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「お! 無事顕現できたのでごるか、良かったのでござったなぁ!」
戻ってきて嬉しそうに言う善悪に何もしていなかったコユキが答えたのである。
「ん、まあ何とかね…… 苦労したわよぉ、アタシがね! ねえ、善悪ぅ! 褒めても良いんだからね、アタシを? ね、ねね? どう?」
善悪は答える、
「んまあ、これはアスタがいたからでござろ? コユキちゃんが仕切ってたらもっと無茶苦茶、所謂(いわゆる)みんな大好きなフラグをしっかり踏んでたでござろ? 回収しなくて本当によかったのでござるよ…… ふうぅ~、アスタ! ご苦労様でござったぁ、ありがとね」
アスタロトの返事を待たずに、クロとシロとチロが声を合わせて言うのであった。
「「「善悪様、これでお役に立てます、有り難うございました」」」
アスタロトがニヒルな笑みを浮かべて言った。
「だとさっ! はっ! 良かったじゃないか! コユキ、善悪! やはり犬って素直で忠実、もふもふ加減も可愛いものだな!」
その言葉に善悪とコユキはアスタロトに顔を寄せて笑顔満面で言うのである。
「でしょ? この子たちもふもふなのよね」
「特注して良かったでござるよ」
言いながら結城(ユウキ)氏が細部まで拘った(こだわった)肉食獣のリアルな口元の辺りを撫でる善悪。
耳元まで裂けた大きな口から鋭い牙が顔を覗かせ、依り代と合体した事で獲得した空腹でも感じているのか、貪欲そうにだらだらと涎(ヨダレ)を垂らして、一転ギラギラと獲物を見つめるような殺意の籠った瞳も大変可愛らしく見えた、のだろう。
さて、ルキフェルの跡継たる善悪とコユキの元に、また一柱の古き魔獣が戦列に加わったのであるが、その魔狼三体を幸福寺の立木の陰からジッと見つめ続ける存在が一つ、その存在を心配そうに見つめる幸福寺の境内に敷き詰められた砂利に潜った蟹が一つ、成り行きを見守りつつ、固唾(かたず)を飲んでいたのであった。
何か言いたそうに木立の隙間から見つめ続けるうっすらと、本当にうっすらとした、猿っぽい影に向かって大きな声で吠えて周りに異変を告げたのは三魔狼の内、年長者っぽいクロ、元ケルベロスであった。
「ん、んんんん? おい、シロ、チロ! ココに何かいるぞ? ってかこれ、ハヌマンじゃね? クンクン、やっぱあいつだぜ? フンババだぜぇ! なんかコソコソしていやがるが、昔馴染みがいたぞぉ、なんか薄くて小さいけど…… コイツを従えているとは、流石ですなぁ、善悪様、コユキ様ぁ!」
「本当だ! フンババじゃん、よお! ん、まさか話せないの、か? 以前の我々同様に制約の術式でも…… 掛けられてはいないか」
「あれ? でもこれってアーティファクト化してんじゃん! フンババがここまで弱ってるとかおかしいよな? 魔核を見つけて回復させないと遅かれ早かれ消えちゃうぞ、これ?」
どうやらあの引き籠り属性強めのここまで隠れ続けていたお猿が皆の注目の存在らしい…… 因み(ちなみ)に蟹は無視らしい。
狼達を安心させるようにコユキが説明をする。
「魔核だったら千里の天神さん、菅原道真(スガワラノミチザネ)のアンドロマリウスちゃんに探してくれるよう頼んでから帰ってきてるから直に(じきに)見つかると思うわよ? にしてもフンババくんと知り合いだったのねアンタたち」
チロが代表して答えてくれた。
「ああ、昔ね桃太郎、吉備津彦命(キビツヒコノミコト)が鬼退治に行った時に一緒に戦ったんですけどね、あの時はカルラもいたっけなぁ」
善悪が反応良く言葉を返したのであった。
「カルラって鳥飼辺(トリカイベ)さんでござろ? 小生その絵持っているのでござる! 炎に身を包む火炎鳥、不死鳥みたいな格好良い鳥でござるよね? ね? ね?」
クロが首を傾げて答えた。
「ええ? カルラが火炎? おっかしいなぁ? アイツは気配や存在感を完全に消す事が出来るから、潜入、最近で言うレンジャー的な役目だったはずだよ? 色目も白黒モノトーンで目立たなかったしね!」
コユキがピックと動くのであった。
その僅か(わずか)な動作に興奮しっぱなしの善悪が気が付く筈も無く、重ねて三匹の狼に問い掛けたのである。
「んでも、猿女の君(サルメノキミ)さん家の勇者はあれでござろ? 紫電をその身に纏った格別の戦士でござろ? その絵も我輩持っているのでござる! ね、どう? 当たりでしょ?」
今度は純白の毛皮に包まれた、タイリクオオカミのホワイトファングバージョンに身をやつしたフェンリルのシロが返すのであった。
「ええっ? フンババはフィジカル特化の筋肉馬鹿ですよ! 紫電とか? ええ? 力は滅茶苦茶強いですけど…… んな器用な事は出来ない筈ですよぉ?」
善悪はやや肩を落として呟くのである。
「なんだぁそうなのでござるか…… 僕チン小さい頃からあの絵を見てたのでござるからさ…… なんかガッカリしたのでござるよ……」