだけで飲み込まれてしまう術、発動。

初見とは言え、この術に男は危険を感じている。寸前の所で急停止して僕に手を向ける。だがそれは無意味だ。


「お前の転移魔法領域は半径5mが限界。それに対して僕の深層領域は7m!お得意の空間支配系統の魔法は使えないなぁ!?」


気分が高まっている。今まで無い以上に心臓の鼓動が速い。何故、何故なのか。

―――僕はこの状況を楽しんでいる。

解決策が見え、相手より上に立ち、全てを蹂躙する。それに僕は愉悦を感じている。

男の顔が憤怒の表情を浮かべている。冷静さを失い、危険と分かっていながらも僕の領域内に足を踏み入れる。それが”男の生死”を分ける。


「そのままそこに固定していてくれ、錬成は無事完成した」


惣一郎の声が背後から聞こえる。

あの時、あの森でみたあの武器。あの猟銃の強化版が完成した。

そして最後の条件である”敵”として認識されない事。弾丸を視認した瞬間、”敵”と判断されて止められてしまう。ならどうするか、決まっているだろう。


「――――――っまさか!!お前ら正気か!?」


「その”まさか”だ!残念だったな、魔術師。お前らの行動は全て僕達……いいや!俺達が阻止する!だからこっちを向け魔術師、お前の敵は”妖術師”だって事を憶えて死ね!!」


僕は無意識で何も考えず思考を停止させながら、ただ男の意識をこっちに向けることだけを本能で捉えながら叫ぶ。


「今だ、惣一郎!!俺ごと撃ち抜け!!」


「――――――了解した」


爆発音、いやそれ以上の轟音と共に。音速を超える速度で弾丸が空中を走る。男が視認するよりも速く弾丸は僕と男を貫通して命を刈り取る。

あまりの速さに周りの物が吹き飛び、男の体は鉄の塊に貫かれた為、身体が衝撃に耐えきれず爆ぜる。吹き飛んだ木材や硝子やらに紛れて男の肉片が床に勢いよく転がり落ちる。

原型すら残さずに男は死んだ。

その場に静寂が訪れる。鳥の鳴き声がよく聞こえる。

ついでに、同等の攻撃を受けた僕はと言うと、


「………いやはや流石だよ、一瞬にして体を領域内の影と同化させて弾丸を貫通させる。まさに神業ってやつだね」


惣一郎が僕を褒めちぎる様に―――いや、褒めた。まるで飼っていた犬が初めて芸を覚えた時の様に。

僕は犬じゃないっての。

僕の身体は影から分離して、深層領域は最初から何も起きていないかのように人型のシルエットに戻る。


「――――――終わりました……ね。これで3人中の1人の魔術師は殺した…って事でいいんですよね?」


「うん、多分そうだね。つまりこれで残る魔術師はあと2人って訳だ」


僕は安堵して膝から崩れ落ちる。これも二度目だ。惣一郎と僕が疲れた表情を浮かべて互いに支え合っていると、


「そ………そんな、リーダーが…殺られた…?」


男が入ってきた場所と同じ所から別の人が姿を現す。恐らく男の味方、刺客か魔術師の1人なのだろう。

僕と惣一郎は休憩と言う言葉を忘れて男の拘束に向かって走り出す。僕は『太刀 鑢』を影から取り出して抜刀。其の儘、相手の膝下狙って刀を投げる。

一寸ズレること無く命中、その場に倒れ込んだ相手を惣一郎が上からまるでレスリング技をかけるかの様に固定。これで相手の行動は無効化した。


「さて、尋問の時間だ」


男の武器と思わしきナイフは、呆気なく地面へと転がる。―――惣一郎の顔が先程よりも少し輝いて見えるのは、僕だけなのだろうか。






「で、お前達の目的は一体なんなんだ?」


惣一郎の問いかけに対して相手は泣きながら、鼻水と涙を同時に流したがら答える。何も聞き取れないし汚いので、少し時間を置いて相手の 膝下を治療しながら情報を聞き出す。


「俺達の目的は……その、妖術師の抹殺…です」


「妖術師の抹殺?それは本当か?」


「ひぃいい!!本当です!本当ですから殺さないで!!」


「いや別に殺そうとはしてないよ……やりずれぇな……」


妖術師の抹殺。と言うのは恐らく僕の事だろう。魔術師が僕を探して殺そうとしている。つまりは、


「君の”未来視”と同じ能力を持ったやつが本当に居ると言う事だね」


惣一郎は胡座をかきながら僕にそう言う。

確かに、僕の命を狙っている=僕が妖術師と言う情報が知れ渡っていると言うことだ。


「では次は私が質問してもいいかな?君たちは何故魔術が使える。本当は使えない筈なんだろう?」


え――――――


「だっておかしいじゃないか。長年魔術と共に生活してきたやつがこの程度の攻撃と打開で負けるわけが無い。そうだろう?」


「は………はい、その通りです。リーダー…が使ってた魔術『空間支配』は本物の魔術師から借りた力なんです」


ええ―――――


「その本物の魔術師ってのはどこにいるんだい?」


「す…すいません、それは俺達も知らないんです」


――――――えぇ………。


「いや、あの、すいません。惣一郎さん、驚きのあまり僕の脳が理解出来てないんですが……」


「奇遇だね、実は私もこう見えて凄く驚いているんだ」


なんて事だ。あと男が使っていた『空間支配』は所詮借り物、半分以下の力に過ぎないのだ。それに本物の魔術師。本物じゃない、男の様な偽物の魔術師も存在するという事。


「なら最後に、敵の本拠地と人数。それから目的を全て教えてくれ」


「はい、俺達…リーダーの仲間はここから28km離れた場所にある都市部に居ます。人数はざっと20人位で魔術を使うやつが数人。目的は…東京で起こそうとしている大規模魔法に必要な材料集め…です。あと2日程で動き始めると思います……」


めっちゃ喋るじゃん。


「なるほど、恐らく本物の魔術師とやらもそこに居るだろう。それに現在の時刻は16:58。急いで車を出せば余裕で間に合う」


情報を聞いた惣一郎は急いで建物の外に出て近場の車を探す。駐車場に停まっていたランドクルーザーを見つけ、全く同じものを錬成。僕の妖力で錬成に必要なパワーを補いつつ、急いで車に乗り込む。

何故か尋問されていた側の男も乗っていたが、お構い無しで車を出す。


より強力な『空間支配』の魔法を使う魔術師。その敵が居る本拠地である都市部に向けて僕達は急いで向かう。





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「それで?私の『空間支配』を貸したあいつはどうなったの」


「お………恐らく…死んだと思わっ!?」


「本当に使えないやつらばかりで嫌気がさす。これは連帯責任だ、お前達もあの男同様に死ね」


「待ってください!そんな…俺たちはまだ…!!」


黒色のモヤに包まれた男達の悲鳴は忽ち聞こえなくなり、その場に静寂が訪れた。

その静寂の中、1人の女が笑いながら言う。


「妖術師。あの男を倒した人間、どれだけ強いのか楽しみだ」


再び黒色のモヤが女を包み込み、姿を消した。



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『遡行禍殃』第一章 6 を読んで頂きありがとうございます。第一章 6 のタイトルは『空間支配』です。

久々の6000文字越えました。正直、キツいです。でも手が止まらないので最高に最高です。

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